時間に追われない生活

 昔からずっと、時間に追われる生活を送ってきた。中学〜高校時代は部活を中心に生活が回っていたため、平日も土日も部活に遅れないように、練習の1時間前くらいには飯を食べ終えて体育館に向かうように……と常に時間を気にしていた。先輩や顧問に何か言われるのが怖かったのと、優等生のレッテルを貼られ、それに応えなければならない変な自意識に囚われていた。朝、学校は自転車で通学していたが、高校まではそこそこの距離があったので赤信号になるべくかからないルートを常に計算しながら走っていた。時間ギリギリになるとよく民家の敷地やガソリンスタンドの中を突っ切り、ショートカットして校門に突入していた。絶対に遅刻をしたくない、という意地があったからだ。迷惑極まりない。

 大学生になると、急に親や学校や部活から解放されて、かなりだらけてしまった。講義に遅れようが、自分しか困らないし誰からも説教されない。タガが外れるまではいかなかったが、本来の適当な性格が全面に出てしまい、1年生の頃は完全なダメ学生に成り下がっていたと思う。それでもバイトを始めた影響などもあり、やたら早めの行動をする高校時代のような自分に戻った。時間に遅れることに過剰に恐れるのは「人に迷惑をかけたくない、自分ごときが他人の時間を奪ってはいけない」という強迫観念が部活で刷り込まれてしまったせいだと思う。時間を守ること以外の規則は別にどうでもいいと思っているのに。社会人になってからも、約束の時間を絶対に守る、という点だけはやたら意識して生きてきた。

 現在、自分の住んでいる部屋には時計を置いていない。これは、ずっと時計ばかり見る生活だったので、それから開放されてみたいという意識が働いている気がする。時間を気にしすぎるせかせかした人間から脱却したい。待ち合わせがある時は、家を出る時間の10分前にスマホのアラームをセットしておく。身支度をして、ちょうど良い時間になる。何の予定もない日は、一切時計を見ることなく映画か読書かゲームに没頭している。幸せな時間だ。

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