第十話 〜父の母〜

 陰陽師としての器を父に整えてもらって、今はリビングで少し休んでいる。お母さんとお父さんは空亡と談笑している。

 平安時代のご先祖様のこと、妖怪の事情を空亡は話したり、お父さんお母さんは現代について教えたりしている。

 空亡は現代の事情に興味津々のようだ。

私はと言うと、リビングにあるソファーで少し横になって、3人の話をBGMに休んでいる。

それと、整体についても興味があるようだ。

まず、整体の起源は2000年前の中国にあるようだ。整体と「気」というものは強く結びついているようで、陰陽道に通じるものがあるらしい。

 陰陽道も元は中国が起源となっている。父は、自前の改良技術を活かして、整体と陰陽道を融合させ、施術に使用しているようだった。

 整体とは基本的に骨格の歪みを改善し、体の調子を整えるのが目的である。骨格の歪みはさまざまな問題を生じさせる。それらを改善するために整体師が骨格の矯正を行い、体を整える。簡単にいうとストレッチの強化版みたいなものである。

 うちの整体でも、普通の客も来ているようで、ちゃんとした整体施術も行なっている。それに加えて、妖怪の影響があったなら、陰陽道を取り入れた施術を行うというのがいつもの流れらしい。


妖怪の存在は意外と知られており、政府はもちろん、病院等には知られている。しかし、世間には知らされていない。世間に周知したところで、混乱が起こることは間違いない。父はその手腕で政府から声をかけられて、現在は国家認定の整体院『妖傷ようしょう専門』として活動しているらしい。

妖傷ようしょうとは妖怪の影響で発症した傷や症状のことである。

一般医学において、説明できない症状や、原因不明の症状は大抵、妖傷だったりするらしい。


正直、話が大き過ぎて実感が湧かない。

お父さんの後を継ぐことになったらそれらは私が引き継ぐのだろうか!?

その辺は後で詳しく聞いておこう…。


聞こえる話に耳を傾けすぎて気になりすぎる!!

少し落ち着こう……

……



30分くらい眠っていたらしい。

私は時計を見て、ハッとした。


「あ、寝ちゃってた!?」

『大丈夫だ、気にすんな!まだ休んでいても問題ねーぞ!』

「そっか、ありがとう、でももう大丈夫そう…ッて!ええ!?空亡!?」


なんか聞き慣れた声で聞きなれないフレーズを聞いた気がする!?


『どうした!?空亡だぞ!?未来!?もしかして、頭イっちゃってる!?』

「いやいやいや、マネしちゃいけない芸人でしょ!?」


空亡は私が寝ている間に両親とテレビを見ていたらしい。そして、両親の助けとテレビの影響で現代の言葉を習得したらしい。だけど、それはまずい、某クズ芸人のネタだ!?


「ちょっとなんでこんなことになってるの!?」

「「すみませんでした。」」


両親が謝ってきた。どうも、どんどん現代の言葉を覚えていくから面白くて未来が起きた時にやってみたらと促していたらしい。

全くはた迷惑な……


「そっか、じゃあそれが一般的だと覚えたわけじゃないのね!?」

『ん?何か間違っていたのか?』

「「すみませんでした。」」


真面目に一般常識として教えていました。

すみません。


それから、小一時間かけて正しい現代語をレクチャーした。確かに吸収が早い!


『いや、悪かったな。意外と難しいな。現代の言葉は。』

「まあ、そうだよね!私からしたら昔の言葉の方が難しいけどね!』

『郷に入っては郷に従えというし、我が現代風に喋るしかないな。ん?自分の事を我とも言わないか。』

「まあ、その辺はなんとかなるでしょ!俺とかでもいいんじゃない!?」

『なるほど、だが、慣れている分、我で通させてもらおう。』

「いいんじゃないかな!?あ、そこで反省している2人はそろそろいいかな!?」

「「はい!!」」


実は私が空亡にレクチャーしている間、2人には反省の意を込めて正座で待たせていました。


『カタカナというのか、英語との合わせ文字のようなものの使い分けが難しいな。』


空亡はまだ現代語を考えている。

両親は反省したみたいなのでそろそろ許してあげようかな。


「そう言えば、お母さんも陰陽師と関係してるの??」


その言葉にお父さんが返答した。


「ああ、まだ話していなかったね。お母さんは回復系の術式を得意とする陰陽師なんだよ。この整体を続けていけるのもお母さんの力もあってなんだよね!」

「そうね。お父さんは回復系はあんまり得意じゃないからね。私が締めに回復かけるとかよくあることだね。」


お母さんがお父さんに続いて普段の仕事について話をした。


「そうだったんだ。やっぱり陰陽師と関係あったんだね。」


私もやっぱりと納得した。最初から話を理解しているようだったから何かしら関係はあると思っていた。

そこに母は続けて話した。


「お母さんの旧姓は『蘆屋あしや』っていうの。空亡さんは知っているでしょう?」

『ッッ!?はぁ!?それは真か!?あの「蘆屋あしや」か!?』


空亡が随分驚いたように問いかける。


「ええ、その『蘆屋あしや』よ。」


なにがなんだが全然わかりません!


「その『蘆屋あしや』がなんだっていうの??」


驚きの意味がわからない私は直接聞いてみなければということで、聞いてみた。


『安倍晴明の好敵手といえばわかるか?陰陽師として別格であった晴明と唯一肩を並べられた陰陽師が「蘆屋道満あしやどうまん」だ。未来の母君はその子孫というわけだな。』

「そう。だからお母さんも陰陽師の血が流れているし、陰陽師としての能力も持っているの。お父さんの手伝いもしているのはその為ね。」


お母さんも陰陽師という事を聞いてびっくりした。しかも、とても凄そうな人の子孫だったなんて…!

え!?じゃあ、私はそんなすごい2人の血筋を持ってるハイブリッドって事!?ヤバッッ!!

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