第23話  勘違い野郎

 隣の県にある水族館まで、約2時間。


高速道路を通って行くはずだったが、彼女が下道でゆっくり行きたいとの事で、国道にある、ドライブインや自然の景色を眺めながら車を走らせていた。


 美華「あの山奥に見える白いポツンとある建物なんだろうねっ!」


 亮「あーあれはたしか、交通科学館じゃないかなぁ~」


 美華「へーあっ!あそこにもドライブインぽいのがあるよ!レストランって書いてある!美味しいのかなぁ~!」


 亮「あそこのドライブインより、この先にあるドライブインの所の方が美味しいよっ!特にトンカツ定食が!」


 美華「本当?私。トンカツ大好きっ!唯愛も好きでさ~!よく駅の地下街にあるお店に大学の時いってたなぁ~!」


 亮「そっかそっか!今度行ってみるか?ドライブインの所!」


 美華「うん!行きたい!行きたい!唯愛も連れて行きたいなぁ~...」


 亮「うんうんっ!唯愛ちゃんも一緒に行こうな~!」

車の中での会話が弾んでいた俺と美華。

少しずつだが、分かってきた気がする。


彼女の事。


彼女はいつどの時間でも必ず、唯愛ちゃんの事を考えている。

何もするにしても、唯愛ちゃんと行ったら楽しい場所だったり、美味しい所だったりと。


それが唯愛ちゃんじゃなくて、男だったらヤキモチ級だが、相手が彼女となると少し複雑な心境だ。

だが、俺はそれでもいいと思いつつある。


始めは、まだ何も彼女の事知らなかったから、ただただ彼女と付き合いたいと普通の考えで思っていた。

今は彼女と付き合えば必ずセットで唯愛ちゃんも来る事になる。

それを第三者から見れば、”こんなにも可愛い子が二人もそばにいるとか最高じゃん!”と考えるのが普通だろう。

でもそんな安易な考え方じゃなく今は、


 ”付き合いたい!”


 ”彼女にしたい!”


とかではなく、


 ”俺も唯愛ちゃんと一緒に彼女を支えてやりたい!”


 "俺も唯愛ちゃんと一緒に守りたい!”


が強くなってきているのだ。

この違いっていったい。


男ならわかるはず。

俺たち男は人間とはいってもごく単純なただの動物だ。


人間というだけあって若干の理性は働いている。

その中できわきわの欲をだし、格好をつける。だが最終的にはただ、自分の好きな異性と”したい”だけなのだ。

本能がそうできている。


そんな中、今格好つけている俺だからこそついでに言わせてもらうが、俺が美華に対する思いは違う。


いやっ。違うと言えば嘘にはなるが、優先順位というか、πが違うのだ。


かなり。


もし俺が彼女に告白し、付き合えたとし、彼女が求めないのであれば、身体の関係までならなくてもいい。

そりゃあもちろんキスだったり抱き合ったりはしたいが、それ以上求めない。


他の誰でもなく、俺が唯愛ちゃんと同じ立場に立てたこと自体が嬉しいのだから。


だがこう考えているのも、俺の自分勝手な都合。

彼女の考えは分からない。


完全に唯愛ちゃんの事を大好きと宣言している中、俺とこうしてデートをしてくれている心境がまだ分からない。


恐らく彼女自身も分かってないだろう。


聞いた事あったが、大学の時でも彼女は何人もの人に告白されたらしい。


その都度、私は好きな人がいるから。と言って全て断ってきたとの事。


男と遊ぶというのも全くなかったのだ。


昔、小春さん含め、唯愛ちゃんと3人で合コンをしたのが初めてぐらいだ。


だから今日のデートは彼女にとって初めてであり、不安もあるだろう。

その中で俺を選んでくれた事に感謝するべきだ。


 ”ん.....?てことは俺、男として見られてない?”


とそんなアホな事を思いつつ、その後も彼女と楽しく会話をしながらお昼前頃に水族館に到着したのだ。

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