第21話 休み前の恐怖

 学校の雰囲気はピリついていた。

 緊張感が漂っていると言った方がいいのかな。

 イベント前と長期休み前の恐怖アレがやってくる。

 今はその対策をしている。


「わっかんねーよー!」

「叫ぶな」


 竜二りゅうじの絶叫を注意しながら、彼が充実した休みを迎えられるよう、教えている。


 だ。


 教室には何人か残って勉強しているし、図書室に行けばもっといる。

 塾に通っている人達はそちらに。

 もちろん学校が終わればさっさと帰宅して勉強する人もいる。

 俺は家で1人で勉強したい派だが、竜二は毎度のことながら赤点すれすれだから、助けを求められる為に、俺は親友と一緒に勉強をする。


「だいぶ理解してきたな」

「全ては宙弥ひろや大先生様のおかげでございます」

「気色悪い言い方やめろ」

「いいじゃーん」


 じゃれるな、ますます気色悪い。

 抱き着いてきた竜二を俺から離した。

 力が意外とあるから無理くりになる。


「明日は本田ほんだだろ?」

「まあな」


 ニヤリと笑う竜二。

 幸せそうなニヤニヤだな。


「宙弥はあれか、雨宮あまみやさんとか」

「誰とも勉強なんかしない、単独だ」


 テストは元を正すと個人戦なのだ。

 ただ学級担任からしたら団体戦なのだろう。

 他クラスよりも平均点は上の方が良いからな。

 各教科だとノルマのようなものがあるのかな。

 目安はあるかもしれん。

 それより下回れば考えなければならないから、結局教師とは大変なのだ。

 多忙と言われる職業だから、部活の監督は外部に頼んだり、週休2日制にしたりしているのに改善されないのは不思議な話だ。

 ブラック職業と言われたらおしまいだな。

 大人の世界は厳しいな、あーやだやだ。


「これなんだけど」

「ん?」


 竜二の学力が上がることを願いながら、彼の分からないに付き合う。



 竜二との勉強会を終えた後、もう少し勉強をやろうと図書室に来た。

 個室の所に入り、鞄を置いてから椅子に座る。


「はぁ…」


 この部屋に着くまでが疲れた。


“『意味わかんない』”

“『眠いー』”

“『テスト落ちそう』”

“『ああああああああ』”

“『そろそろ帰ろうかな』”


 テスト勉強を真剣な顔でやっているはずなのに、心の中は違うようだ。


“『早く帰んないかな』”


 カウンター奥は貴重な本が置いてある倉庫で、そこに図書館司書の先生がいて、常にドアは開いている。

 だから聞こえてきた。本音が。

 早く帰りたい気持ち、そうだよな。

 俺も当番の時なんて毎度思う。

 こんなことしているより、他のことにエネルギーを使いたいと。

 だがあの委員長様とペアなので逃げられない。

 そんなことを考えていると眠くなってきた。

 最近、一段と寒くなってきていたから、あたたかい所にいると眠気が襲ってくる。

 眠気に撃沈する前に鞄から参考書とノートと筆箱を出して勉強を再開した。

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