第四十一話 〜古河真琴〜

最後の説明として、地方も本部も結界によって守られていることを説明してもらった。

 東京と京都は特に厳重に守られているらしい。東京は大臣もいるし厳重なのはなんとなくわかるけど、京都が厳重なのはなんでだろう。


「東京はなんとなく分かりますが、京都はなんで厳重なんですか?」

「昔の首都って京都だったでしょ?平安時代とか。特にその時に妖怪達って生まれたりしてたらしくて、京都は特に妖怪の数が多いんだ。そんな中を管理するから一筋縄じゃ行かなくてね。実力のある人は京都を拠点としてる人が多いんだ。」


 なるほど。そう言うことだったんだ!確かに京都はそんなイメージあるかもなー。


「うん、じゃあ大体説明したし、次の工程に行こうか!まずは、結界を通れるようにするためのパスを作るために未来さんの登録をするね!…ここからは、事務的な仕事になるから、彼女にバトンタッチするね!よろしく!」


 恵慈さんはそういうと、オフィスの入り口近くのデスクに座っていた女性を手招きしてよんだ。

 女性は頷きながら、小走りでこちらに寄ってきた。スーツ姿の女性で、身長は155センチくらい。少し細身である。髪は茶色のボブカットで、クリクリの瞳は猫のように瞳孔が縦に長く私を見るなり大きな丸い瞳孔になった。にっこりと笑った彼女の腰の方を見るとふさふさのしっぽが見える。それと同時に頭にもぴょこんと三角の耳が現れた。


「彼女は古河真琴ふるかわまことさん。見ての通り猫の妖怪だね。」

「よろしくな!!」


 と、にっこりした笑顔で挨拶をしてきた。

 彼女は人懐っこそうな元気な声で挨拶をしてくれた。挨拶に続けて話を始めた。


「さっきも紹介があったけど、私は古河真琴ふるかわまこと!気軽に真琴って呼んでちょうだい!実年齢は乙女の秘密だけど、設定は25歳だから、未来と一緒だね!」


 冗談めかしてケラケラ笑いながら言った言葉には妖怪らしい言葉が混ざっていた。設定とかあるんだ!?それより私の年齢は出回っているの!?


「はい!よろしくお願いします!」


とりあえずは、気にしない方向でいこう。何事も挨拶から!!


「全然敬語じゃなくていいよー!もっと仲良さそうに話してくれると嬉しいなー?!同年代の友達っていないからさー!」


真琴さんからもっと仲良い感じでとリクエストがあった。彼女の雰囲気や仕草からはそうして欲しいオーラがひしひし伝わってくる。


「あ、そう?いいのかな?」

「いいっていいって!本人が言ってるんだからー!」


 と言ってにこにこしながら距離を詰めてきた。結構積極的な子なんだね。


「わかった。じゃあ、よろしくね!真琴!」


私は彼女のリクエスト通り、真琴と呼び、友達感覚で付き合うことにした。正直そっちの方がやりやすいから嬉しい。友達にもなれそうだ!


「うふふ、ありがとう!よろしくね!未来!」

「じゃあ、仲良くなったみたいなので、私はこの辺で失礼するね。真琴さん。あとはよろしくお願いします。」


 そういうと、恵慈さんは長老のところに行くと言って大臣室に行った。


 真琴さんは「じゃーねー!」って恵慈さんに手を振っている。真琴さんは設定25歳と言ったけど、実際はもっと長い時間存在しているはずだ。きっと恵慈さんはそんな真琴に敬意を表あらわしているのだろう。いや、ただ単に真琴がすごいのか。真相は闇の中。いつか聞ける時が来たら聞いてみよう。


「さって!じゃあ、登録に進もうか!」

「はい!よろしくお願いします!」

「けーいーごー!」


 ついつい出てしまった私の敬語に不服そうに膨れている。可愛い。


「あ、ついつい!ごめんね。よろしく!」

「おいっす!じゃあ、まずは、いろいろ記入してもらうから会議室行こうか!こっちだよ!」


 そういうと、こっちだよ!と手招きながら、誘導してくれた。会議室に着いた。会議室といっても、大きくない。応接室みたいな感じかな?少人数で面談を行えるくらいの小規模の部屋だ。そこには机が2つと棚がある。机にはパソコンが置いてある。真琴はパソコンをつけて、何やらいじっている。


「ちょっと待ってねー!用意しちゃうから!」


 登録にはパソコンを使うらしい。少しかちゃかちゃパソコンをいじって、すぐに私の方に振り向いた。


「はい!おっけー!じゃあこっち座って!今ディスプレイに登録画面出してあるから、必要事項を入力してもらってもいいかな?パソコン使える??」


 少しイタズラな笑顔を浮かべながら聞いてきた。


「使えるよー!そこまで文明遅れてないから!」


 真琴は距離を詰めるのが上手だなー。いつの間にかすんなり話せるようになっているし。その仕草もひょこひょこして可愛いし、なんだか警戒心を無くさせるフェロモンでも出ているのではないかと思うくらいだ。


「そっかそっか!じゃあ、私はこっちで作業してるから何かわからないことがあったら聞いてね!」


 そう言うと、向かいの席でノートパソコンをひらいて何やら作業を始めた。私も真琴もとりあえず、パソコンをカタカタやっている。私の邪魔をしないように話しかけないようにしているのだろう。

 わからないことがあれば聞いてねと言われたけど、登録に必要な事柄はわかりやすくアンケート形式になっていて特に戸惑うこともなく入力できた。アンケート内容は、自分の情報、名前とか住所とか、職歴とか履歴書に書くようなものだった。最後に、陰陽師としての力に目覚めたのはいつか等の陰陽師についての質問事項が少しあったのが特徴的なだった。


「真琴、終わったよ。」


 私は入力が終わったことを真琴に教えた。真琴はにっこり笑って、


「お!終わった!?じゃあ次はこっちをお願い!」


 と言って、私の後ろからパソコンをいじって違う入力画面を表示した。


「これは未来が連れている妖怪の登録に必要な情報を入力するページだよ。確か2体使役しえきしてるんだったよね?」

「うん。使役してるって言うとなんか違う気もするけど、2人いるよ。」


使役しているってたまに言われるけど、あんまりしっくりこないんだよなぁ。


「うふふ。そっかそっか!」


 何やら含んだように笑っている。一体どうしたのだろうか??


「え!?なんか変だった??!」

「使役って言葉使わないんだね!なんか嬉しくなっちゃった。やっぱり未来のこと好きだなー!私も妖怪だからきっと対等に接してくれると思うとね!」


そっか。やっぱり妖怪側からしても、使役されるっていうのはあんまりいい印象ないんだなぁ。


「あー!そう言うことか!?でも、やっぱり使役って言われるとしっくりこないなー。なんか友達とかパートナーとかそんな信頼をおける存在だからね!」


 私は、空亡達と出会ってからのことを思い返しながら正直な気持ちを話した。真琴も出会ったばっかりだけど、すごく話しやすくて仲良くなれる気がする!


「そう言うところがいいなと思うよ!やっぱり妖怪は使うものって言う風潮がまだまだ浸透しているからね。」


 そうなんだ。今の世の中でそんな感じなんだったら、平安時代とかはもっと酷かったのかな。お父さんお母さんの話に出てくる安倍晴明とか蘆屋道満はそんなイメージないけどな。その辺の歴史とかは帰ったらお父さんに聞いてみようかな。

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