もし東京で暮らしていたら
地方に住んでいる。街は綺麗だが観光地は特にない、合併により人口だけは多いが、徐々に衰退している感じがわかる地方都市。大学進学や就職のタイミングで首都圏に出ることも考えた。しかし都合がつかずに断念して、今に至る。おそらく、余程のことがない限りこの先もこの街で暮らすのだろう。
大学2年の春休み、東京に一週間ほど滞在したことがある。友達の家(笹塚だった)に2泊して、あとはカプセルホテルに泊まった。何人かの友達と会う以外は特に予定も無かったので、あてもなく気ままに街をぶらついた。美術館や博物館に行ったり、行ってみたかった街の駅前を歩いたり。いま思うと何故そんなことをしたのか。よっぽど暇だったのと、目的のない適当な滞在旅行なんて学生のうちしかできない、という考えがあったからだろう。この時「自分は東京では暮らせないな」と強く思った。寂しすぎる。雑踏を歩いているとたくさんの人とすれ違う。団地やアパートには無数の明かりが灯っていて、たくさんの人が暮らしている。その全員が自分と一切関わることがない。それは地方でも同じなのだけれど、人の密度が薄い分、濃い繋がりがある気がする。いつもの居酒屋や銭湯に行くと、なんとなくの顔馴染みの人がいる。友人が多く住んでいて、誘えば割といつでも会える。それくらいの距離感の方が、自分には心地良い。人が多すぎる街にいるとむしろ孤独を感じることがあって、その虚しさが自分にはいつか耐えられなくなりそうだった。
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