第三話 〜現世と常世〜
今日はすごいことが起きたなー。
仕事の最中ずっと今朝のことが頭から離れない。
常世の者とか言ってたけど、今思えば常世とこよってなんだ!?現世うつしよもなんだかよくわからないし、あの怪物達もよくわからないし、わからないことが多すぎる。
今日帰ったらひとまず事情説明を頼んでみようかな。今朝は忙しくてそんなに話聞けなかったし。そうしよう。
「おい、未来!!手が止まってるぞ!今忙しいからテキパキ動け〜!」
「あ!すみません!」
あー、注意されちゃった…。
切り替えて今は仕事に集中しよう!あー、でも気になることありすぎるー!!
――仕事終わり――
「お疲れ様でしたー!今日も余ったパン買って行っていいですか!?」
「おつかれー。いいぞー!あ、これも持っていけ!今週親いないんだろ。弁当作っておいたから、晩飯にでもしな!」
「ありがとうございます!助かります!一応、パンも買って行きます!」
社長の奥さんはいつも店の手伝いをしている。私の親が出かけているとわかるとお弁当を差し入れしてくれたりする。帰ってから料理するのも面倒だし、すごい助かったりする。
一応、パンも買って帰ろう。空亡が食べるかわからないけど。
「じゃあ、お先に失礼しまーす!」
「おう、気をつけてなー。」
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職場のパン屋から自宅までは自転車で10分くらいの距離にある。自動車も持ってはいるが、職場への通勤は自転車で行くことにしている。
車だと通れない近道もあるので便利なのだ。
「ただいまー。っと言っても誰もいないんだけどー。」
『おお、戻ったか。』
「うわッ!?」
心臓飛び出るかと思った。普通に部屋にいるのかと思ってたけど、まさか、球体のまま浮遊して出迎えてくれるとは思ってもみなかった。
「え、それ飛べるんだ!?」
『まあのう、これくらいは造作もないわ。』
「そうなんだ、まあ、いいか!今日はどう過ごしてたの!?」
『結構軽いのう。今日は随分と休ませてもらったぞ。助かった。半分くらいは回復したと思うぞ。』
「そっか!ならよかったよ!空亡はご飯とか食べるの?一応パン買ってきたんだけど。」
今日仕事終わりに買ってきたパンを見せて確認してみた。
『いや、そう言った人間で言うところの食事は必要とせんのだ。心遣い感謝する。ここらに充満している
妖力か。妖怪とかは見えるけど、そう言った力は感じたことないな。
「なるほどね。まあ、詳しくは全然わからないけど、なんとなくわかったことにしておく!じゃあパンは朝ご飯にしちゃおー!
……ん?あ、いやいや、流しちゃダメだよね!?
自分は感じたこともないし聞いたこともない言葉に疑問を抱いた。
『人間には馴染みのない言葉だろうな。まず、言っておかねばならぬのが、我らは人間達に妖怪と呼ばれる存在だ…。』
空亡は自分のことについて話し始めた。だけど、今は私も仕事から帰ってきたところだ、色々すませたい。
「あ、長くなる?お風呂入ってご飯を食べながらとかでもいい?」
と言って、ちょっと話を先延ばしにしてもらう。
『ん、うむ、構わんぞ。待っておる。』
「じゃあ準備整うまでテレビでも見てて!」
リビングのテレビをつけて、自分はお風呂に入る準備をして、お風呂へ。
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「っはー!スッキリしたー!気持ちよかったー!」
お風呂からあがった私は早速話を聞くべく、リビングに行き、お弁当を用意した。そこにいた空亡はテレビに釘付けであった。
『ほー…なんと…まことか!?』
空亡はブツブツ言いながらテレビの前をふよふよしている。
「なに?どうしたの!?テレビ珍しかった?」
空亡はテレビを知らなそうだ。結構昔からいる妖怪なんだろうか。喋り方もじじくさいしな。
『そうだな。この薄っぺらい箱だが、ここまでじっくり見たことがなくてな。文明の進化とは驚くべきものだな。』
物珍しそうにふよふよ動く
「あはは!そういうものか!?まあ、すごいよねー。原理とか全然わからないし。」
『ふむ、貴重な経験をありがとう。』
「いいよ、またじっくり見なよ。」
『かたじけない。では、早速話を始めるとするかのう。』
こうして、これから色々説明を受けることにした…。
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『まず、先にも言ったが、我々は人間達から妖怪と呼ばれる存在だ。
我々は妖力が凝集し、意思を持った存在だ。
妖力とは人間の感情などから生まれる力であり、元々妖怪とは人間の感情などから生まれたと言っていい。
現世で言う、平安時代、
「あ、気になってたんだけど、その現世と常世ってなんなの?」
『ああ、簡単に言えば、現世とは今この現実の世界、常世は我々妖怪や死者が集い彷徨っている場所だな。常世は現世と違って実体を持たないのが特徴だ。
だが、妖怪の中に実体を持つことを
空亡の声色は神妙なモノになった。
「実体を持つことは別に悪いことじゃないんじゃない?」
『ふむ、ただ実体を持てるだけなら確かにそこまで問題はないかもしれんが、その実体の持ち方に問題がある。』
「と言うと?」
『…人間の体を乗っ取ろうとしておるのだ。』
「ッッ!」
『常世の存在を人間の魂と置き換えることで実体を得ようとしておる。』
「え!?で、でも、なんで実体を得たいの!?それに人間じゃなくてもいいんじゃない?」
そうだよ!!人間の実体を得たいってよほどのことだよな。
『元々は人間の感情から生まれたと言ったが、元々が人間の感情だけあって人間との相性がいいのだ。乗っ取った時の適合率が跳ね上がる。
それに、妖力が人間界には充満している。それは人間がいる事で絶え間なく様々な感情が発生しているからである。』
「じゃあ人間を全て常世の者達と入れ替えちゃったら妖力は無くなってくるんじゃ…!?」
『そこも考えておったが、何割かの人間は感情を発生させる装置のような役割を担わせる為に、捉えて監禁しておくらしいのだ。』
「…そんな…!?」
『…我はそんな事はさせまいと、今朝の狐達と戦っていたというわけじゃな。』
「空亡はその思想には反対って言うのはわかったけど、反対派閥みたいなのって多いの?」
『いや、そこまで多くはないのう。だが、まだ計画が
「たまたま計画聞いちゃって逃げてきたって感じ?」
『……まあ、そんなところかのう。ただ、逃げてきたという訳でもないがな。』
「それはどういうこと??」
『この計画の賛成者を革新派としよう。革新派は数こそ多いが、主力の妖怪を封じることができれば、それ以外に我の話を聞かせる事は可能なのだ。そこで、主力の妖怪を封じようと考えた。』
「主力の妖怪か…」
『此奴はとにかく強力でな。消滅させるのでも良いのだが、封じる手も残しておきたくてな。』
なんか、すごいとんでもない話になってるけど、私でもなにか手伝えることとかあるのかな。
『今の常世は此奴ら革新派がまとめていると言っても過言ではない。そんな奴らでも、どうにもできずに保管されている図録がある。』
図録…?
『その図録には、見開きに一体ずつ妖怪が記録されている。左の
弱点の妖怪か。
『相対する妖怪に対応する妖怪を呼び出し、うまく封じることが出来れば、右の頁に封印された妖怪が記録される。』
「なるほど、そんな便利な道具があるんだねー。じゃあ、言っちゃ悪いけどめちゃめちゃ楽じゃない!?」
『それが、そうとも言えんのだ。この図録は平安時代に陰陽師なる者が作成した図録であり、妖怪である我には使用ができないのだ。作成した陰陽師の子孫であれば使用できるのではと思って探しているところなのだ。』
「そっかー、その子孫も大変だろうけど、人間界の未来のために頑張ってもらいたいねー!早く見つかるといいね!」
見つけるのは大変だろうけど、何かあてとかあるのかな?
『で、あるな。』
「私にもなにか手伝えることとかあればいいんだけどな。」
簡単に首を突っ込んでいいものかわからないけど、心配は心配だしな。
『いや、ここまでよくしてもらったのだ。休養だけさせて貰えればとても助かる。』
「そっかー、その子孫探しだけど、近場に神社とかあるし、色々探すの手伝ってあげようか!?」
『ふむ、確かにそれはありがたいが、我といると危険も伴うぞ?』
「だーいじょうぶ!こう見えても意外と運動神経いいからねー!それに何かあってもとりあえずは守ってくれるんでしょ?」
『そうだな、そこまで弱くはないからな。子孫探しを手伝ってもらうか。よろしく頼む。』
「いいってことよ!困った時はお互い様!明日は仕事休みだから、早速昼間に色々出掛けてみようか!?」
『そうだな。』
色々事情は把握したけど、人類の危機みたいだし自分にも何か出来ればいいな!人に頼めるような事でもないし、一肌脱ぎましょう!!
気合い入れていくぞー!!
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