薄霧の中の幻影
紫鳥コウ
薄霧の中の幻影
廊下は玄関へと延びている。床の木目に冷気が充満しており、足の裏がそこに触れると爪の先まで鋭い痛みが走る。玄関横に
中庭の一本杉には相変わらず、鎖に繋がれた裸の西紀がいる。が、よく見てみると、その
この奇妙な幻覚に釘付けになっていた西紀だったが、その男がこちらを
紺の水干を着た男は、鎖に繋がれた裸体の西紀に向けていた両手を天へと掲げた。すると燐光は薄霧を瞬く間に輝かせて、その光は西紀をも包み込んだ。神々しい光の中、女性の声が渦巻くように響いてきた。
《
そこへ
《
縁側に姿を見せた
「天地開闢以来の聖人皆悉く、淫奔なる我を笑殺できぬ。誨淫の書を湮滅する事躊躇わぬ君主と雖も、我が濫淫を止めること能わず」
西紀はずるずると何者かの手によって引きずられていき、一本杉の幹にくくりつけられた。それを見届けた六花は、玄関の方へと引き返していく。
そこへ用を足しにいこうと西紀が縁側にでてきた。そして縄でくくられた自分の姿を見て、この頃の疲れの原因はなんであるのかを考えた。いつの間にか、冷たい薄霧があたり一面に敷かれている。
薄霧の中の幻影 紫鳥コウ @Smilitary
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