第二章〜新たなる決意と共に…〜
第三十七話 〜陰陽省初出勤〜
今日はついにやってきた陰陽省への初出勤日。
今日は長老が迎えにきてくれるとこになっている。陰陽省本部は東京にある。ここで初公開となるが、私の地元は群馬県である。東京までは少し時間がかかる。基本は各地域に支部があり、そこを拠点とするみたいだが、今日は初日ということもあり、本部である東京へ顔見せに行くことになった。
東京へは電車で向かうことになった。大臣が一緒にいることから、新幹線のグリーン車に乗ることができた。初めての体験だ。こんな感じなんだなー。
ちなみに陰陽省のメンバーは表舞台には出てこない。選挙も特にない。陰陽省は陰陽師の界隈でも実力がものを言う世界のようだ。大臣を筆頭に役職を持つもの達は実力がずば抜けているらしい。大臣は陰陽師たちの意見を総合して決められ、部下たちは大臣が任命して役職につける。
表舞台に出ないだけあって、普通の大臣選出や、選挙方法とは別次元の選定をしているみたいだ。そんな中で、大臣を務めている長老はほんとにすごい人なんだと感じた。今は電車の隣の席でぐーすか寝ているこの人が!?と思うけど、きっとすごいのだろう。ただそこまですごい人物なのに表舞台に出てこないから、テレビとかで取り上げられることはない。いいのか悪いのか…。
私は新幹線が走っている間、スマホをいじっている。初出勤の挨拶や、都会でのマナーなどを調べている。正直、付け焼き刃にもならないだろうし調べたところで何の役にも立たないとは思うのだが、何かしていないと落ち着かない。
―未来さん。これから向かうのは陰陽師の総本山ということですよね?色々な妖怪たちもいるんですかね!?―
ソラが念話で話しかけてきた。意外と人懐っこくて、社交性もあるソラは他の妖怪と出会って仲良くなりたいらしい。東京の妖怪に興味があるようだ。まあ、1000年以上も封じ込められていてやっと解き放たれたのだ、関わりを持ちたいと思うのも不思議ではない。
―「どうだろうねー。一応、普通の会社のような感じみたいだから、その辺を妖怪がうろついているとは思わないけど。妖怪も登録とかされているみたいだし。」―
―そうですか…。では、会えたらいいな程度に思っておきましょう。―
少し残念そうな声であった。そんなに楽しみだったんだね。
―「そうだね。そういえば、ソラと空亡は私の専属妖怪として登録しなくちゃいけないみたいなんだけど、問題あるかな?」―
―わらわは問題ないですよ。―
―『うむ。我も問題はないぞ。』―
空亡も念話に参加してきた。陰陽師は妖怪を使役するが、使役する妖怪は陰陽省に届出をして登録せずに戦闘行為等をすると罪に問われるらしい。今の私たちは長老の職権濫用によって目を瞑ってもらっている。陰陽省で働く上で、その辺はしっかりしないといけないようだ。とは言っても、届出も簡易的なものだしそんなに面倒ではないらしい。昔に比べたらシステム化した現代は楽なようだ。
―「じゃあ、とりあえず、着くまではのんびりしてようか!」―
――東京到着――
「うぃーー!よく寝たー!」
長老は新幹線から降りて伸びをしながらそんなことを口走った。きっといつも大変だから移動時間とかしか休む時間もないのかな?と考えていたが……。
「やっぱりこういう移動時間はサボれていいなー!いつもは火車に任せて移動してるから休まらんしなー!みくちゃん!ありがとう!」
感謝された。まあ、いつもは移動時間も短縮しているということで、忙しいんだな。きっと、そうだ。
「いえいえ。ここから陰陽省は近いんですか?」
私の言葉に一瞬驚いたような顔をして、すぐに真剣な面持ちになって長老が小声で耳打ちをした。
「みくちゃん。悪いね。言ってなかってけど、その名称はあまり公の場でださないようにしよう。理由はあとで話すから、とりあえずついてきてくれ。」
そういうと、スタスタと改札の方へ歩いて行った。私がついていけるくらいのスピードなのですぐに追いかける。東京駅の丸の内中央改札口まできた。何事もないように改札を出て、正面の階段の方に向かっていく。階段を登り踊り場にでる。正面の壁にカードキーのようなものを当てると、私たちを包む結界のようなものが展開した。周りを見渡してみても人がこんなにいるのにみんなこちらに気づいていないようだった。この結界が影響を与えて意識を阻害そがいしているみたいに感じられた。そして、ガコッという音と共に、左側の壁が開き階段が現れた。私たちは長老に続いてその階段を登って行った。
登りきったその先に受付のような場所がある。壁には陰陽五行の描かれた旗に陰陽省と書かれたものがドンッと飾られている。
…ここが陰陽省の本部なんだ。と、確信した。
受付の机の前に女性が立って待っている。
「お待ちしておりました、藤原大臣。そして、ようこそ、未来様。」
「おう、出迎えご苦労様!!変わりないかい?」
その受付に立っている女性は生気が感じられないような瞳孔が開いた瞳をしており、淡々と喋る声にも覇気がないような感じがする。そして、真っ白な肌のキャリアウーマンのようなスーツ姿をしている。
それと、左目を覆い隠すように額のあたりから何やらお札のようなものがついている。
「はい。特に変わりはありません。強いていえば、皆さん浮き足立っています。仕事に集中して欲しいものです。」
「ガッハッハ!そりゃしかたねーよ!新しい仲間が来るんだからな!」
ハッとなった。社内は私が来るということで浮き足立っているということだ。みんなが私に注目しているということで急に緊張してきた。
「おいおい。みくちゃん。そんなに緊張しなくても大丈夫だよ!」
「はい。それについては問題ありません。このおっさんが何とかしてくれます。」
「キョンちゃん…。おっさん呼びはどうにか何ないのか?」
「何のことでしょう?」
2人の会話を聞くと結構な親密な関係であるような気がするけど。
「まあ、いいか。とりあえず、先に紹介しておこう。彼女は俺の秘書を務めている、キョンちゃんだ!本名は……秘密だ。なんとなく感じていると思うが、彼女は妖怪。まあ、キョンシーだな。」
キョンシーだからキョンちゃんか。長老も安直だな。それにしても、秘書か…それなら親密というか、近しい関係というのは理解できる。
「はい。キョンシーのキョンちゃんです。気に入ってますので、よろしければキョンちゃんとお呼びください。」
まさかの気に入ってた!?
「あ、はい。よろしくお願いします。キョンちゃん…さん?」
「キョンちゃんです。」
「キョンちゃん。」
「よろしい。」
ほんとに気に入ってるーー!!
「挨拶もすんだし、先に進もう。キョンちゃんには未来のことはあらかた話してある。正直キョンちゃんじゃないと俺の秘書は務まらんな!それくらい優秀だ!」
笑いながらキョンちゃんの自慢話を始めた。ただ長老は人を見る目や評価する力は信用できると思う。きっとキョンちゃんは本当に優秀なんだろう。
「あ、ただしキョンシーは札が本体のようなもんだからそれだけはいじるなよ?」
長老に注意をされた。そういえばお札が貼られている。描かれている文字はわからないけど、なんか映画とか漫画とかで見たことのあるようなお札だ。
「まあ、触る前に一発喰らうだろうけどな!」
キョンちゃんは強いみたいだ。長老の一言で確信した。まあ、大臣の秘書を務めるくらいだからそれくらいの強さはあるんだろう。しかし、役職があるのは陰陽師だけだと思っていたけど、妖怪も仕事をしているのだろうか?
するとソラが興味を示したようだ。念話で話しかけてきた。出会えないと思っていた妖怪に出会えて嬉しかったのかな??
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