第16話 そんな事俺の前で?

 美華父「亮さんはお付き合いされてる人はいるんですか?」


 亮「いないっすよー!そんな人!なかなかね~!」


ご飯も美味しく頂き、皆でお酒を軽く飲み、俺は少し酔いが回ってきていた。

美華の事について色々聞こうかと思っていたが、皆なぜか俺の話で盛り上がっている。


 美華母「全然いそうな雰囲気なのに!まぁタイミングってものがあるわよね~」


 唯愛「亮さん優しいから、すぐ出来るよー!ねえ美華!」


 美華「うんうん!ちょっと頼りなさそうだけどねー!どこかにファンはいるはずっ!」


 小春さん「優しさが一番大事だから、それがあるから...ねっ!」


 亮「.....はっはい」


”なんかこの話、俺がめっちゃ彼女がいなくて困ってる人みたいになってないか?”


こういう時に、話の的にされやすいのは、俺みたいな男だ。


 美華父「亮さん、タバコ吸う人かね?もし吸うんだったら外に灰皿あるから、自由に使ってくださいな!」

ちょっとした、お父さんの気遣いにより、少しだけタバコを吸いに行こうとし、タバコを探す俺。


 亮「あれ?仕事の帰りに1本吸ったからなくなったんだ。すみません。ちょっとコンビニに買いに行ってきます。皆さん、何かいるものありますか?」

皆に聞いてみた。


 美華「ん~何か甘い物食べたいよね?」


 小春さん「うん!食べたいっ!あそこのコンビニでおススメあったっけ?」


 唯愛「あっ!あります!でも...恐らく亮さん探すの難しいと思うから、私一緒に買いに行ってくるねっ!」


その唯愛ちゃんの発言で彼女が一変した。


 美華「えっ?そっそれなら私が買いに行ってくるよ~!唯愛~」


 唯愛「大丈夫!すぐ帰ってくるから!美華の大好きな甘い物っ!買って来るから、少し待っててねっ!」


 美華「唯愛~。うん...わかった~...」

そお言って泣きそうな顔をする彼女を優しくぎゅっと抱きしめ、唯愛ちゃんは頭を撫でた。

見てはいけないものを見てしまったと思い、焦りをどうにか隠そうとする俺。

だが小春さんを始めとする、三人にはこれが日常のようだった。

少し酔ってぼんやりとした空気でいた俺だったが、この状況だけは、しっかりと頭に焼き付けている。


 そして、靴を履き、俺と唯愛ちゃんはコンビニまで出かけた。

辺りは完全に真っ暗になり、夜風が気持ちよく、少しだけ酔いが冷めた俺。

こうして唯愛ちゃんと一緒に歩いてみると、海が彼女の事を好きになった理由が雰囲気だけですぐ分かる。


 優しいオーラ。彼女もどこか守ってあげたいと強く思いたくなるような、その雰囲気。だけど、芯はしっかりしているとてもいい子。

美華とは少し違った可愛さだった。


 すると、彼女が俺に話をしてきた。


 唯愛「さっきの私と美華の様子見て少し驚きましたよね...?すみません。私達あれが普通なんです」


 亮「驚いたというか...いや、うん。ビックリした!でも前に小春さんから聞いてたから大丈夫だよっ!」


 唯愛「ならよかった!美華、私の事昔から大好きなんです!私もですけどねっ!」


 亮「それは恋愛として?」


 唯愛「う~ん...うまく言葉で説明できないですけど、分かりやすく言えば、海さんと同じぐらい好きですよっ!」


 亮「分かりやすいっ!なるほどね~!」

そお言って俺は彼女に微笑みかけた。

正直言って俺も分からない。

”好き”と言う言葉の最上限ってなんなのだろうと。

同性だから、好きの最上限は限界があるのか?

異性だから、身体を交じり合わせられるから、好きの限界を超えている事になるのか?


 いや違う。そういうのじゃない。


俺は彼女の一言で、美華と唯愛ちゃんがどれだけお互い好き同士なのか、ハッキリとわかった。

そして俺はあの質問をする。


 亮「美華ちゃんって唯愛ちゃんに会う前、転校を繰り返していたの?」

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