第十三話 〜受け継がれる才能〜

修行の一環で、力の循環をしている時にお父さんが唐突に話をしてきた。


「そう言えば、政府に連絡を入れて、この周辺に結界を張ってもらった。元々この地は陰陽師にとって都合のいい立地だから、要所として結界を張る準備はしてあった。だから、迅速に対応してもらえたぞ。とりあえず、封印が解かれるのも少しは時間に余裕ができるはずだ。悪妖怪の侵入もある程度は防げると思うぞ。」


お父さん…ほんとにあなたは何者ですか!?


「そんなこといつの間にしていたの!?しかも要所って!?」

「未来が寝てる時にちょいとな。陰陽師にとって妖力の強い場所というのはいい拠点になるんだ。妖力を変換して陰陽師の力にすることも可能だからな。

日本には伊勢、屋久島、富士、恐山、秩父、出雲のようにパワースポットと呼ばれるところは大抵妖力が充満している。そんなところには妖怪も集まりやすいから、政府が監視をしているんだ。」


そうなんだ、お父さんのコネクションにビビってしまった。でも、そう言えば、政府とか病院とかと結託してるみたいな話をしてたっけ?!

つまりはお父さんはそんなビッグな人だったってこと!?


『それは助かるな。ただでさえ、影響力のある未来が近づくだけで妖怪が目覚めてしまうからな。これなら、目覚めを遅らせて未来の修行に当てられる。』

「そうだねー!悠長な事は言ってられないけど、少し安心感があるな!」


焦って事が進まないということもあるだろう。リラックスできる今は精一杯感覚を研ぎ澄ませよう。


「そう言えば、なんで力を混ぜるだけで力が使えるの?」


私は気になったことを聞いてみた。


「そうだなぁ。まずは混合するから力が出るっていうのが正確ではないな。確かに混合することで力が出るんだが、自分がどれだけその力を理解しているかが重要だな。あと、本来は混合じゃなくて、『る』と言う。

陰と陽とは、光と影のように片方があれば片方が必然的に存在する。そんな2つの正反対だけど必然的に存在するものだ。

その力の性質を理解することで、どのように練り合わせればどのような効果が得られるかというのを見出すんだ。

だが、自分の力は基本的には自分しかわからない。だから、自分と向き合ってその力の性質を理解していく事が大切なんだ。」

「ふーん。」


なんか、わかるようなわからないような感じであった。でも、今自分の中に感じている力はなんとなく理解してきていると思う。


「まあ、簡単にすると、


得たい効果を思考する

効果にあった力を練る

その効果の術式を構築する

札や式神符の様な媒体を通して効果を具現化

効果を発揮


って感じかな。

効果にあった力を練る。この工程が1番重要で難しいんだ。これさえできてしまえば、後は誰にでもできる事だ。あ、術式も難しいが、決まった方法があるから覚えちゃえばなんとかなるかな。」

「ほおー。なるほどねー!わかりやすい!」

「まあ、そのとっかかりとしては、この理論を聞いてさえいれば、表裏一体であるという事が深層心理に刻み込まれる。それで、今行っている反応が起きるんだ。」

「じゃあ、今、お父さんが力を循環してくれているけど、私が意識したら何か起こるの?」


お父さんは首を横に振った。


「今はお父さんが思った効果を出しているに過ぎない。そこに未来の意思が加わったところで何も変化は起きないな。お父さんがどういった意思で力を練っているかが分かれば話は別だけどな。」


なるほど、お父さんはほんとに難しいことをやっているみたいだ。


「流石にわからないかなー。でも、力の練り方?みたいのはなんとなく掴んだような気がするよ!?」


お父さんは驚いたようだった。


「はぁッッ?!まだ1時間くらいだろう!?そんなに早く掴んだのか?」


まあ、できそうなものはできそうなのだから仕方がない。少し練ってみよう。


「ん?ん…?あ、そうそう、これこれ!!」


少し手探り感はあるもののさっきまでやっていた力の循環をやってみた。


「…うん、確かに。ちゃんと力は練れているな。まあ、血筋的にも才能がないわけではないのだろうが、ここまでとはな…!本来ならこの方法でも1日3時間やったとして1ヶ月はかかるぞ!?」

「おう…!?私、なかなか才能ありじゃない!?」


素直に嬉しかった。

その時、空亡が大声で笑い話しかけてきた。


『はっはっは!!確かに未来は晴明の子孫だな!晴明もそんな風に難しいことをやってのけては、「俺ってやっぱり天才か…!?」とかほざいていたぞ!!才能だけでなく、性格まで似ているとはな!ますます楽しくなってきた!』


空亡はいつも以上に嬉しく楽しそうだった。やっぱりご先祖様といた日々が本当に楽しかったようで、私にご先祖様を被せているのだろう。少しでも、空亡の寂しさを紛らすことができるのなら願ってもない事だ。

お父さんも呆れたように、


「全く、未来は昔から変わらんな。まあ、その明るさに救われる人は多いと思う。そのままの未来でいてくれ。」


お母さんもお父さんに同意する。


「そうね。いつでもやんちゃだけど、その明るさは人を救うわ。きっと安倍晴明もそんな明るい人で、みんなに慕われていたんでしょうね。空亡さんを助けたいって思いで動けるところは道満の性格を受け継いだのかな。」

「そうだな。」


お父さんとお母さん、晴明と道満。

みんな尊敬すべき人であり、大切な人達。

私は私に生まれて来れたことを誇りに思う。

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