第三十九話 〜最古の陰陽師〜
長老から仕事内容について説明を受けた。基本的には妖怪関連のトラブル解決に従事しながら修行というか経験を積んでいくことになりそう。
この前、「厄」の妖怪たちの計画を打ち明けたことで、戦力の増強を行っているみたいだ。遠からず決戦は避けられないと思っている。そのための人員募集と既存陰陽師の強化を優先しているようである。私は今回の計画において中心である空亡と行動を共にするからより強化をしなければならないと考えている。
正直なところ、他の仕事をしながら修行もして空亡の手助けもってなると体がもたなかったかもしれない。もしかしたら、こうなることを見越して長老は私に雇用の話を振ってきたのかもしれない。
「長老…もしかして…。」
「ん?なんだ??」
長老はキョンちゃんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら呑気のんきな表情を浮かべている。私には野暮やぼなことは聞くな。偶然だと思っておけばいいんだ。と言っているように感じた。
「わかりました。ありがとうございます。」
「ん?なんだよ、いきなり。怖いな。」
長老はおどけている。まあ、そういうことにしておこう。とにかく、私が強くなる機会を得られたのはいいことだと思う。
「まあ、気にしないでください!とりあえず、今日から頑張ります!」
「お、おう!よろしく頼むぜ!」
今は細かいことは気にしない。がむしゃらにでもいい、とにかく経験を積んで強くならなくちゃ!
―『未来。ありがとう。できることは手伝おう。』―
―「こっちこそありがとう!早く力になれるように頑張るね!」―
空亡との約束を守ると決意を決めた時から私は強くなると決めた。ソラとも一緒に強くなると決めた。もう私は1人で強くなるわけじゃない。むしろ、一緒に強くなってくれる仲間がいることが心強い。
「話は変わるが、今、妖怪の活動が緩くなっているみたいなんだ。この機に軽く経験を積むっていうのもいいんだが、どうしてもきな臭くてな。嵐の前の静けさのような感じだ。」
長老が唐突に話を始めた。部下のみんなはまだ詳しく状況をわかっていないみたいで喜んでいるみたいだが、妖怪によるトラブルが減ってきているらしい。これに関しては空亡の考えがあるようで発言した。
『長老。それについてだが、もしかしたらという程度だか、耳に入れておきないこたとがある。
少し前に未来とソラを解放した時の話なんだが、その時に「厄」の幹部である
空亡は玉藻前との戦いの後の考察をした。
「ふむ、そう言った事情があったのか。」
長老は顎に触れながら考えているように首を傾かしげている。
『すまない。もう少し早く伝えるべきであったか。』
空亡は情報共有が遅かったかと詫びを入れた。
「いや、過ぎたことはどうでもいい。今この情報を得たことでこれから何ができるかが重要だな。まずは今の妖怪による被害の統計を調べてみよう。そこから何かわかるかもしれない。」
長老は今の情報から何か好転しないかと考えている。小さな情報でも世のために知恵を振り絞る姿は大臣そのものだった。
『よろしく頼む。』
「空亡、そんなこと考えてたんだ!?なんとも思ってなかった。すぐ誰か仕向けてくるかと思ってた。」
私は空亡の考察にも驚いていた。あまり自分の考えを言う方ではないからだ。
『のっぺらぼうを撃退したから下手に襲撃もないとは思っている。無駄な鉄砲は撃てないからな。となると、回復を待ち総力戦で我を潰しにくるのが順当かと思ったのだ。』
「そうなんだね。どっちにせよ、空亡が狙われるってことは私も出向かなくちゃだもんね!早く強くならなくちゃ!」
『どれだけの期間待っていられるかは定かではないが、玉藻前の負傷から考えて、半年は動けないだろうが…。それくらいは余裕があると思ってもいいと思う。』
空亡も少し考えるように話した。
「よっしゃ!やることは決まったな!!みくちゃんは修行!俺たちは情報の整理!情報のすり合わせは適宜行っていく!これで行こう!」
長老が今後の方針を簡単にまとめてくれた。修行についての内容は特に触れていないが、どうしたらいいだろう。
「承知しました!がんばります!……で、私はどうやって修行したらいいんですか??」
「おっと、そうだった。修行の内容なんだが、基本的には外回りでトラブル解決って感じで経験積んでもらいたいんだが、みくちゃんは空亡くんとソラちゃんがいるから次の目的を2人と相談して決めればいい。どんなことをするかの報告と終わった後の報告をしてくれればいいぞ。」
「なるほど。わかりました。とりあえずは2人と相談してみます!報告はどこにすればいいんですか?」
「その報告は各支部。みくちゃんなら群馬支部で報告してくれればいい。今日は群馬の支部長に来てもらっているからこれから挨拶に行こう。他に何か質問はあるかい?」
なんとも用意がいい。支部といっても、報告やら連絡を行う中継所みたいな位置付けみたいだ。基本的に外回り仕事だから、そう言った連絡の処理は部署分けして行っているみたいだ。
「ありがとうございます!よろしくお願いします!とりあえず、聞きたいことは聞いたと思うので、またなんか思いついたら聞きます!」
「よし。じゃあ、群馬支部長のところに行こうか!」
長老との話が終わり、これからお世話になる支部の支部長の方に挨拶に行くという流れになった。今日は定期報告のためにここに来ているらしい。私の話も通してあるのでさっきの歓迎の時にもいたらしい。
――オフィス内会議室1――
トントントン…
長老がノックをし、中からどうぞと声があがる。
扉をあけて中に入る。私は長老の後について室内へ入る。そこで待っていたのはさっきの歓迎の時に1番前で私を心配してくれた男性だった。
「あ!さっきの…!?」
私は思わず声を上げてしまった。その声に長老が説明を加えた。
「そうだな。さっきの歓迎で率先して場を盛り上げてたやつだな!彼は
軽く長老からの紹介があった。
「ご紹介に預かりました。
彼はにこやかな笑顔が特徴だなと感じた。歓迎の時もそうだったけど、笑顔を絶やしていない。というか、目を閉じている気がする。目が見えないとかなのだろうか?身長は170センチちょっと過ぎくらい。細身でミディアムヘアを軽くワックスでセットして少し茶色がかった色をしている。決して不潔な感じはない。
「あ!すみません!こちらこそ、よろしくお願いいたします!」
私は挨拶をすませて、その場に用意されていた椅子に座る。恵慈さんと長老も椅子に座って、話を始める。
「恵慈!今日はありがとう!どうだい??実際にみくちゃんに会ってみて!?」
恵慈さんは目を少し開いて私をみる。その目は異様にキラキラしていた。瞳にはいくつもの瞳が集合しているようで、その瞳がさらにキラキラ光り異様な輝きをもたらしていた。そして、そう感じたのも束の間、また目を閉じていた。
「そうですね。隊長と副隊長の血をひいてるだけあって潜在能力値はずば抜けてますね。でも、まだ流れが安定していない感じがありますね。」
恵慈さんの目はなんか能力があるってことかな?
「みくちゃん、多分気づいたと思うけど、恵慈の瞳は特別なんだ。こいつの瞳は『
長老の説明に、恵慈さんも説明を追加する。
「今長老が説明してくれたみたいに、いろんな力が見えるんだけど、情報量についていけないこともあって、なるべく目を閉じているんだ。ごめんね。」
「あ、いえいえ!大丈夫ですよ!すごいですね!契約できているのって今5人しかいないっていってませんでしたっけ!?」
契約できている人ってことはすごい希少な人物ってことだよね!?
「そう!そうなんだよ!恵慈はこの若さで契約を成立させているすごいやつなんだ!まあ、その桁外れの適性を評価して支部長を任せているってわけだ!
それだけじゃなく、恵慈と言えば日本における最古の陰陽師の血筋だ。」
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