第二十五話 〜両親の存在〜
「もしかして、行きは何かされてたの?」
終わりがないとまで思った階段は恐らく何かの術であったと考えた。
『そうだな。どんな術かはわからんが、玉藻前の術中にハマっていたようだな。』
空亡は既にいつもの球体に戻っている。この姿は私も触れられるし、少し便利である。
―あれは一種の結界のようなものですね。空間を切り取り、空間を抜けようとすれば同時にその空間に入ることになる。またややこしい術を使いますねー。―
首のところから天狐であるソラが捕捉してくれた。
「妖怪って色々使えてすごいね。」
『あやつは特に器用だからな。陰陽師も極めればそれくらいは出来るようになるとは思うぞ?晴明も大雑把ではあるが、色々な術を使っていたしな。』
「へぇー!そうなんだ!でも道のりは長そうだなー。」
正直、自分がそこまで出来るような気がしない。まあ、無理もないだろう。つい最近までは、幽霊、妖怪だの常世の存在が見えるだけの一般人だったんだから。
『まあ、気長にやることだな。だが、未来の潜在的な能力なら晴明にも負けてはいないと思うぞ?だからこそ、基礎から修行が重要になってくるだろうな。』
基礎かぁー!やっぱり基礎だよねー!基礎って地味で得意じゃないんだよなー…!でも、先人の言葉は信じるが吉だよね!気持ちを入れ替えていこう!
3人(?)で、今後の修行についての話をしながら、家に帰ることにした。
――自宅――
「ただいまー!」
帰りの知らせの挨拶とともに玄関へ入った。靴を見ると誰か来客しているようだ。うちは玄関の正面に階段があり、階段を上がると私の部屋がある。リビングは階段の脇の扉から入れるようになっている。来客は基本的にリビングに通している為、今、リビングにはお客がいるだろう。いきなり急に入っても迷惑なので、一旦荷物を置きに部屋に行こうとした。
その時、
…ガチャッ
「未来、おかえり。ちょっとこっち来てくれるか?」
リビングの戸が開きお父さんがリビングへ来るように頼んできた。来客は私の知っている人なのだろうか?まあ、呼ばれたからには行かないわけにも行かないし、とりあえず、リビングに入ることにした。
「ハロー!みくちゃーん!昨日ぶりー!今日も決まってるねー!!」
暑苦しい感じの長老がそこに待っていた…。
昨日に引に続き少し胸焼けしそう…。
「おいおい!胸焼けしそうとか思ってないか!?」
ギクッ!?!?
「え!?べ、別にそんなことはないよ!?」
声が裏返りながら、つっかえながら発せられる。私は隠し事に向かないようだ。
『ほらな、顔に出るんだよ。』
「うるさい!!」
小声で私に、ほら見たことか!?みたいに言うもんだから、少し恥ずかしくなり照れ隠しに空亡にあたった。
まあ、そんなことはさておきと言わんばかりに、長老は話を続けた。
「まあ、その辺は置いておこう!みくちゃん。今日ありちゃんから連絡を受けてな。今の常世の状況をかいつまんで説明してもらったのよ。それは居ても立っても居られないと思ってな。今日も飛んできちまったわけよ!」
っと言っている長老の座っているソファーの後ろの壁が壊れているのがわかる。…今日もその登場したんだ。律儀に靴だけは玄関に置いてあるのに。
「それでな!そこの辺の詳しい話を空亡くんから直接聞こうと思ってな!」
「なるほど。お話は理解しました。私も帰ってきたところなので一旦着替えてきてもいいですか?できればお風呂入っちゃいたいんですけど。」
さっきまで戦っていたし、いっぱい泣いて顔もぐちゃぐちゃだし少しさっぱりしたい。
「ああ、構わねーよ!今日はここに泊まるつもりできたから時間はいくらでもあるわ!」
そう言って、後ろからスーツケースを取り出し、ニカっと笑った。
「ありがとうございます!じゃあちょっと失礼しますね!」
「おうよ!ごゆっくり!」
そう言って私はリビングから出た。リビングの中では、
―「また、今日は何かあったみたいね。あんなに泣きじゃくった顔して…。でも、どこか吹っ切れたと言うか、決意を決めたような目をしてたわね。」―
―「空亡殿がついているから大丈夫だろう。まあ、伝えたいことがあれば言ってくるさ。それまで待っていてやろう。」―
―「いっちょ前にパパやってんじゃねーか!いいね!いいねー!」―
―「おちょくらないでくださいよ!!」―
こんな感じでみんなで話しているのが小さく聞こえた。まあ、わかっちゃうよね。でも、私と空亡のことを信じてくれている。私は嬉しくなった。
よし!とりあえずはお風呂入ってさっぱりしちゃおう!
――お風呂から上がり――
「……どういう状況??」
お風呂から上がり、リビングに行き、部屋の中の様子を見た時に無意識に出てしまった言葉である。
なんとなくわかる。長老とお父さんが飲みすぎて雑魚寝しているのはわかる。
でも、お風呂に入っているちょっとの時間でここまでなるか??
「未来がお風呂入った後に、長老がお土産の地酒をあけたのよ。アルコール高いのに、飲みやすい!とか言ってガバガバ飲んでこんな状況よ。2人ともたいして強くもないのに…。」
お母さんもお酒を飲みながら状況を説明してくれた。お母さんはザルだからいくら飲んでもつぶれない。そんなお母さんでもちょっと酔っ払って見える。どれだけ強いお酒だったんだろう…。
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