交わる言葉、交わらない言葉(三)

 新暦九三四年晩夏[九月]二十三日、公女こと、ハランシスク・スラザーラが、不意に身まかった。

 その日は昼と夜の長さが等しくなる日であり、公女は祭事をするために、夜通し起きていなければならなかった。

 深夜になり、女官長のタレセ・サレが書斎に茶を持って来たとき、公女は椅子のひじ掛けにほおづえをついて、眠っているように見えた。

 しかし、タレセ・サレが起こそうとすると、いつもの不機嫌そうな顔のまま、公女はすでに息絶えていた。

 このように、公女は、その方らしい死に方で生を終えた。


 その死により、スウラ・クルバハラを討ち取った高揚感は、都から霧散した。公女の鎮魂のため、ファルエール・ヴェルヴェルヴァの退治を求める声が、再度高まった。

 鉄仮面からすれば、迷惑この上ない話であった。

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