第9話 体育祭 Part4
「はぁ!?」
「頼む、助けてくれ!」
というのも、騎馬戦で落ちてしまい怪我に繋がったとのこと。
そしてクラスで選抜したリレーに出場が出来なくなったわけだ。
出れないから他の人に交代するということで、何故か白羽の矢になった俺。
意味が分からなかった。
何故、俺なのか?
「立間、何で俺なんだよ?他にいるだろう、足が速いやつ」
立間は眉間に皺を作って俯く。
「誰も出たがらなくてさ」
何だよそれ、ますます意味が分からない。
「俺、嫌なんだけど」
「
ギクッ…。誰だよ、立間にタレコミしたのは。
確かに運動部に所属はしていた。
補欠だったけど。
だが、陸上部ではない。
だから、役には立たんわけで。
「篠宮君」
「
ちょっと潤んだ瞳で俺を見つめている。
その心はというと。
“『走ったら絶対スマホで撮影して永久保存したいから、推薦して良かった!』”
お嬢さん、余計なことをおおおおお!!
思い出した。雨宮さんに喋ったんだ。
やり取りするようになって、部活の話になって、その流れで俺は言ったんだ。
それで今、この状況になっている。
とんでもない伏線回収だ。
「篠宮君、救世主になって、お願い!」
「あっ…いや…」
渋った。
すると、雨宮さんの隣にいる久尾さんがギロリと俺を睨んできた。
「ビリになっても誰も責めないし、やれよ」
は、迫力が…。
数十秒考える振りをして、意を決した。
「分かった、誰も責めないなら走るよ」
どんな結果になっても知らん。
どうにでもなれ。
誰も文句を言うな。
「ありがとな篠宮!!」
「良かったね立間君!!」
“『やったー!!応援するぞー!!』”
心の中で怒り、表では溜息をついた。
※
「はぁ…はぁ…」
本気で走った。たかが100メートル、されどである。
結果はというと、アンカーの
すまんな、越されてさ。
俺は第一走者だった。
途中まではリード出来ていたが、次の人に渡す手前で逆転されてしまい2位でバトンを繋いだ。
そして2位のままアンカーの結城はゴールしたのであった。
「ありがとな、立間の代わりやってくれて」
「べ、別に大したことは」
「いやいや、大健闘だよ」
結城は見た目はマスコットのような朗らかな性格で、みんなに頼りにされているリーダー的存在。
本当に良いやつだ。
「あとでジュース奢る」
「いらないよ」
「まあまあ、そう言うなって」
気前の良いやつだなと思った。
他の2人からも労われてしまった。
控え場所に戻ると拍手で迎えられた。
雨宮さんが視界に入って来ると“『惚れ直しちゃった』”と言っていて、更にちょっと疲れた気分になる。
怪我をした立間は「みんなごめんな」と謝ってから、俺に「篠宮、陸上部来ないか?」と誘いがきた。
が、俺は「悪い、興味ない」と言って断った。
帰宅部が1番さ。楽だからな。
こうして最後の種目のクラス対抗綱引きをして体育祭は閉会式へ。
うちのクラス順位は3位だった。
綱引きで巻き返しは叶わなかったようだ。
なにはともあれ、楽しく愉快に体育祭は終わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます