第二十話 〜誘い〜
このタイミングで接触を持ってくるということは、と言うか、消えていったあたり妖怪に属する何かからの案内であることに間違いはないだろう。
「ねえ、空亡。さっきのお客さんみた?」
『ああ、見た。妖力は限りなく人間に寄せていたが、妖怪であることに間違いはないだろう。』
「
単純に気になったことを聞いてみた。
『逢魔時とは、常世と現世の境界が
「一応、仕事終わったら行ってみようとは思う。ここまできたってことは、私の情報は大体掴んでるってことだと思うし、無視して他の人に危害がないとは限らないし。」
そうだ、他の人に迷惑はかからないように立ち回らないとダメだ。
『なるほど。頭が回るな。確かに危害がないように立ち回らないとな。とりあえず、我も一緒に向かおう。』
「ありがとう。じゃあ、それまでは仕事をしよう。今のところ順調だし、16時には上がれそう。」
今日は平日で、そこまで忙しくもないから早く上がれそうな気がする。まあ、もし大変になっても、なんとか16時には上がらせてもらいたい。
――カランカラーン――
そんな時に普通のお客さんが入ってきた。気持ちを切り替えて、仕事をしよう。
「いらっしゃいませー!」
そんな感じで、16時まで仕事を行った。
――PM16:00――
「みくー!今日はもうパンも売り切れたし掃除が終わっているようなら上がっていいぞー!」
社長からそんな申し出があった。私はなるべく早く上がれるように、掃除を行っていた。今日は早めに上がれそうでよかった。
「ありがとうございます!じゃあ掃除も終わってるので帰りますねー!」
「あいよー!気をつけて帰れよー!」
「はーい!お疲れ様でしたー!」
そんなやりとりをして、私はパン屋の更衣室で帰りの準備をして帰路につく。棚に置いてあった空亡を鞄に詰めて駐輪場まで行き、自転車にまたがる。
昼間のお姉さんにもらった地図を取り出して場所を確認する。スマホの地図と照らし合わせて、目的地を設定する。目的の場所は「天明神社」という神社のようだ。
『ふむ。この場所は我が妖力の強いといっていた場所のひとつだな。何があるかはわからない。用心しておくんだぞ。』
「うん、わかってる。注意しておく。」
妖力の強い場所だと空亡の注意を受けて、気を引き締めた。おそらく、この場所にも平安時代に封印された妖怪が居るはず。今は
そんなことを考えつつ、自転車をこいで、目的地へ向かう。ここから自転車で20分くらいの場所だ。少し遠いが、時間はまだある。慎重に向かおう。
――天明神社前――
私達は目的地の天明神社前についた。
この神社は小山の上にあるらしい。
入り口には大きな赤い鳥居があり、奥まで階段があり小さな鳥居が連なっている。なかなか大きな神社のようだ。その鳥居にはいろいろなところから
私は恐怖心を押し殺し、一歩ずつ階段を登っていく。
「はあー…ちょっと怖いなー。夕方なのに結構くらいじゃん…」
『樹々が生い茂っているからな。光を遮断しているな。だが、この時間帯は妖怪達が現世に出入りしやすい時間帯だ。我は気配察知に力を入れておこう。何かあったらすぐに知らせる。』
「ありがとう!何かあったらすぐに言ってよ!?」
『ああ、わかった。』
そう言うと、空亡は黙ってしまった。私は長い階段をずっと登り続けている。それにしても、ずいぶん長いなー。そんなに山奥に行かなくちゃなのか?
そんなことを思いながら階段を登っていると……、
『…ッッ!?止まれ!!』
――ヒュッ――
刹那、空亡の声に驚いて立ち止まった私の目の前を何かが通り過ぎていった。
通り過ぎたものはその先で木に刺さっている。15センチメートルほどの白いつららのような物が刺さっている。
「え!?もしかして、狙われてる!?」
『そうみたいだな。やはりこの誘いは罠だったみたいだな。』
「まあ、そうだよね。怪しさ満点だったし…。」
怪しいとは思っていたけど、見過ごすことはできなかった。
『まあ、とりあえず、いいように捉えよう。実践修行という事で我が簡単な術を教えよう。』
空亡はこんなタイミングでも、私の修行をやろうとしていた。確かに修行不足だし、強くはなりたいけど、なかなかスパルタだった。
「ッッ!?それで!?どうしたらいいのかな?」
『まずは、索敵だ。自分を中心に妖力を感じられるようなレーダーと言えばいいか、そんな効果を思い描いて力を練ってくれ。』
まずは効果を得られるような力を練る事が大切なんだっけ!?効果を思い浮かべて、それに合うような力を練る。空亡が言うには、陰陽の方式に合うようにまずは相反する力を分けて練る。そして、レーダーは波のように波状に広がっていくイメージを五行の水になぞらえてイメージを固める。
「うん、こんな感じかな!」
『できたか。ではその力をこの術式に合わせてみてくれ。』
空亡はそう言うと、私の額にコツンとぶつかり、それと同時に術式が頭に浮かんだ。その術式に先ほど練った力を注ぐイメージで力を流した。
――ファァァァーーーー――
私を中心にあたり一帯の情報が頭に浮かび、点々と火の玉のような灯りが感じとれる。
「…おおお…」
『正常に発動したみたいだな。これが「
確かに何があるのか手に取るようにわかる。大きな火の玉は火の玉というよりも何かを形取っているみたいに見える。それがなにやらものを投げるような仕草をしたように見えた。
――ヒュッ――
その時またこっちに向かって何かが飛んできた。
ガキンッッ!
飛んできたものを空亡が弾いていた。
『用心しろと言ったろ!?』
「あ!?ごめん!?……いや!でも、いきなりこれは無理でしょ!?」
初心者にあれを避けろという方が無理だろう。
『ん?…ああ、すまん。確かに無理があったな。なるべく守るから、気配に気を配ってみろ。』
空亡は素直なのか自分に非があると感じたらすぐに考えを改める。そんなところが好きである。
そんなことを考えていると、気配の主が近づいてくるのがわかる。結構な速さだ。階段横の茂みからバッと現れたそれは、忘れもしない。
空亡と初めて出会った時、空亡と対峙していた白い肉の塊の妖怪だった。
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