第四話 〜陰陽師の子孫探し〜

「さあ、今日もやってまいりました!」

『いきなりなにを言っている…』

「いや、ちょっと気分的にさ!」


今日は仕事も休みなので昨日の話に出ていた、子孫探しを決行しようと思います。

とりあえず、陰陽師っぽいところを探してみればいいのかな?昨日はなにか手伝える事ないかと思って、咄嗟とっさに神社があるとか言っちゃったけど、陰陽師に関係あるのかな?


「けど、どうやって探せばいいのかな?空亡がここにきたのもなにかの目標があったからなんでしょ?」


私は憶測ではあるが、空亡がここにきた理由はそこにあるのではないかと思った。


『うむ、色々理由があるが、確かにこの辺りには特に妖力が充満しているのが目立ったからのう。なにかあるのかと期待を込めてこの辺りに来てみたのだ。まあ、昨日の奴らに追われたと言うのもあるがな。……まずはこの町の全体像を確認したいのだが、この辺りの地図があったりするかのう?』


「地図ね!うん、あるよ!今は文明の利器があるからスマホですぐ見られるよ!」


『ほお!これはまたすごいのう!ここまで進歩しておるのか。』

「でしょ!?とりあえず、この丸い印のところが今いる場所で私の家だね。」


スマホの画面内の地図を見ながら話を続ける。航空写真の地図にした時の空亡の反応を見てみたいと少し思ったが、我慢する。


『なるほど…実際に行ってみないことにはなんとも言えんが、この町にはいくつか妖力の強い場所があるのはわかっておる。そこになにかしらの手がかりがあるかもしれん。まずはそうだな…もうちょっと右にいってもらえるか?そこだ、その『延長寺えんちょうじ』という寺に行ってもらえるか?』

「ん、おっけー!」


とりあえず、最初の目的地を目指して出発。微妙に遠いので車で目的地へ向かうことにした。空亡は助手席に転がっている。その道すがら気になったことを聞いてみた。


「やっぱり神社とかお寺とかって陰陽師と関係してるの?」


『いや、厳密に言えば関係ないのう。陰陽師というのは、元々唐とうから伝わったものだ。今で言う中国だな。平安の世における国家組織のようなものであり、神道や仏教などの宗教とは別の括りであるな。しかし、陰陽道は呪術的な側面を持ったものであるが故に、神道や仏教に少なからず影響をもたらした。それゆえ、神や仏を祀った神社や寺院には陰陽師に通じる何かがある可能性が高いのだ。』


「なるほどー。でも、関係ない場合もあるんだよね?」


『無論だ。むしろ関係ないことの方が多い。しかし、妖力を必要とするのは陰陽師に通じるものがあるからだと考えられる。神を祀まつるのであれば神通力じんつうりき、仏であれば仏力ぶつりきなどが集まる。今目指している場所は寺院であるが妖力が溢れておる。そこには陰陽師の痕跡がある可能性が高いのだ。』


「なるほど。結構繋がっていたりするんだね。じゃあ早く行って調べてみないとね!」


------


車で10分くらいの位置にある寺院「延長寺」に到着した。このお寺は初めてきたけど、なかなか大きく厳かな感じだ。結構綺麗に整備されている。今日は平日であるためか、参拝者はおらず、自分達だけの貸切状態だ。


「着いたねー。大きいお寺だな!こんな感じだったの知らなかったなぁ!」


初めてきたけど、意外と気持ちがいいもんだなぁ。


『いや、観光で来た訳ではないのだぞ?』


少し観光気分の私に喝をいれた。


「まあまあ、いいじゃない!こんな機会でもないと巡り会えなかったかもだし!」

『ふむ、まあ良いか。……ッッ!!?境内右の方に妖力の濃い場所があるぞ!そちらに向かってはもらえぬか!?』

「ほいきた!いきましょー!」


本堂の右奥に祠のようなものがあるのが見えた。確かにその辺りは空間が歪んでいる様な、もやがかかった様な感じがある。あれが妖力というものなのかと納得した。私の目にも見えているということはそれだけ濃いのだろうと感じた。

私たちは祠の前に着いた。祠は石でできており、四角い石の中がくり抜かれている様な簡単な作りだった。中には楔の様なものが刺さっている。

祠の中、奥にはなにやら文字が彫られているが、建造から時間が経ちすぎてほとんど読み取れない。


『…そういう事か…。』

「え?!どういうことよ!?」


空亡は何やら1人で納得していた。


『ここには陰陽師による封印が施されておる。』


「え?!じゃあやっぱりここは陰陽師に縁がある場所なんだね!?意外と早く見つかってよかったじゃん!」


じゃあ、このお寺の人が陰陽師の子孫ってことになるのかな!?思ったより楽だったな!


『確かに陰陽師の痕跡は見つかったが、この祠がこの様な管理状態であるとするなら言い伝えられていない可能性の方が高いのう。』

「この祠ってそんなに格式高い感じなの?結構甘い作りだと思うけど?」


『見た目はな…。格式という訳ではないが、ここに封じられているものが強大なのだ。本来ならば、正式に祀られても良いような者だ。…簡単に言ってしまえば、神に準ずる者だ。』


「え!?神さま!?なんでこんなずさんな管理にされてるのかな!?」


『詳しくはわからぬが、いつの世か、言い伝えを途絶えさせた要因があるのだろう。一子相伝で伝える前に殉じたか、子が成せなかったか、誰かに殺められたか、特定はできぬがそんな感じであろう。』


「そっか…でも、封印はされているんだよね!?」

『そうだな。だが、これだけ妖力が漏れているということは封印に綻びが生じているやもしれん。』


「ええ!?じゃあどうしたらいいの!?」


『本来なら陰陽師に再封印を施してもらうべきだろうが、今はその陰陽師を探している最中だからな…。今のところは様子を見るしかないかも知れぬ。』


「そうか…。他の場所も当たってみてから考えるってことでいいのかな?」


『今はそうするしかないのう。』


今は出来ることがないか…。

何かできることは…って言ってもなにもないんだけど、結局はなかなかうまくはいかなかったな。でも、手掛かりだけでも見つかってよかったのかな!


「手掛かりは見つかってよかったね!じゃあ次の場所行ってみようか!


…ピシッッ



ーーーッッ!!?」


次の目的地に向かうために駐車場の方に歩き出そうとしたその時、何かがひび割れたような音がした。

音のした方向に目を向けると、祠の穴からモクモク妖力が溢れ出ていた。


「え!?なになになになに!?昨日から驚いてばっかなんだけど!?」


絶対なんか嫌なことが起こってる!?嫌だー!


『…まさか!?まだ余裕はあったと思うが、封印が解ける寸前だと!?』


これには空亡も驚いたようだった。

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