第十二話 〜陰陽師の基礎〜

陰陽道の修行のために整体院に戻ってきた一行だが、まずは陰陽の基礎から学ぶこととしたらしい。お父さんからのレクチャーが始まる。


「まず、陰陽道とはなにか。ということだが、陰陽五行説おんみょうごぎょうせつに基いで行われる呪術や占術等の技術のことを言う。

ここで大切になってくるのが陰陽五行説だ。これも2つの思想が合わさったものだ。

陰陽はあらゆるものはいんようにわけられるという思想。

五行説とはあらゆるものは火、水、木、金、土の元素からなるという思想だ。そして、全ては繋がっている。

これらの思想をもとに占いを行ったのが、始まりだ。

だが、特に陰陽の関係が根幹にあることを覚えておいてほしい。」


お父さんは陰陽師の思想について話をしたが、そういう思想があることはなんとなく理解した。

これを実際に感じる事ができるのかは正直なところ不安ではある。


「この基本さえ押さえておけば、後は応用だ。あらゆるものは陰と陽に分けられるといったが、未来の潜在的なその力もまた分けられる。この力の制御が最初の難関だろう。」


力の制御と言われてもなんのことやら!?


「力の制御ってどうやればいいの?」

「本来ならぜんや精神統一等のぎょうをつむことで、自分の中にある力と向き合い制御に至るのだが、時間が惜しいからな。少し強引に行くとしよう。」


強引とはどう言う事だろうか?


「未来、少しベッドにうつ伏せになってくれ。そして、深呼吸をして目を閉じて、リラックスした状態になってくれ。」

「うん。わかった。」


言われた通りに行動する。リラックスってとりあえず、だらんって感じでいいんだよね?


「背中に触れるぞ。」


お父さんの手が背中に触れて体の内側が少し熱くなってきた。


「今熱く感じているものが、力の本流だ。その流れを感じていろ。今から、陰と陽の力に分ける。」


体の内側を蠢うごめいている熱いものが、二手に分かれて、熱い力と冷たい力に分かれているのを感じる。


「あ、2つに分かれたのを感じたよ!」

「よし、2つをもう一度合わせるぞ?よく感じろ!」


2つの力が合わさると同時に脳裏に眩い光と共に力が漲るような感覚があった。


「ッッ!?あれ!?わけて合わせただけなのになんで!?なんで、後の方はこんなに効果的なの!?」

「それは、未来がこの陰と陽という思想を理解していたからだ。この思想を理解する事で絶大な効果がある。まあ、力の合わせ方にもコツがあるのだがな。

未来にはまず、この力の流れを何回も体験して、体と頭に覚えさせる。少し強引なやり方だけど、確実に時短になる。」

「へぇー!そうなんだ!助かる!」

『未来。結構軽く言ってはいるが、他人の力をこうも簡単に操作できるのはおそらく、有元殿だけだろう。とんでもない技量だぞ?』

「え!?そうなの!?お父さんそんなにすごい人だったの??」

「改良には制御能力が必須だからな。お父さんの得意分野だ。生まれた時から、力の流れが見えるんだ。どんな流れをしているか、どんな性質を持っているかが目に見えてわかるから、流れを変えてやればどういった効果が得られるかを研究して改良できるようになったんだ。」


お父さんは研究してといっているが、生半可な覚悟でできるわけないと思った。きっと、壁にぶつかったり、挫折を繰り返してここまできたのだろう。私には真似できないなと思いつつも、私もこれから立ち向かうであろう大きな壁を自覚した。


「お父さんがそんなに頑張ってきたのに、私は時間もない中やっていけるのかな…?」

「弱気になるな。お父さんは確かに挫折を何度も繰り返したが、基本的には自分1人だった。だが、未来にはお父さんにお母さん、空亡殿がついている。これはすごく大きい事だよ。きっと成し遂げられる。」


お父さんに言われて少し気持ちも楽になった。お母さんも、同じようなことを思っていたらしい。


「特に空亡さんがいるのは心強いわね。現代では妖怪を実際に使役いえきできる事は難しいからね。妖怪目線での意見を求められるのはすごいことよ!」

『そういう事だ。我もついている。安心して修行に励む事だな。晴明との連携も教えられるしな。』


みんなからそれぞれ励ましの言葉が発せられた。


「ありがとう、ありがとう!!辛いこともあるだろうけど、きっとやりきってみせる!」


私はみんなの期待と思いに応えたい!

そんな気持ちが込み上げてきた。


「さぁて!やる気も出てきたことだし、お父さんも張り切って力を循環させるぞ!しっかり感覚を掴めよ!」


お父さんが気合いを入れ直して、修行に取り掛かると宣言した。


「ばっちこーい!」


私も今は感覚を掴むことに専念しよう!


「じゃあ、空亡さんはこっちにきて回復しましょう。」


そういうと、お母さんは空亡の回復をかって出たのだ。お母さんは回復に精通しているらしいが、妖怪の回復もできるのようで驚いた。


『ありがとう。少しは回復したのだが、まだ万全ではなかったから助かる。』

「娘を助けてもらったみたいだし、これからも万全にしておかないと大変だろうしね!

そう言えば、次は何をしようと考えてるの?」

『また妖力の強い場所を探す。最初は陰陽師の子孫探しのために訪れたが、炎烏と会って妖怪の封印に綻びがある事がわかったからな。おそらくはそこでまた戦いになる事は必須だろう。

未来は大変かもしれんが、頑張って力をものにしてもらわねばならないな。』


これからのことを考えると少し気が重いけど、みんなの思いのために頑張ろう。

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