第6話 彼の彼女?

 彼の死の原因は交通事故。


しかもその引いた相手は、彼の会社の年下上司。


始めは行き過ぎたパワハラからの意図したものかと思っていたが、何度防犯カメラを見ても、偶然にしか見えなかった。


俺は彼の葬式に行きたかったが、どうしても当日、仕事の外せない用事があり、俺一人で、前日の通夜のみおじゃまさせていただくことにした。


白い布に包まれた彼の姿を見て、その時は全く現実として受け止める事ができず、涙を流す事はなかった。

まだその姿でも、彼に語りかければ、すぐに起き上がり、彼女の話を楽しそうにするんだろうなと思いながら、俺はその日ずっと彼の名前を呼び続けていた。



 そして、時がすぎ、少しずつ海がこの世から去っていった事を現実として受け入れれるようになったある日。


俺は今世紀最大の事実を知る。


 七瀬課長「ねぇ。亮さん。少し後になって気づいたんだけどさ...海さん亡くなったでしょ?実は海さん、ウチの娘と付き合ってたみたいなの...」


 亮「えっ?えっ?まじっすか?ちょっ...急すぎて何も読み込めないんですけどっ!」


 七瀬課長「うん...そうみたい。私と唯愛の相談を海さんに聞いてもらっててね、海さんウチの娘の事知らないはずなのに、こんな子って言っただけで、娘の気持ち全てが分かるかのように私にアドバイスくれててさ。今思うと亡くなっちゃって残念だけど、あの海さんが唯愛の事しっかり見てくれてたんだと思うとね...本当ね...」


 亮「そうだったんですね...実は俺、彼から彼女さんに渡そうと思ってた婚約指輪預かってるんですよ。彼にも色々大変な事情があったみたいでですね。なので今日仕事もう終わりますよね?今から渡しに行きません?俺も実際、唯愛さんに会った事ないから、どうやって探して渡そうか悩んでたんです」


 七瀬課長「えっ?そおだったの?あの海さんが唯愛と...。本当に嬉しい事ね..ありがとう!そしたら準備してくるねっ!」


俺はどうしても、彼の彼女にこの指輪を渡してあげたかった。彼が楽しそうに俺に話をしてきた彼女の事も、全て話してあげたかった。


 ”ん...?そういえば...唯愛ってどこかで聞いた事のある名前だな?なにか以前どこかで...”


そんな事を考えながら、俺は七瀬課長と、彼の彼女が働いているバイト先に行くことになる。


そう...そこは、あの二人がいる喫茶店だった。

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