第九話 〜陰陽師としてのスタートライン〜

今日の出来事を羅列られつしてみよう。


一つ、延長寺で土蜘蛛と戦い

一つ、炎烏天の封印を解く

一つ、自分が安倍晴明の子孫であることが発覚

一つ、両親は陰陽師であったことが発覚


もう、怒涛の出来事で、休みなのに普通に仕事してるより疲れている気がする。

そして、これから陰陽道の教えをうことになっている。これが今日の出来事である。まだお昼ちょっと過ぎくらいだけど、濃密すぎる。

まあ、朝は早めに行動開始したから時間的には結構経ってるけど。

本当はこれから妖力の強い場所をさらに回るはずだったけど、空亡の一言で状況が変わった。


『今日は陰陽師の基礎を学んだ方がいいだろう。』


私は陰陽師としての知識は皆無であるが、これから封印だったり戦いだったりは、最低限の知識はあった方がいいとの事だ。

確かに、何も知らないよりは役に立てるんじゃないかと思うので、了承した。

とりあえずお腹が空いていたので、お昼ご飯をみんなで食べてからお父さんから修行をつけてもらうことになった。


…のだが…!


なんで私は整体院のベッドにうつ伏せになっているのでしょうか!?


「え!?お父さん!?なんで整体院!??」

「基礎を学ぶ前に未来の陰陽師としての体を整える必要があるからだ。なんでも、今日いきなり力を使ったんだろ?しかも、妖怪の力を借りて。」

「え、まあ、使ったんだろうけど、使ったと言う実感はないよ?」


力を使った時のことを思い出してみたが、あんまり実感はなかった。


「それは力のほとんどが妖怪のものだからだ。その妖怪が、未来の潜在的な力を少し引き出したに過ぎない。

しかも、陰陽師の力は目覚めるまで基本的に蓋がしてある状態だ。結構無理やりこじ開けたっぽいから、今は不安定な状態だ。」

「え!?そうなの!?無理やりって、今度なんか言ってやろう、あの烏頭。」

「まあ、安心しろ。今から行う施術で、力を正常な状態にする。そうすれば力を使えるようにはなるだろう。ただ、使い方がわからんことにはどうしようもないから、施術の後はしっかり教育してやろう。」

「はーい!じゃあ、よろしくお願いします!」


父は私の背中に何やら紙を置いたようだ。

父は何やら呪文のようなものを唱えたと思ったら、背中の紙の上に手を置き、

 

『この者の内に秘めたる我が祖先の魂よ、我が声に応えたまえ。陰陽五行の塞がれし扉を開き祝福をもたらさん。』

 

また、何かを唱えた。それと同時に背中が熱くなり体の芯まで熱さが伝わってくるようだった。


「おし、とりあえず、これで陰陽師としてのスタートラインには立ったことになる。少し体がほてってると思うが、すぐに良くなる。」

「うん、熱いね…。これが力が巡っているってことなのかな?」

「まあ、そうとも言えるな。陰陽の力は全身を血液の如く巡っていることになる。今まで巡っていなかった力が急に循環し始めたから最初は誰だってそうなる。だが、体が慣れてしまえばいどうってことないぞ。」

「そっか!じゃあ、これから勉強に移るんだね!?」

「そうだな。まあ、すぐにだときついだろうから1時間くらいは安静にしてろ。」


施術をすぐ近くで見ていた空亡が話をしてきた。


『ふむ、見事なものだな。なかなか繊細な術であった。晴明は全てにおいて大雑把で荒々しかったから、こんなに綺麗な術は見たことがないのう。』


父は嬉しそうに応えた。


「現代は雑で荒々しいものより、繊細で確かな安心感があるものが何より求められるものなので、人々を施術しながら色々と改良してきたのですよ。」


お父さん、なんかすごいこと言ってる気がする。


『ほう!術式などを変えることは難しいと聞いていたが、有元は優秀だのう!』

「自分の得意分野が改良だったのですよ。実戦向きじゃないので、平安時代だったら生き残れなかったでしょうな。」

『時代は移り変わるものだな。』

「そうですね。ですが、これからまた戦が始まると考えると、おちおちこんなことも言ってられませんね。場合によっては私も協力をさせていただきます。」


父はそう言って空亡と私の方を見て微笑んだ。


『確かにそれは助かるのう!未来だけで事を成すのは大変だろうからな。家族の協力が得られれば心強いのう!』

「そうだね!お父さんありがとう!正直不安もあるから心強いよ!」


実際に心強い。陰陽師のことを知っているのは両親くらいなものだからなー。

すると整体院と自宅をつなぐ扉をノックする音と共にガチャっと扉が開いた。


「無事に施術は終わったみたいね。とりあえず、リビングにお茶用意してるからそっちで休まない?」


そんな言葉と共に母が提案をしてきた。少し落ち着きたいのでその提案はグッジョブ!


「じゃあリビング行こうか!」


父も賛成のようだ。

私は空亡を抱えて階段を上がりリビングへ向かうこととした。


リビングには紅茶が用意されており、そのいい香りに、早く飲みたい気持ちが込み上げてきた。

おそらくお母さんも陰陽師に関係しているのだろうけど、どうなんだろうか。

なんにしても、これからは、隠し事なしで家族と接することができるのが嬉しくもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る