　映画『ロスト・イン・トランスレーション』が好きで、年に一度くらい見返している。特に劇的なストーリーがあるわけではない、割と雰囲気映画なんだけれど、映像と音楽がとにかく美しい。ジザメリの『Just Like Honey』が流れるラストシーンは何度見ても感動する。車窓越しに映される二〇〇〇年代初頭の東京の街はどこまでもロマンチックで、切ないけどどこか爽やかだ。この映画はあいみょんとかガリレオガリレイのミュージックビデオでオマージュされている。個人的に特に好きな台詞があって、劇中で主演の二人がベッドに横になって語りあうシーンだ。ヒロイン役のスカーレット・ヨハンソンが、主人公役（ビル・マーレイ）に「夫と結婚したけれど今の人生が退屈だ。文章を書いたりしているけれど特にどうにもならない」といった趣旨の悩みを相談し、主人公は「書き続けることだ」と励ます。「keep running」という一言で。いい響きだ。誰だって人生に悩んでいるけれど、何かを手に入れようとしたらそれをやり続けなければならない。自分は時々映像を撮るが、きっと一番影響を受けたのはこの映画なんだろうなと思う。