第十四話 〜飛んできたもの〜
その日は夕方まで修行に専念し、力の練り方を習得した。
「初日にしてはすごい上達だ。あとは力の性質を感じることができれば上出来だろう。」
お父さんは出来のいい娘に誇らしそうな声で言った。
「まだ性質までは感じ取れないなー。ふわっとしている感じ。」
これができたらもっと自慢できたのに!
「それができたら一人前だよ。むしろできなくて安心してるわ!」
お父さんはほんとに安心したようだった。
とりあえず、今日はこの辺で終わりということで、リビングに戻り夕飯になった。久しぶりのお母さんのご飯だから舞い上がっています!
やっぱりお母さんのご飯が1番美味しい!
今日はいろいろあって疲れてるのもあるけど、すごいお腹が空いている。早くご飯が食べたい!そんなことを思っていると、お父さんが話をふってきた。
「お腹空いてるだろう?」
ええ、それはもちろん!
「すっごい空いてる〜。」
「力を練る時の消費カロリーってすごいんだぞ!?痩せたければずっと力練ってれば痩せるぞ!」
ははは!と笑いながら冗談めかして言ってくる。この空腹の原因は修行にあったのか。と納得する。でも、カロリー消費激しいとは知らなかった。ちょっと食べ過ぎた時とか便利かもしれないな!
だが、これから力を使う度にお腹が空いてたら元も子もないな。おやつはいつも持っておくようにしようかな。
「まあ、今はまだ全力で力を練っているからな!制御ができるようになればその辺の燃費も良くなるぞ!」
なんと!?それはよかった!
陰陽師…意外と便利だな。
「それはそうと、明日は普通に仕事か?」
気になったのか、心配になったのかお父さんに問いかけられた。
「うん、明日は普通に仕事だね。今日がなかなかハードだったから明日は辛そうだなー。」
「お風呂入ったらお母さんに少し診みてもらいな。今日の疲れくらいなら吹っ飛ぶぞ。」
お父さんに言われて、今日はお母さんに診てもらおうと決意した。
『奥方の回復技量も凄いぞ!我も万全に回復したぞ!平安の世でもこれほどの腕前の者はいなかった!』
空亡も少し興奮気味にはしゃいでいる。
基本はご先祖様とともにいたそうだし、回復専門の陰陽師にはあまり会わなかったみたいだ。
そんな話をしていると、ご飯の準備を終えたお母さんが、料理を運んできた。
「あ、お母さん!手伝うよー!」
「ありがとう。じゃああれをお願い。そんなに持ち上げられちゃうと照れるわね。」
お母さんは少し照れながら話をした。
『何を言う!?全然誇ってもいいと思うぞ!?有元もそうだが、現代の人は控えめなんだな!?平安の世は、我こそは我こそはと朝廷にひしめき合っていたぞ!?』
平安時代のことを思い出しつつ、現代日本人の奥ゆかしさを指摘してきた。当時はどうにかして自分を売り込まないと本当に命の危険性があったからなのだろう。現代日本ではそんな事はない。自分を売り込まなくても死ぬ事はない。餓死することもない。ある程度の教養があれば、普通の生活に不自由する事はないと思う。
「今は時代が違うからね。それに、陰陽師の
お母さんが発した言葉にハッとした。確かに今の世は妖怪なんてものは空想の出来事だ。声を高らかに陰陽師だぞ!と言っても誰も信じない。けれど、それらを知るコミュニティーは存在して、その中では有名との話だった。史上最高の陰陽師とそのライバルの子孫ともなれば、有名なのは必然である。
となると、気になるのは私の存在だ。
私はどのように知られているのだろうか?
「その陰陽師の界隈では私はどう言うことになっているの??」
「そうだな。一応、お父さん達に娘がいると言う話は伝わっているが、その容姿、性格、力の有無など詳しい事は全部隠してある。それはもう、本気で隠してきた。
元々は陰陽師のことは伝えるべきかどうか迷っていたくらいだからな。
だが、未来は陰陽師のことを知り、将来も陰陽師として生きていくと言う道も開けた。
今後のことはしっかりと考えていこう。お父さんとお母さんもしっかり聞いてやる。」
そんな話を聞きながら、私とお母さんが配膳を終えると、美味しそうな料理が目の前に所狭しと並んだ。
「そうね。正直、陰陽師としての才能は抜群だけど、平和な世の中だし未来のやりたいことをしていけばいいと思うわ。」
『うむうむ。強く優しい、いい両親を持ったな!』
「ほんとにそうだね!」
空亡の言葉に同意した。幸せな家庭に生まれてよかった!
ご飯も美味しそうだし!
あー、もうお腹が空いてきた!
「じゃあ、もう我慢できないのでいただきます!!」
私は空腹に耐えられず、ご飯を食べることにした。
「はい、どうぞ。」
お母さんからの了承も得て、食べ始める。お父さんお母さんも続けてご飯を食べ始めた。
空亡は球体のままなので、どこを見ているかわからないけど、きっとこの光景を微笑ましそうに見ている。そんな気がした。
今日のメインは唐揚げだった。大好物なので嬉しい!
いっぱい食べて満足したら力を練って消費しよう!
久しぶりのみんなでのご飯はやっぱり楽しい。こんな平和な時代をなくしてなるものかと思った。
そんなことを考えていたら、
「ッッああッ!!!」
っといきなり大きな声を出して固まった。
何事かとみんなも固まってお父さんの様子を見ている。お父さんは少しして、静かに声をあげた。
「やばい、長老に話するの忘れてた…。政府に連絡した時に話だけ通しておくんだった…。」
長老とか言うなんとも古臭い名前が出てきたな。長老に言わないとやばいのかな??
「あら、それはまずいわね。」
お母さんも何やら不味げな反応を見せている。
「それって何がまずいの?勝手に私が陰陽師として力を発したから?」
気になって聞いてみたところ、お父さんからすぐに返答があった。
「いや、陰陽師になるのは別に問題ない。急に力に目覚めるとかもないわけではないからな。基本的に陰陽師は国によって管理はされているが、国非公認の陰陽師もいるしな。
あの爺さん…もとい、長老がやばいのはもっと単純で、ただの派手好きなところだ。しかも、感覚が鋭敏で、日本中の陰陽師の力を感知できる。つまり、未来が陰陽師に目覚めたことはわかっているだろう。」
外の方から……ーーキイイィィン…と何やら星のようなものが飛んでいるのが見えた。
流れ星かなと思っていた。
「特に気になったことには目がないから、すぐに飛んでくる。文字通り飛んでくる。
……
…
かがめ!!!」
外の星が大きくなり、家の窓にぶつかって家の中に飛び込んできた!
私はお父さんの掛け声に合わせてかがんだ。
ええ!?え!?なに!?
埃をはたいて、そこに仁王立ちするのはアロハシャツと短パンを履いた、60前半くらいと見える口髭の生えたお爺さんだった。お爺さんと言ったら少し行き過ぎかもしれないが、ガタイのガッチリした初老の男性が立っていた。
「ハロー!ありちゃん元気かー!?」
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