第10話 分かってはいたが、ここまでくるとは思わなかった
「痛…ヤバい…」
体育祭の次の日。筋肉痛に苦しんでいた。
分かってはいたが、ここまでくるとはな。
まあ、運動した後に筋肉痛がその日の内や次の日にくるのは、体はまだ若い証拠と聞いたことがある。
部活していなくても大丈夫だったが、筋トレくらいは普段からしとけば良かったなと後悔する。
治まり次第、ぼちぼち軽い運動はしてこうと思う。
スマホをなんとなく見ると
『体大丈夫?』
エスパーかよ。
何でもお見通し過ぎて若干引く。
が、心配してくれて、気にかけてくれているのは有り難いことだなと思う。
『筋肉痛だけど大したことはないよ』
返事をした。すると秒で返ってきた。
レスポンスは早い時は早すぎて驚きものだ。
アイツはきっと彼女とイチャイチャメッセージして夜更かししているらしいからな。
羨ましくはない、疲れ過ぎて死ぬんじゃないかと思ってしまう。
だから俺は恋人なんてまだいらない。
10代は自分の時間を大事にする。
省エネで突っ走るんだ。
その方が平和に平凡に生活が出来るのだから。
※
雨宮
「はぁ…好き…」
溜め息をつくくらい、私はうっとりしていた。
先日の体育祭で撮った
数百枚も撮っていた。
控え場所にいる彼の様子、幅跳びをする彼の様子、移動の時、リレーの直前など。
リレーの動画は何百回も再生してみている。
そして、数枚の集合写真。
唯一、昼食の時はさすがに無理だったから、心のカメラに焼き付けた次第。
でも、あの時が1番幸せだったなと思う。
2人きりという特別が、体育祭の思い出No.1になっているのかもしれない。
心残りは唯一つ。
「ツーショット…」
勇気は出なかった。
ポスッ…。
クッションに顔を埋めた。
こんなに好きなのに、伝わらないもどかしさ。
仮に伝わっていたとして、ウザいかな。
こっそり撮った写真がいけないなら数枚は厳選して削除する。
リレーの動画はさすがに削除しないけど。
焦りはしていない、でもこの先ライバルが現れてもおかしくはない。
「早く振り向いてよ…」
胃袋掴めば近道と思っていたのに読み間違えたからなぁ。
先は長そうだ。頑張ろう。
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