第9話 何でお前モテる?

 彼女たちは大学を無事卒業し、ここの喫茶店を経営する事になる。


俺は大学を卒業し、今の会社に就職したが、会社を経営する事なんて1mmも考えていなかった。

誰かの下で働くというのは本当に都合がいいし、楽。


その日その日で、自分のモチベーションが上がらなければ、なんとなくこなしておけば、時間は過ぎる、逆にモチベーションが高くてももらえる給料は変わらない。長い目で見れば、少しずつ上がっていくだろうが、時間効率悪いし、給料に天井だってあるし、やりたい事をすぐに反映させる事なんて当然できやしない。


彼女達が一生懸命、分からないなりに必死に働く姿を見て、改めて自分っていったいなんなのだろうと思ってしまう。


そんな姿を見て、素直に彼女達を心から応援していた。

俺に出来る事。

それはできるだけ知り合いにここの喫茶店はいいと伝え、俺自身も通う事。

それぐらいしかできなかった。



そしてもう一人。

俺と同じ思いの人がいた。


 カランカランッ!


 「今の時間空いてますかー?」


 "こりゃまた美しいキレイな声"

すると美華が店内で急に声を張る。


 美華「あっ!小春さーん!」

それに続き唯愛も、


 唯愛「小春さぁぁぁん!」

泣きじゃくる二人はその"小春さん"とやらにしがみついた。

恐らくその小春さんと言う方は知り合いなのだろう。俺がお客さんとしてコーヒーを飲みにきていたが、そんな事なんかお構い無し、しばらく3人の久しぶりの再会に花が開く。


 "ん??小春さんってどこかで聞いたことがある名前だな?"

俺はしばらく頭で考えていたが、その後の彼女達に紹介してもらい、俺は衝撃を受けた。


 亮「あっ!あなたが、小春さんですか?」


 小春「はい!初めまして。霧島小春と申します。話は聞いてたと思いますが...」


うん。凄く綺麗。


また二人とは違い大人の色気が感じられるが、なんなのだろう。この人もまた守ってあげたいと思ってしまうような何処かあどけなさが残っているこの感じ。


 "てか!海!なんでお前だけ!ズルくないか?こんなに可愛いコと!...いやいやそんなの思ったら駄目だ...駄目だ..."


俺はそんな男ならではの変な事を想像してしまっていたが、それと同時に、この3人の関係に同時に疑問に思えてしまった。


だが、空気を悪くしてはいけないと思い、少し外に出てタバコを吸う俺。

そしてタバコを吸いながら思う。


 ”俺、空気を読んで外に出てタバコ吸う事多くないか?”

こればかりは社会に揉まれたサラリーマンだから仕方ない。一丁前に空気だけは読める人間へと成長していた。


 ”給料で空気読んだ分も欲しいよな...”


すると...


 美華「亮さんビックリしたでしょ?」

俺が立ち往生をしながら空を見上げタバコを吸っている左下から、上目遣いでニヤッとした顔で俺に話しかけてくる彼女。

この子も空気を読むのが上手い。


 亮「うん。ビックリしたというより、しすぎて、まだ頭の整理がついてないよ」


 美華「だろうと思った。だから話しかけたんじゃん!」

そお言って彼女は俺が途中まで飲んでいたアイスコーヒーをわざわざ外にまで持ってきてくれていた、それを渡し、二人で何を話すでもなく目の前で通りすぎる電車を眺めていた。


 そう。まだここまでは何もかも知らなかった俺。この後小春さんが外に出てきた事により、一番知りたくなかった事を聞くことになる。

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