塩と土と(四)

 大いくさの序盤は、兵の練度で勝るウストレリ側の攻勢ではじまった。

 左翼、中央、右翼で激戦が繰り広げられ、瞬く間に、多くの血が流れた。


 左翼では、義勇兵からなる敵の士気がきわめて高く、東部州の火縄[銃]を前にしても臆することなく、「東イルコアを解放するのだ」と味方の死体を踏みながら、敵兵が前進をつづけてきた。

 東部州軍の本隊は崩壊直前にまで至ったが、遠北州から小ウアスサが連れてきた騎馬隊の活躍もあり、何とか踏みとどまった。

 その小ウアスサは、あまりの激戦に死を覚悟しつつも、「あの悪い女もすこしは悲しむかな」と、まわりに冗談をいう余裕があったそうだ。

 小ウアスサはウザベリの夫として、スラザーラ家への婿入りが決まっていた。

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