第六話 〜明かされる真実〜
程なくして元の静寂を取り戻したお寺の祠前に空亡、
土蜘蛛がいたあたりには焼けた煤の跡が少し残っているが、弱い風に流されて消えていった。
「あのー、いろいろ説明欲しいんだけど、いいかな??」
私は恐る恐る話を切り出した。
『すまぬな。怪我は大丈夫か?』
空亡が心配そうに気遣ってくれた。いつのまにかいつもの球体の姿に戻っていた。
「うん、転んだだけだからとりあえずは、大丈夫だよ。擦りむいたくらいかな。」
実際、肩から倒れたけど、服着てたからそんなに酷くなかった。
その後、続けるように炎烏天が説明を始めた。
炎烏天は
「うむ、先にも言ったが、我から話をしよう。まずは、我の封印を解いてくれたことに礼を言う。さて、我は
いやいや、待って!いろいろ気になる点が多い!
烏天狗!?
太陽の化身!?
共闘!?
「気になることがめっちゃあるんだけど、烏天狗って妖怪だよね!?」
「いかにも、妖怪だ。しかし、少し特殊なのだ。我はこの寺院が建てられる前からこの地の
土地神って妖怪でもなれるんだ…。
だけど、嬉しそうにお寺を見てるなー。思ったより綺麗に整備されていたのが嬉しいのかな??
まあ、祠の方は結構雑だったけど…!
「そうなんだ。つまり妖怪だけど神でもあるってこと?」
「そうだな。我は平安の世に起きた最大の戦に参加した。その際、先の土蜘蛛をこの祠に封じる為にここに縛られておったのだ。当時は各所で名のある妖怪達が暴れまわったため、封印という手を取るしかなかったのだ。」
「そうだったんだ。何百年もここで食い止めていたんだね。でも、なんで急に封印は解かれちゃったの?」
『そうじゃ!それは我も気になっておったぞ!なにが起こっておる!?』
空亡も不思議に思っていたらしく、便乗してきた。
「まだ気がついておらんのか?」
むしろ空亡の方がおかしいと言わんばかりに炎烏天は質問を返してきた。
「そこの娘の周りには妖怪を活性化させる力のようなものが溢れておる。」
「え!?」
急に私に振られて戸惑う。
『…う、うむ、確かに感じておったような、ないような…。』
空亡は自信なさげに声をすぼめた。
「相変わらずだのう。細かいことは気にせんのだな!ははは!!」
炎烏天は懐かしむように笑った。
『う、うるさい!して、それが原因と言うことか?』
「まあ、原因の1つというところかのう。他にも、我の力が弱まってきていたこと、逆に悪妖怪の力が強くなっていたこと、とかが考えられるかの。」
ほっ、と一安心。私だけの
『悪妖怪の力が増しているのは、おそらく、
空亡は今の状況をかいつまんで炎烏天に説明した。
…
……
「なるほど。そう言った経緯があるのか。お主がここにいる理由も理解できた。」
空亡は常世での計画、図録も持ち出し現世に来た理由、今は陰陽師の子孫探しをしていることを説明した。
「だったら、今の目的は達成できたのであろう。」
炎烏天が言った言葉の意味が理解できずにすぐさま質問した。
「え!?どう言うこと!?」
「ふむ、
炎烏天の言葉に安倍晴明という、有名な陰陽師の名前が出てきた。そんな偉大な人物と同じ力を持っているとは!?
「え!?そんな!?全然感じたことなかったけど!?」
そう、そんなことを言われても、私はそんな力を感じたことはない。というか意識したことがない。
「今の現世は大分平和そうだからのう。身をもって体感するのは難しいかも知れぬ。だが、そこらにいる霊達が見えるであろう?」
炎烏天は質問をしてきた。
「うん、まあ、それは昔から見えていたけど…。」
「それは、未来が霊達に影響を与えている証拠だ。しかも大抵は何かを訴えてきているはずだ。」
「まあ、言われてみれば、そうだけど。」
この間のパン屋の霊もパンが食べたいと教えてくれた。そんなことも力が影響しているの?
「基本的に霊は人間に干渉したりせぬ。特に見返りもないからのう。だが、未来は別だ。霊も活性化するとなると、現世のものの味を感じたり、匂いを嗅げたり、場合によっては触れることすらできる可能性がある。」
「ッッ!?」
そう言えば、今まで接してきた霊達は何かと干渉してきた気がする。
「そっか、この力があったから、私は今まで霊達と交流できていたんだ。で、でも!私は陰陽師の子孫なんて聞いたこともないよ!?親だって普通に整体やってるし、お母さんもただの主婦だよ!?」
「それはただ単に隠しているのか、言い伝えられていないかであろう。……未来、お主が安倍晴明の子孫であることは確かだ。」
「うわ、まじかー…!」
急に自分のご先祖様のことを暴露されて少し戸惑っている。正直ピンときてもいない。
そんななか空亡が言葉を発した。
『どこか懐かしくて、居心地の良いと思っておったが、そう言うことだったのか。』
今気づいたと言う感じにぼそっと空亡がこぼした。
「どういうこと?」
ちょっと気になったので聞いてみることにした。
空亡より先に炎烏天が私の問いに答えてくれた。
「平安の世で、陰陽頭の安倍晴明と行動を共にしておったのが、この空亡なのだ。」
「え!?そうだったの!?陰陽師と共に過ごしてたって言ってたけど、そんなすごい人だったんだ!?」
『そうだな、晴明は良い人間であった。様々なことを教わり、共に戦い、共に笑った仲だ。』
空亡は本当に懐かしそうに、でもどこか寂しげに話した。
「そっか。で!私がその子孫だとわかったわけだけど、これからどうする?」
『そうだな。…未来さえよければ、行動を共にし、我を助けて欲しいと考えておるのだが、どうだろうか?』
「そう言うと思った!いいよ!!こっちこそよろしくお願いします!」
『こちらこそ頼む。そう言えば、未来は晴明の子孫だというが、苗字を聞いていなかったな。』
「私は
『なるほど、
どうも関係ありそうだった。
「じゃあ、これからもよろしくね!」
『ああ、よろしく頼む。』
空亡からの信頼が増した気がした。
『我はこの寺院を拠点に現在の現世についての知識を蓄えようと思う。いつでも力を貸そう。何かあれば連絡してくれ。』
炎烏天は協力的だ。
とりあえず、一旦家に帰って少し休むとしようかな。
「とりあえず、一回家帰って消毒とかしてもいい??」
『そうだな。少々疲れたし、一度戻るとしよう。』
『では、またの機会にな。』
炎烏天との一時的な別れを済ませ、帰路に着くことにした。
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