塩と土と(七)

 ファルエール・ヴェルヴェルヴァを失ったウストレリ軍は、いくさを優勢に進めていたが、全軍がてっ退たいした。チノー・アエルツ自身がしんがりを務めたが、それを攻める余力は七州[デウアルト国]側にはなかった。


 今後の戦略を考えた場合、大勝利と言えたいくさの結果に、みながつ中、ノルセン・ホランクがアステレ・アジョウのなきがらを抱きかかえて、鉄仮面の元へ戻ってきた。

 場が一瞬で静まりかえった中、しばらくして、ノルセンに声をかけたのは鉄仮面であった。

「死んだ者の分も生きるというのはごうまんな考えだ。でも、そう思うしかない時もあるのは事実だ。しばらくは泣いて過ごせ」

 仮面を外してから、鉄仮面はノルセンの顔をじっと見つめたのち、その肩に手を置いた。それと同時に、ノルセンはむせび泣きはじめた。

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