第19話 言い忘れていたというか、話題に上がっていなかったから
「40℃か…」
熱を出した。
朝から怠いと思ったよ。
休みの連絡は学校にしたし、寝ていれば良くなるだろう。
薬や冷えピタなど準備して置いてくれたし助かった。
さて、もう一眠りしようかな。
※
「本当にいいの?」
「はい、任せて下さい」
「ありがとう!」
篠宮君が熱を出して休んだ。
だから私は直ぐに担任の所へ行き、プリント類全て届けますと言った。
喜んでもらえて良かったし、私にとっては好都合。
担任から「個人情報だから気をつけて」とだけ言われて渡されたメモ。
そこには彼の住んでいる住所が書かれていた。
アパートかぁ…一人暮らし?
なら家に向かう前に何か持っていこう。
喜んでくれるかな。
ウキウキする気持ちを落ち着かせて、授業の準備をした。
※
「起きてるー?」
「なんだよ」
起こされてちょっと不機嫌になる。
ドンドンと音を立てて俺の部屋に入ってきた。
「ここに薬と冷えピタとタオル置いとくね」
「あいよ」
ガタンと机の上に置いた。
雑なんだから困ったもんだ。
「あー、何で風邪引いたの?約束してたのに」
「だから行っていいって言ったじゃん」
「でもさ、かわいそうじゃん」
「行けっつったら行け」
「えー」
押し問答をしているとチャイムが鳴った。
「はーい、誰だよもう!」
珍しいな、宅配?
「はーい…ん?」
「あっ…」
体の怠さは軽くなっていたから、後を付いていくと、玄関にはあの子がいた。
「雨宮…さん」
「えっえっ?知り合い?」
雨宮さんと目が合うと、彼女の目からはポロッと涙が流れた。
言い忘れていた、いや、話題になかったから落ち度だ。
俺と雨宮さんの間にいるこの人はー…。
「雨宮さん、泣くな」
「えっ?泣いてなんか…」
彼女の言葉を遮って俺は言った。
「俺の双子の姉だよ」
数秒の沈黙からのぽかんとした顔には笑いそうになった。
改めて、俺の同居人であるこの人は。
「よく分かんないけど、双子の姉の
よろしくと言ってウインクを決めた宙未。
ますますぽかんとする雨宮さんだった。
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