第3話 地下牢

 今日もメイドの朝は早い。季節問わず、いつだって年中早いのだ。


「おはようございます旦那様。起床の時間でございます」

「う、ううん……」


 主人を起こす当番のメイドは不憫でならない。しかもこの日は機嫌が悪いと言うことだ。しかもこの役目は新人ベテラン関係なく、全員の日替わりで行われている。この役目をやりたがるメイドもいないため、このような形を取らざるを得ないのだ。


「旦那様、朝でございます」

「わかった、今起きる」


 私たちの主人は朝に弱い。夜はかなりの頻度でパーティなどをしており夜も遅く寝るため、必然でもある。しかし、それゆえにメイドにその朝目覚めの悪さゆえに生じる苛つきがやってくるのだら。たまったものではないが、人権などない虫ケラ以下のメイドである私たちにはどうすることもできない。


「お願いします。起きてください」


 何度呼びかけても起きないことがたまにあるが、まさかこれが私の当番の日に来るなんて。メイド長に叱られてしまう。


「うるさい」


 どうやらやっと主人が起き上がってきた。しかし機嫌は最悪のようだ。


「申し訳ございません。ですが、朝、この時間に起こせと言うのも旦那様の命でございます!」


 少し大きな声を出してしまった。恐る恐る下げた頭を挙げると、とんでもなく不愉快な顔をした主人の顔があった。これは私は終わったかもしれない。


「いい度胸だな」

「申し訳ございません!」

「その浅はかな態度を反省するといい。おい、メイド長はいるか!」


 主人はメイド長を呼んだ。私はしばらくダメかもしれない。


「お呼びでしょうか旦那様」


 メイド長はすぐにきた。


「このメイドは私に対しての態度がなっていなかった。よって今日1日は地下牢に閉じ込めておけ」

「承知しました」


 地下牢送りならまだマシな方かもしれない。


「器具などはお使いになられますか?」

「お前に任せる。しかし、私の気分を悪くしたということは言っておこう」

「厳粛に処罰いたします。いきますよ」


 メイド長は私を半ば引っ張って地下牢に連れていく。私はそれに従うしかない。従わなかったらもっと酷いことになるのだから。メイド長もそれをわかっているからさっさと来いという目をしているのだろう。


「さて、ここが地下牢ですが、地下牢程度で済んでよかったですね。もっと酷いことになる場合もありますから今日は旦那様の機嫌は比較的良い方だったのでしょう。不幸中の幸いです」


 メイド長の言っていることもわかるがこれから酷い目に遭うのは私なのだ。


「では服を全て脱ぎなさい。そのあとで拘束します」

「はい……」


 この屋敷で懲罰を受けるときは全裸であることが多い。今回もその例にもれずということのようだ。服を脱ぐとさっと拘束された。地下牢の鍵が開けられ重厚な扉が開くと、その中は一寸の光も届かない真っ暗な空間だった。メイド長はあかりを持ち込むと私をその中に入れ、動きを制限するように、床の器具に私の鎖を固定した。


「こちらの飲み物をどうぞ」

「これは?」

「ただの飲み物です。いいから飲みなさい」


 絶対にただの飲み物であるはずもないが、飲まないわけにもいかないので飲んで杯をメイド長に返した。


「では管を入れていきます」


 そういうと、日本の管を私の前と後ろに差し込んだ。体の中に変なものが挿入された違和感があるがそこまで手が届かないように拘束されているのでどうすることもできない。


「排泄物は今の管を通してされますので安心してください。では、明日の朝、またきます。しっかりとあたまをひやしてください」


 環境もいいとは言えず、真っ暗でこともない空間で時間などわからない。しかも、動きは制限され、体を大きく動かすこともできない。


「暗いし寒い」


 私の1日は最悪の始まりを迎えた。

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