第3話 必然の転勤?

 そして喫茶店に行ってから一週間がたったある日。

 

今日は、仕事。


いつものようにギリギリまで寝て、歯磨きをし、準備をした。

俺はいつも朝ごはんは食べない。

だから起きてからの準備は15分程で終わった。


スーツに着替え、ネクタイを締め家の玄関を開けた。


 ”今日は暑いなぁ!”


太陽が俺に向かっていつも以上にじゃれ合ってくる。


まだ別れた彼女の事を引きずっていると思っているのか。

太陽もそれなりに気を使っているのだろう。


  ”ありがとなっ!でも今なんとか大丈夫だっ!”

感謝の気持ちを述べながらもあの時の事を思い出す俺。


  ”にしても、あの喫茶店であんなに可愛い子が働いてたなんて...”

そう。

俺はあの日からずっと彼女の事が忘れられずにいた。


当然の事元カノとは、大好きだから付き合った。それより以前の人とも付き合い、別れた時は長い期間引きずってしまい、堕ちていたはずだ。

だから今回もそうなってしまうだろうと思い、待ち構えていたが...。


元カノには申し訳ないが、気持ちはなぜかサッパリとしていた。

あまりにも喫茶店にいた彼女の事が印象に残りすぎて...。


.......................................


 会社での俺の立ち位置は係長。


上からも下からも間に挟まれ、忙しい毎日だった。

やりがいは以前まではあったが、今は少し新しい部署での仕事がしたいと思い始めていた今日この頃。


そんな時に、俺の気持ちが会社中に漏れてるのかと思ってしまうぐらいに、転勤の話がでた。


 上司「高橋君。少し県は離れてしまうけど、転勤になったよ。しかもここよりも売り上げが高い営業所だ!よかったな!」


まさに絶好のタイミング。


 ”心の中で思ってれば願いって叶うのか!”

とそんな気持ちになったぐらいだった。


こんな気持ちの時には新しい環境に飛び込んだ方がいいと、以前何かの本で見たことがある。

嬉しい気持ちを上司の前では見せず、程よい表情で対応しつつ、転勤場所を聞いてみた。


するとそこは、つい先日行った喫茶店の近くの営業所だったのだ。


まだ彼女の事なんてほとんど知らずにいた俺だったが、また気軽に行けると思い、抑えてた感情が放たれる。


 亮「よっしゃー!ありがとうございます!」


 上司「ん?亮君がそんな表情を見せたのは初めてだね!そんなにここが嬉しかったかね?」

冷静な上司のその言葉を聞き、また我に返ってしまった俺。


 亮「いえ。自分のスキルアップの為に、少しでも売り上げの高い営業所に行けるのは本当に嬉しく思いました。本当にありがとうございます」

しっかりと心にも思っていないのは、上司にも伝わっていたが、今この時期転勤となると、行きたくないと言う社員が多く困っている現状だ。

だから嘘でも喜んでる俺に対しては、お互いWin Winと言うことで波風立たずに収まったのだ。



 そして転勤の話を聞き喜びながら家に帰り、ふと「海」の事を思い出す。


 ”電話入れてみるかっ!”

自分のテンションが高いからであろう。

相手からしたら迷惑な話だが、こうゆう自分勝手な俺に対し、いつも通りに話してくれるのが彼である。


こうしてスマホを手に取り、彼に電話をした。


が、しばらく着信を鳴らしてもなかなか出ない。

諦めて電話を切ろうとしたその時。


 海「もしもし...」

高校の頃と全く変わっていない彼の声だった。


だが一瞬で落ち込んでいる事は俺には分かった。


久しぶりに電話したが、一瞬誰か分かってもらえなかったが、そんなのどっちでもいい。

今でもこうして電話をすると、昔の頃に戻った気分になれるのが本当にいい。


そして俺は彼のいる場所まで行き二人で飲んだのだ。


そこは、俺が転勤する場所でもあり、あの彼女がいる喫茶店も近くにあるその場所で。

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