第19話 言い忘れていたというか、話題に上がっていなかったから

「40℃か…」


 熱を出した。

 朝から怠いと思ったよ。

 休みの連絡は学校にしたし、寝ていれば良くなるだろう。

 薬や冷えピタなど準備して置いてくれたし助かった。

 さて、もう一眠りしようかな。



雨宮あまみや 優希子ゆきこ sid


「本当にいいの?」

「はい、任せて下さい」

「ありがとう!」


 篠宮君が熱を出して休んだ。

 だから私は直ぐに担任の所へ行き、プリント類全て届けますと言った。

 喜んでもらえて良かったし、私にとっては好都合。

 担任から「個人情報だから気をつけて」とだけ言われて渡されたメモ。

 そこには彼の住んでいる住所が書かれていた。

 アパートかぁ…一人暮らし?

 なら家に向かう前に何か持っていこう。

 喜んでくれるかな。

 ウキウキする気持ちを落ち着かせて、授業の準備をした。



?」

「なんだよ」


 起こされてちょっと不機嫌になる。

 ドンドンと音を立てて俺の部屋に入ってきた。


「ここに薬と冷えピタとタオル置いとくね」

「あいよ」


 ガタンと机の上に置いた。

 雑なんだから困ったもんだ。


「あー、何で風邪引いたの?約束してたのに」

「だから行っていいって言ったじゃん」

「でもさ、かわいそうじゃん」

「行けっつったら行け」

「えー」


 押し問答をしているとチャイムが鳴った。


「はーい、誰だよもう!」


 珍しいな、宅配?

 竜二りゅうじなら必ず連絡くれるし。


「はーい…ん?」

「あっ…」


 体の怠さは軽くなっていたから、後を付いていくと、玄関にはあの子がいた。


「雨宮…さん」

「えっえっ?知り合い?」


 雨宮さんと目が合うと、彼女の目からはポロッと涙が流れた。

 、いや、話題になかったから落ち度だ。


 俺と雨宮さんの間にいるこの人はー…。


「雨宮さん、泣くな」

「えっ?泣いてなんか…」


 彼女の言葉を遮って俺は言った。


「俺のだよ」


 数秒の沈黙からのぽかんとした顔には笑いそうになった。


 改めて、俺の同居人であるこの人は。


「よく分かんないけど、双子の姉の宙未ひろみでーす!」


 よろしくと言ってウインクを決めた宙未。

 ますますぽかんとする雨宮さんだった。

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