第24話 知らない気持ち
学級会が終わってからも、ずっとモヤモヤしていた。
機嫌が悪いのかと
こんな気持ち、経験はない。
授業に集中出来ないくらいに、心の中で蜷局を巻くように大きな渦が出来ていた。
「おい、顔色悪そうだぞ?」
休み時間に竜二は俺にそう言った。
「いや、別に大したことは…」
「行くぞ」
「は?」
無理矢理、竜二は俺の腕を掴んでどこかへ連れて行った。
※
「熱があるねー」
「マジかよ」
連れて行かれた場所は保健室。
目の前には珍しいかな、男性の養護教諭である。
名前は
「ここで休んで良いけど、帰ることもオススメだね」
柔らかい口調でニコニコしている相楽先生。
高身長でスラっとしていて甘いマスクだから、女子生徒に人気。
「文化祭近いからね、大事を取るって意味で帰宅するのもあり」
なるほど。
テストは大丈夫だったし、欠席はあの風邪引いた時だけだし、休んでも傷つかないか。
「帰ります」
「分かった、担任に伝えてから帰ってね」
「はい」
竜二は“『帰んのかよ、午後体育でペアになるやつだったのに』”とふてくされた声だった。
すまんな、体調を考慮しての判断だからな。
それにモヤモヤしているから、今日は学校には居たくない。
「「失礼しました」」
「お大事にー」
相楽先生は笑顔で手を振った。
心の中はというと。
“『何かあったはず、ストレスかもな』”
この養護教諭、鋭いと思いビビる。
そんなことは露知らずの竜二は気楽で良いなと羨ましくなった。
※
帰宅すると
そりゃそうだ、まだ学校だよな。
俺はもう一度体温計で体温を計った。
ピロピロ。最近の体温計は早く分かるから便利だ。
「平熱かよ」
学校から離れて少し気楽になったからだろう。
ストレスか。参ったな。
ベッドに仰向けで寝る。
何故あんな気持ちになったんだ。
良いじゃないか。王子役が
ああいう役はモテ男がやるものだ。
彼女をイヤイヤしているのに、ちょっと待て何でだよなんて…。
有り得ない。
自分の我が儘に対して情けなくなる。
「くそ…」
仰向けに寝ていたが、うつ伏せに体勢を直し、どうしようもない怒りを、拳に託して枕にぶつけた。
※
「あれ?」
「どした?」
いない…、
どうしたんだろう。
私は直ぐに
隣にはこの前いた金髪の女の子がいた。
確かこの子はハーフだった気がする。
とても可愛いから羨ましい。
「茅野君」
「あっ、雨宮」
「ほよ?」
茅野君は驚いた顔をしていて、隣の女の子はキョトンとしていた。
「篠宮君いないけど」
「それがさー」
彼は熱を出して帰ったと茅野君は話した。
心配だな。大丈夫かな。
あとで宙未ちゃんに聞いてみよう。
「なになに?ちゅう君早退したの?」
“ちゅう君”…?
何だ、その親しみを感じる呼び方は。
モヤッ…。頑張れ私、抑えて抑えて。
宙未ちゃんの時みたいなパターンかもしれないから。
落ち着こう落ち着こう、おまじないを唱えるように心の中で自分に言い聞かせる。
「
「えーウケる!」
ケラケラ笑った女の子。
なんだか品を感じるのは何故だろう。
「ねえねえ?名前は?」
「えっ」
女の子は私に話しかけてきた。
キラキラしたその目は澄んでいる。
とても綺麗な青の瞳。吸い込まれそう。
「私は
「あっ、えと」
言葉に詰まる。グイグイ系なんだと理解。
「私は、雨宮…優希子、です」
「ほほーん、ユッキーね!」
あら?
トントン拍子で友達確定判子を捺されたような気がする。
「ごめんな、俺の彼女が」
茅野君は申し訳ないという表情だったが、それはさておき、違うことで驚く。
「か、彼女?」
茅野君は満面の笑顔で「そうなんだよ!」と言った。
「竜二は私と付き合ってるの!」
2人は目を合わせて「「ねー!!」」と言った。
良かった…また勘違いするとこだった。
「ユッキー、もっと話そう!」
「ゆき」
想良がやって来た。
「ユッキーの親友?」
「うん」
すると本田さんは想良の方へ。
そして想良の手を握りこう言った。
「初めまして!本田マリアーノ灯夏!よろしく!」
「は?」
想良の目が点になっていた。
しばらく話していくと、自然と打ち解けていった。
「俺、ないがしろ」
「ごめん竜二ー」
「ごめんなさい茅野君」
「悪かった」
友達が1人増えて嬉しい反面、宙弥君の事が心配な気持ちは消えることはなかった。
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