ひと息 その2
意気投合した
灯夏ちゃんはとにかくしゃべる。
口から生まれたのではないかと思うくらいに。
内容は薄っぺらな話から、本当に面白い話までバリエーションは豊富。
営業が出来そうなくらいに、よくしゃべっていた。
聞くだけでなんだか私は楽しくなっていた。
隣に座る想良も微笑んでいる。珍しい。
「てか、ユッキー!」
「ん?!」
ストローでカフェオレを飲んでいたから、変な所に入りそうになる。
危うく咽るとこだった。
一呼吸置いてから「何かな?」と反応した。
「もしかして、間違っていたらごめんだけどさ」
これはもしや…。
なんとなく彼女の言いたいことは予想はついた。
「ちゅう君のこと好きなの?」
やっぱり、当たった。
バレバレだよね。顔に出ちゃうんだから。
それでも良いと思って全面に出している私。
周りなんか気にする必要はない。
そう想良が言っていた。だから堂々としている。
「そうだよ」
「そっかそっかー!」
灯夏ちゃんはニコニコしている。
「最近のちゅう君、雰囲気変わったなーと思っていたんだよ」
「えっ?」
灯夏ちゃんは微笑みながら私を見る。
「きっとユッキーのせいだよ」
「わ、私!?」
知らない。
だって彼は拒否している感じしか…。
「確かに」
「想良?」
急に想良が言ったから驚いた。
少し考えながら想良は「灯夏の言う通り」と呟いた。
2人は理解していて、私は置いてけぼり。
「えっ?何で?」
不安な気持ちになる。
私のせいって良い方?悪い方?どっち?
灯夏ちゃんと想良の顔を交互に見る。
「教えてよ!2人共!」
2人はクスクス笑い「はいはい」と嗜めるように私の頭を撫でてきた想良。
灯夏ちゃんも「言うから焦んない焦んない」と焦らす。
2人共、意地悪。
※
宙弥君が変わったのは私のせい。
なんでかな。私は何もしていない。
一方的に好意を寄せて押しているだけだ。
彼はそれを分かっているのは、なんとなく分かる。
だから、応えてくれないもどかしさは拭えない。
「どうして私のせいなの?」
すると灯夏ちゃんが最初に口を開いた。
「連絡取り合ってんでしょ?」
「うん、土日だけ」
「2人きりで過ごしたことは?」
「体育祭の時にお昼休みを一緒に」
「なるほどなるほど」
ふむふむと頷く灯夏ちゃん。
とても気になる。でも急かさず待つ。
灯夏ちゃんは私を見た。
じっと、目を。見透かされそう。怖い。
頑張って見つめ返した。
「会話があるってことは、多少の好意はあるっしょ!」
えっ…?
それはない。
素っ気ないし、どこか冷めている感じがあるし…。
でも…あたたかい時があるからなぁ…。
本当の気持ちさえ分かれば苦労はしない。
「話さなくなったら終わりだよ」
話さなくなったら終わり…
灯夏ちゃんは何気ないように、当たり前のことを言ったような顔で言った。
呑気にショートケーキを食べている。
ちょっとイラッときたが、図星に思えてきて、グサリと心に突き刺さった。
奥に深く、鋭く尖った先が沈むように。
一生抜けそうにはないな。
「あとさ、ちゅう君早退したじゃん」
思い出したように灯夏ちゃんは言って、話の続きを進める。
「あれはきっと引っ掛かったんだよ、役柄に!」
「えっ?」
「なるほど」
隣に座る想良は納得している。
「想良まで?」
「だってそうじゃん」
黙って聞いていた彼女は諭すように語りだす。
「あいつ、苦虫を噛み潰したような苦しい表情してたじゃん」
苦しい…表情…。
知らない。見てない。気付かなかった。
「横やりしては語弊あるけど、王子役を
ポツリと想良は言った。
ブラックのコーヒーを美味しく飲んでいる。
「立間って誰?」
「知らんのかい」
人気者の立間君を知らない灯夏ちゃん。
タイミング良くツッコみした想良。
「これは面白くなる予感だね」
「確かに、かもな」
「えっえっ?」
2人して笑っている。
また置いてけぼり。
「ゆき、ブレんなよ」
「想良?」
「ユッキー、貫くんだよ」
「灯夏ちゃん?」
優しく微笑む2人を交互に見て、私は理解に苦しみ首を傾げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます