第十五話 〜長老の正体〜

「ハロー!ありちゃん元気かー!?」


そんな言葉とともに挨拶をした常識知らずのおじさんがリビングに立っていた。


「『ありちゃん元気かー!?』じゃないですって!?毎回言ってますよね!?もうちょっと登場を自重しろって!?」


お父さんが激昂している。


「まあ、気にすんなよ!修理はすぐさせるからよ!俺の部下に任せれば一瞬よ!」


なかなか過激で派手好きな男なのはこの一連の出来事で理解できた。


「いやいや、修理する部下たちの身にもなってくださいよ!長老が壊さなければ無駄な仕事増えないんですから!?」


もっともだと思います。


「いや!!やっぱり派手に登場したいじゃないか!?男の矜持きょうじってものが分かってねーな!?」


そう言う問題ではないと思うんだけど。まあ、もう壊して来てしまったから、直してもらうしかないけど、ほんとにすぐに治るんだろうか…。


「はぁ、まあ、もういいですよ。それで、今日はやっぱり未来のことでいらしたんですよね?」


もう注意するのも諦めたように本題に移ることにしたらしい。


「そう、それだ!ありちゃんの娘は力に目覚めたんだよな!?ビンビン感じたぜ〜!とんでもねー潜在力だな!?とりあえず、俺が直々に確認しなきゃなんねーよな!?」


何やら下品なおじさんだな。でも、お父さんが長老には随分と下手したてにでている。お父さんの上司のような関係なのだろうか?

そんなことを考えていると、今の今まででふざけている様な長老が、急に真面目な顔をして私を凝視して言葉をかけてきた。


未来みくちゃん…君は何のために力を使う?」


急な真剣さに呆気あっけに取られてしまった。でも、この一言でお父さんが尊敬する人だと感じ取れた。この人はおちゃらけたようだけど、きっと誰よりも人間の未来みらいのことを考えている。この質問には取り繕って答えてはいけないと直感で感じた。


「私は…空亡の為に力を使いたい。」


嘘偽りのない真実の言葉だ。正直、人間の未来のためにとか大それたことは言えない。けど、ついこの間だけど、空亡と出会って彼の生き様に少しでも力になれたらと思っている。


「…それは、本気で思っているのか?」


念を推すように長老は聞いてきた。


「はい、本気です。」


長老からはなにやら威圧感があったが、私はなにも動じることはない。間違いようのない本心なんだから。


「…ッッはッ!がっはっはっ!嘘はないようだな!しかし、妖怪のために力を使うか!?やはり変わっているな!ありちゃんとみっちーの娘だわ!」


私は選択を間違ったわけではなさそうだ。威圧感から解放されて少しホッとした。


「え!?そんなにおかしいことなの?」


私は思ったことを言っただけなのに、ちょっと心外だ!


「みくちゃん、あんたはありちゃんとみっちーの娘だ。十中八九、常世の者たちの姿が見えるだろう。それも生まれつき。そういう奴らは人間も妖怪も同等の者と考える奴らが多い。知っているだろうが、そういう奴らはむしろ少数派だ。あまり、妖怪を信用してるとかは言わないほうが身のためだぞ。」


ちゃんと理解し


「だが、……合格だ!!さっきのは年長者からの小言として覚えといてもらえると嬉しいね。歳をとると説教くさくて敵わんな。心にもないことをほざく様ならぶっ飛ばしてやったがな!がっはっはっ!!」


ッッ!?よかった、変なこと言わなくて。


「そうですか…。気をつけます。でも、合格というのは…?」


後半の言葉で印象が薄れてしまったが、確かに合格と言っていた。私は何を試されていたのか?


「今から説明しよう。…その前に、そこの球体も気配を消してないで何か話したらどうだ?」


ずっと気配を消していた空亡に気づいていたようで、話を促した。


『うむ、気づかれていたか。まあ、そうだろうな。』

「これでも、長老と呼ばれる陰陽師だからな。それくらいはわけないさ。」

『なら、我のことも理解はしているな?』

「もちろんだ!みくちゃん最愛の空亡くんだろう?」


からかうように私の方をチラッとみながら言った。


「ッッな!?」


多分私は顔を真っ赤にさせているだろう。べ、別にそんなこと思っているわけではないんだけど!?あー、なんかツンデレみたいな反応になってしまう!?

そんなこんなであたふたしていると、


「まあ、冗談はさておきだ。みくちゃんが合格というのは、陰陽師としての力を行使することを許すということだ。」


ん??なんでおじさんに許可されなくちゃならないんだ?


「今、なんでおっちゃんに許可されなきゃならねーんだ、クソジジイ!って思ったろ!?」

「え?!いえいえ、そこまでは…!?」


あ、完全に否定できなかった!?


「わかるぜー、そりゃそうだよな!いきなり家壊して入ってきたジジイにいきなり許可されたってなにがなんだかわからねーよな!」


ええ、まあ、ぶっちゃけその通りなんだけど、なにか事情がありそうだな。まあ、長老とか呼ばれてるくらいだし、なんか組合のお偉いさんってところかな??


『未来、言っておくが、あの御仁の陰陽師としての力量はとてつもないぞ?』


空亡からもそんな話があり、私の説も信憑性を得てきた!こんなはっちゃけたのが上司とか大変そうだなー。


「おーい!ありちゃん!俺のこと、紹介してくんねーか!?」


長老はお父さんに紹介をお願いした。


「あ、はい。

 未来、先に紹介しておくべきだったな。こちらの方は、日本国内閣府陰陽省陰陽大臣にほんこくないかくふおんみょうしょうおんみょうだいじん藤原利信ふじわらとしのぶさんだ。みんなからは長老と呼ばれている、昔でいうところの陰陽頭という感じかな?」


……ん?

内閣府陰陽省?大臣?陰陽頭?

なんか町の集会くらいのをイメージしてたけど、規模がデカすぎた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る