交わる言葉、交わらない言葉(四)
ファルエール・ヴェルヴェルヴァ退治を
公女が死んだのならば、スグレサに向かう必要もあまりなかったが、ここまで来たのだからと、鉄仮面は北の老人[ハエルヌン・スラザーラ]に会うことにした。
睡蓮館の回廊でウザベリ・スラザーラにばったりと出くわし、「おまえの動きが遅いから、こういうことになったのだ」と難癖をつけられたが、鉄仮面は無視して、庭へ向かった。
老人はいつものごとく、花の手入れをしていた。長い間、花に
「遠いところ、ご苦労だったな、ヌコラシどのの孫娘」
それに対して、鉄仮面は「無駄足となりましたが」と応じ、公女の死について、夫である老人に
「あの方に代わり、私がヴェルヴェルヴァ退治を諦めると言ったところで、
「それはそうですが、あなたさまが専制者らしく、ご振る舞いになられれば輿論など……」
そのように鉄仮面が言うと、「それはその通りだが、ご覧の通り、私は疲れている。老人なのだ。私なしで、世の中には動いてもらいたいところだ」と応じてきたので、「ならば、仕方ありませんね」と、鉄仮面は突き放した物言いをした。
七州[デウアルト国]を
鉄仮面はすでに、ヴェルヴェルヴァ退治がつづくことを覚悟していた。
「わたくしも疲れております。ヴェルヴェルヴァ退治……、他の者に任せられませんか?」
鉄仮面が泣き言をいうと、「だめだな」と老人が即応した。
「なぜですか?」と鉄仮面がたずねると、「
それに対して、鉄仮面が「わかりません」と言うと、「いま、この状況で司令官を替えることはできない。もう少しではないのかね、ノルセン・ホランクが覚醒するのは……。ヴェルヴェルヴァを退治するか、それが果たせず、あの子が死ぬか。そのときまで、司令官を替えるつもりは私にはないよ。公にずいぶんと
鉄仮面が無言でいると、老人がふと思いついたような口ぶりで次のように言った
「そうだ。あの方を新西州に招待する予定だったのだろう?」
「さすがにお耳が早い」
「それな、あの方の代わりに、私が出向こう。私も状況によっては、公の都合の良いように動くかもしれんぞ?」
「それは……」と、老人の思わぬ言に鉄仮面は
「そう、驚くことではあるまい。私もたまには、外に出ないとな。ヌコラシどのの孫娘よ」
そのように言われて、鉄仮面が「断ってもどうせ来るのでしょう。ならば、ご随意に。ただし、わたくしに迷惑をかけない範囲でお願いしたい」と口にすると、「わかっているさ」と言ってから、老人が手を振ったので、鉄仮面は場を後にした。
※1 みやこびとが言い出すのは必定であった
実際に、そのように推移した。
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