第十六話 〜長老、藤原利信〜

内閣府陰陽省陰陽大臣、藤原利信。

規模がデカすぎて、ちょっと頭が追いつかない。

陰陽省とはなんだ!?

国!?

確かにお父さんは国と通じているのは聞いていたが、そんな組織があるとは思わなかった。もっと民間が協力しているくらいだと思っていた。

それが、国ぐるみでそんな組織が存在しているなんて!?!?

そんなことを思っているとお父さんが補足してくれた。


「多分、こんがらがってると思うから、説明すると、現在の日本には陰陽省という組織があるんだ。これは表向きには公表されていない組織なんだ。現代でも、思っている以上に妖怪による影響って多いもんで、そういった妖怪による問題に対応するために設立した組織だ。

 実はこの組織にお父さんとお母さんも所属しているから、政府に協力要請ができたんだ。」


両親が所属していることも驚いたが、まあ、納得はした。


「でも、うちは整体院で基本的にはここで仕事してるよね??」

「また、これも特殊でな。基本的に陰陽師は官庁に勤めているわけではない。官庁勤めの人達は陰陽師ではなく、その情報をまとめる事務的な感じだな。陰陽師は自分の仕事をしながら、陰陽省からの依頼を受けたら対応するっていう流れになる。正式には陰陽省特殊派遣部隊と言われている部隊だな。」


なにやらかっこいいフレーズが出てきた。そんなアニメみたいな部隊が存在しているなんて。しかも、それに両親が所属しているとはなんともすごい…!!


「ありちゃん、サンキュー!!っという訳で、俺が現代陰陽師のトップということだ!で、みくちゃんが間違った力の使い方をしないかどうか、それを実際に確かめにきたって訳だ!」


 お父さんからの言葉を受けて、今度は長老が締め括った。なるほど、現代陰陽師のトップとなればそう言った確認も頷けるか…。


「そっか、とりあえずは、合格ってことだから、私は認められたってことでいいんだよね!?」

「ああ、問題ないね!こんな突拍子のないことも何気なく納得しちゃうあたりとか、ぶっ飛んだ感じはどこかネジ飛んでそうだけど、全然問題ない!」

「な、失礼な…!?でも、大臣自ら来るなんて、大変じゃないんですか?」


 きっと、妖怪と人間を区別しないという事がぶっ飛んでるところなんだろうなと思いつつも、毎回こんなことをやっているのかと疑問に思った。


「いや、今日はありちゃん家だったし、力の規模がとんでもなかったから俺が直々に来たまでよ!本来は部下に向かわせてちょちょっとアンケートとって終わりよ!あと、大臣は堅苦しいから長老か、トッシーって呼んでくれ!」


 長老もなかなかに堅苦しそうだけど、気に入っているのかな??それにしても私の力ってそんなに大きいのかな?まあ、ご先祖様達が強大だから、弱くはないだろうけど。


「あ、ちなみに特殊派遣部隊の隊長がありちゃんでみっちーは副隊長だぞ!」

「なんですと!?」


 しまった。声が出てしまった!?お父さんお母さん、すごいことしてたんだね!?普通の両親だと思ってたけど、ちょっと見る目が変わりそう。まあ、すごい事だから尊敬はしてる。


「まあ、そんな感じだな。お父さんもまさか隊長をやるとは思っていなかったよ。でも、慣れちゃえばなんとかなるもんだ。」


 お父さんは特に苦言をいう訳ではなかった。


「2人で旅行と称して出掛けていたのは大抵、陰陽省からの依頼があっての出張のようなものね。」


 お母さんも話に補足をした。


「まあ、仕事だけじゃ勿体無いし、ついでに観光もしてたから結局は旅行のようなものだけどね!」


 そうか、依頼ともなれば交通費とかホテル代とかは国持ちだし、ローコストで旅行行けてたのかー!?羨ましい!!


「それでも、大変なことには変わりないよなー。」


私は両親がどれだけ大変な思いでこの仕事をしてたのかはわからないけど、仕事の掛け持ちは大変に違いない。それに加えて、私もまだ成人していなかった頃もあるだろうしなぁ。


「みくちゃん。みくちゃんさえ良ければ、今後の進路としてお父さんお母さんと同じ道を行くことも可能だぞ!?まあ、急に答えは決められないだろう。よく考えてみるといい!今はパン屋だっけか!?そっちも大切ならそれでもいい。別に無理強いはしないさ!」


 長老はそう言って私の将来の可能性を与えてくれた。


『現代の陰陽師も捨てたもんではないな。未来には今は我の協力をしてもらっているが、我も縛りたくはない。事が済んだら好きな道を歩むといい。』


 空亡はそういうが、私も今は漠然とパン屋で働いているだけで、なにか目標とか目的がある訳ではない。私はこれからどういった道を歩むのか、まだわからないけど、今を精一杯生きて、見つけていきたいと思う。


「さて、お目当てのみくちゃんにも会えて確認もできた事だし帰るとするかね!」


 そうすると壊れた窓の付近から人の顔をもつ牛とその背に黒猫を乗せて現れた。


『ほう、くだん火車かしゃか。随分珍しい妖怪を連れていたのだな。』


 空亡は珍しそうに言った。

 それぞれ、くだん火車かしゃというらしい。珍しい妖怪とはどういう事だろう。

気にしていると、火車かしゃが話し始めた。


『なあ、おっちゃん、オイラの力使って人んち壊すのやめてくれっていつもいっとるやないか!』


 その言葉にくだんは頷く。


『うんうん』


 火車かしゃは話を続ける。


『しかも、すぐツッコんでやりたかったのに、なにやら真面目な話しとるし、出てかれへんやん!?』


 くだんは頷く。


『うんうん』


 さらに続ける。


『やっと頃合いみて出てこられたと思ったら、もうお帰りかいな!?どーなっとんねん!?』

『うんうん』

『お前さんも頷くだけかい!?』


 バシッと自分の下にいるくだんをひっぱたく。


『うんうん』

『こりゃあかんわ』


 2人?がわいわいとコントをやっているところ、長老が話に割って入ってきた。


「さあ、帰るぞ、壊したところ直してくれ。」


この2人の対応に慣れているのか、特に何事もなかったかのように長老がそういうと、くだんがなにやら唱え始め、瓦礫となった部屋の壁とか窓とかが巻き戻しするように直っていった。


「え!?え!?」


 私はなにが起こったのか、映画でも見ているかのような気分になった。

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