第二十二話 〜絶望〜
少し時間は遡り……
空亡は違和感を感じていた。
「
しかし、今回はおかしい。お互いに撃ち合ってはいるが、我にはまだ余裕がある。対する玉藻前の顔は笑みを浮かべてはいるが、いくらか我の攻撃を受けている。
『どうした
「そんなことはありんせん。あんさんが強くなったんじゃありんせんか?」
押されているのに妙に余裕があるのがまた奇妙だと感じた。
その時フッと仮面で視線は見えないが、玉藻前の意識が自分の後ろにいった気がした。
自分の後ろには未来しかいない。未来を気にかけているのだろうか?我も意識を向ける。未来は何かを見つけたようにその場を離れていっている。
なにをしているんだ!?と
我は未来に何をしているのか問いかけなければならない。幸いにも我の方が押している状況だ。少しの時間くらいなら大丈夫だろう。そう考え、未来の方へ向かおうと隙を
「なにを気にしてるでありんすか?」
未来と我の間に入るように玉藻前が割り込んできた。
『少しばかり気になることがあってな!そこを通してもらおう!』
力尽くでも未来のところに行こうと加速したが、玉藻前に
『一体、なにを考えている!?解き放たれた妖怪と共闘するつもりか!?それだけで我に勝てると思っているのか!?』
「あー、怖いでありんすねー。まあまあ、それはなってみてからのお楽しみでありすよ。」
未来は祠に妖力を放ち、祠から妖力の渦が舞い上がってきた。
『クソッッ!!もう遅いか!?だが、今の我なら、お前と封印された妖怪を相手することも可能だ!』
さっきまでの玉藻前であれば、妖怪がもう一体増えようが、相手取ることは可能だろう。悪妖怪と一緒に封印されている妖怪も加勢してくれれば、なにも問題はない!
『未来ッッ!今そっちに行く!!祠から離れろ!!』
呆然とする未来は我の声にビクッと反応し、少し後ろに下がった。なにやら訳がわからないと言う感じの表情をしている。
我は力の限り玉藻前の制止を振り切り、未来の前まで飛んでいった。
――プシューー――
祠からは耐えず妖力が放出している。前の土蜘蛛のように妖力が形を成すような予兆が見られない。この妖力は一体なんなんだ!?
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私が天狐の声を聞いて、妖力を放った祠から妖力がどんどん溢れてくる。離れたところで空亡と玉藻前が戦っている。うっすらとしか見えてはいないが、空亡の方が優勢な感じがする。それにしても早い戦いだ。私はなぜかボウっとしながらそんなことを思い、祠の前に
『……祠から離れろ!!』
急に空亡の叫ぶ声が聞こえた。
私はビクッとし、我に返り、言われた通りに後ろに下がった。その瞬間、私と祠の間に空亡が飛んできた。空亡は解き放たれた妖力を見ながら何か言っているが、聞こえなかった。その後、こちらを向いたかと思ったら、
『未来!?大丈夫か!?』
と、心配するように声をかけてきた。
「え?あ、うん、大丈夫!それより聞いて!今この祠に封印されている、天狐っていう妖怪から直接話しかけられて、力を貸してくれるって言ってたの!それで、妖力を分けてくれって言われて、ここに来たの!」
『なに!?』
空亡は驚いたように聞いてきた。なにが起こるかわからないこの状況ではそういう事もあるのだろうかと
すると、祠から噴き出していた妖力が、渦巻きながら収束し、ある一点に向かって飛び出していった。祠からはもうなんの妖力も噴き出していない。そして、その妖力の向かった先には、先ほどまで空亡と対峙していた、玉藻前が立っていた。噴き出した妖力が、天狐のものであって、玉藻前に攻撃するということならいいのだが、嫌な感じしかしない。妖力を迎える玉藻前は大きな笑みを浮かべてただ待っていた。
――シューーー……――
妖力は全て玉藻前に取り込まれていった……
「……はは…あっはっはっはー!」
私たちは絶句しながらその光景を見ていた。
玉藻前は大きな笑い声と共に言い放った。
「嗚呼……この感じ……随分と久しぶりでありんすぇ。平安時代に天狐によってわっちの力の一部が封印されていたでありんす。その力が今、ようやっとわっちの元に帰ってきたでありんす。しかも長い間をかけて天狐の力もほとんど吸収できたみたいでありんすねぇ。」
私は、この状況に言葉が出なかった。
もしかして、私はとんでもないことをしてしまったのでは……。
「さて…。まずはお礼を言っておくでありすね。お嬢さん。わっちの力を取り戻してくれてありがとう。」
…………
……
……私は絶望した…。
……私の行動が、仇になってしまった…。
……空亡になんて言ったらいい…。
……どんな言葉をかけたらいい…。
……私は……どうしたら……
…………
………………
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