第13話  何か分かるか?

 小春さん「あっ!亮さんこんにちわー!でもそんなに落ち込んだ顔しなくてもっ」


俺は明らかに落ち込んだ顔をしてしまっていた。

 亮「いやいや...すみません。とりあえずアイスコーヒー下さい!」

そう言いながら、カウンターに座る俺。


 小春さん「はい!どうぞー!今日も仕事お疲れ様~」

彼女からのその言葉にホッと一息をつく俺。

なんなのだろう、この感覚。

急に肩の力が抜け、時間なんか忘れ花畑に囲まれてしまいそうになるこのフワッとした感じ。


恐らく、"海"もこの何とも言えない"小春さん"の魅力にやられてしまったのだろう。


 "こりゃあ...自分の精神がズタボロだったりしたら無理だわ..."

そう思いながら、天にいる彼に向けて微笑んだ。


 小春さん「なぁに、ニヤニヤしてるのっ?」


 亮「いえいえ!なんでもないっす!」


 そして俺はアイスコーヒーを一口飲みあの話を始めた。


 亮「あの...美華ちゃんと唯愛ちゃんって小さい頃からの幼なじみと思ってたんですけど...中学からだったんですね。しかも美華ちゃん中学よりも前にいくつか転校してたみたいで...」


 小春さん「中学からの幼なじみとは聞いてたけど、転校の事は知らなかったわ。ただご両親の仕事の関係で転校する人も多いから最近は案外普通だと思うけどね」

小春さんの言う通り。確かに言われてみればそうだ。


転校を繰り返してたからって、別に今の御時世、普通だ。


 亮「小春さんは美華ちゃんのご家族とは会ったことあるの?」

さらに突っ込んだ事を聞いてみる。


 小春さん「ご両親は数回、ここの喫茶店にいらしてくれた事あるわよ。とても感じのいい方で、今時の家族にしては珍しいくらい、美華ちゃんも二人の事好きそうだったわ。兄弟は前に教えてくれた事あったけど、お姉ちゃんが一人いるみたい。お姉ちゃんの事も凄く大好きだって言ってたけどねー。今は一緒には住んでないみたいだけど」


 亮「そおなんだ...」

こう話を聞いても、今の所は何もわからないし、”何も無さそうだな”と思う俺。

そんな彼女の話ばかりしていると段々と会いたくなってきてしまっていた。


今日も彼女に会えると思い、朝から大変な仕事をなんとか終わらしてきた俺。

やはり、今日みたいに1日でも彼女に会えないと思うと、どこか虚しく寂しい気持ちになってしまっていた。


 "俺のが年上なんだけど、完全に追いかけてるよな...中学の頃以来だっけ?"

この年齢にして、思春期の頃の、淡い恋を思い出す俺。


 すると...


 ガチャンッ!


喫茶店の入口が開く音がした。

それと同時にあの可愛い声が聞こえる。


 「あぁー。忘れ物しちゃったよぉ〜!小春さぁん。」


美華だった。

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