好きなのかまだ分からない彼女の話
彼と付き合い始め幾許か月日流れて早半月。言うほど経ってもない気がするが、言われるまで気づかなかったであろうこの体感速度の不調に、私自身何も気付けてはいない。よく分からないのだ、勢いで告白したものの本当に彼が好きなのか、自問自答しても返事は返ってこないしただあるのは付き合ってしまっていたと言う事実だけ、それ以外何もないのだから困ったものだわと俯瞰して眺めている。そこまで達観視するほど人生経験積んだ訳ではないのに、どうしてこんなにも冷めてしまっていたのだろうかと、後悔するばかりで仕方がない。現在進行系のやり場のない感情にもはやついていけてない、私が日に日に遠くなる。好きだから告白したのに、成就すれば用無しの恋心を追いかけていて、逃げられて、捕まえられず離されて。だから見送ることにした、この真っ直ぐした気持ちだけは遠い僻地に隠れたものだから、ここにあるのはその抜け殻、好きだったであろう私が、今彼から数学を教わっている最中である。好きか嫌いかで言うと好きだったというのだが、かと言って嫌いになった訳ではなく、好きだという自信がないものだから敢えて過去形になっている、取り敢えずこの関係に収まっているのだが崩れそうで仕方がない。自信が無いのかもしれない、彼を好きでいるということに。嫌いになった訳でなく、ただ好きでなくなった訳でもなくて、あの頃に抱いていた恋心が消えてしまって、今度は彼に嫌われてはいけないと言うプレッシャーが出現し、私を混乱に導いている。今がとっても居心地が良いはずなのにその享受なく、あるのは完成してしまったパズルが崩れるのを待っている、ただそれを見ている事しかできない、哀れな彼女の姿であった。
「なに、何か考え事?」
ペンが止まっている私を彼が心配そうに見つめていて「あ、いや、なんでもないです、よ」誤魔化すにも危うい返事で、私の情けなさにため息が出ている。緊張しているのか、他人のから一気に詰め寄ったので、見た目ではカップルだが蓋を開けるとまだまだ友達未満なのだ。
「今日はありがとう。お礼を言いたくて、わざわざ来てもらって」と思いつくワードを並べては、胸の高鳴りがやまなくて勉強どころではない現状が不思議でたまらない。なぜ彼は今、私の部屋で数学を教えてくれるのだろう。付き合っているから? 私が告白をしたから? そうじゃないと思う。付き合ってても勉強を教えない彼氏もいるだろうし、付き合ってなくても分からない所を教えてくれる関係だってあるだろうし。私が思う結論としては彼が優しいから、かな。そんな彼氏を好きになったのに、好きだったなんて過去にしてしまって申し訳ない、申し訳ないんだけど、今は好きじゃないのかもしれない。
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