発散

 マラソン大会に出ると、タイムを縮めるために極限まで自分を追い込むことになる。ゴールの直前、何キロも走ってきて、残り300メートルでダッシュすると完全に体力の残量がゼロの状態でゴールできる。その後しばらく動けなくなるけれど。限界に挑むのはきついが一方では快感でもある。俺はドMなのかもしれない。

 しかし極限状態を経験した後、どこか爽快感を感じることがある。身体を限界まで動かすことで、自分の中に溜まった毒が抜けるというか、ストレスが発散できている気がする。こういったところで毒を逃してやらないと、いつか本当に人を傷つけてしまうかもしれない。むしゃくしゃした気持ちは自分を痛めつけて解消する。健全な自傷行為みたいだ。


 半年に一度くらいのペースで会って、毎回中華料理を食べに行く友達がいる。割と近い業界で働いているので、共通の話題がいくつもある。お互いに近況を報告しながら、街の中華屋で暴力的な量の中華を食べる。限界まで食べまくって、満腹になったらサッと解散する。そして半年ほどして思い立ったらまた街中華に誘う。これくらいの距離感の友達はありがたい。そして中華料理を腹に詰め込むことだけで得られる快感がある。欲望のままに暴食することで満たされる何か。焼肉でもラーメンでもいいのかもしれないが、やっぱり街中華がいい。

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