第52話 可愛い彼女
日曜の昼前、千里から連絡があった。
『今日私の家来れる?』
『行けるよ』
『野菜の量間違えちゃってカレー作り過ぎちゃったからちょっと食べて欲しくて』
千里のカレー。食べたい.....。
『ちょうどお腹すいてるから今行くよ』
『ごめんね。和樹くん昨日カレーだったのに』
カレーは家によって味変わるし意外と飽きないんだよなぁ。
僕は気にせず準備をして家を出た。
一つ階をおり千里の家の前まで来た。
インターホンを押すと千里が出てきた。
リビングはカレーの匂いで満たされておりますますお腹が減ってきた。
それともう一つ気がついた事がある。
「千里、ここにあったダンボールどうしたの?」
「捨てた」と弾んだ声で言う千里。
「自分で引越し準備なんてしたくないもん。やるなら全部兄さんたちにやらせるつもり」
「それは、当たり前だな」と僕は笑った。
正直無理をしているかどうか僕には分からないが見た感じだと千里は前向きになっているような気がする。
「席座ってて、すぐ準備するね」とキッチンへ向かう千里。
「わかった」
少ししてカレーライスが僕の前に置かれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
千里も僕の正面に座り一緒に食べるらしい。
「ははっ、何か千里奥さんみたいだな」と思わずそう言った。
「奥さん.....」
「私はお嫁さんになりたいなぁ.....」と頬赤くし僕の方をチラチラと見る千里。
僕で良いという事なのか......。
嬉しくもあり恥ずかしくもあった。
「そ、そっか.....」と思わず目を逸らしてしまった。
少しの静寂が僕達を包む。
「と、とりあえず食べよっか」
「そ、そうだね」
いただきます、と言いカレーを口に運ぶ。
「うまっ!」
やっぱり家のと全然違うなぁ。何というか千里のは凄い優しい味。
「良かった。甘口カレーだから合うか心配だったんだ」
なるほど優しいのは甘口だからか。
「辛いの苦手なの?」
「うん、ピリ辛でも飲み物がないと食べれないの」
「そんなに苦手なんだ」
千里は変なところですごく弱い。それが可愛いんだけど。
「だから逆に甘いものばっか食べちゃうから。太らないか心配なんだ」
「太った千里も何か気になるな」と僕は苦笑いを浮かべた。
「和樹くんにそんな姿絶対見せないよ」
「どうして?」
「だって恥ずかしいもん.....」
「和樹くんだって嫌でしょ。ずっと何か食べててだらしないお腹してるの」
「でも千里が美味しそうに食べてる顔かわいいからなぁ」
正直千里が太るなんて想像出来ないので僕は少しからかっていた。何だか色々気にしている千里が可愛かったからだ。
「───かわっ!?」と頬赤くする千里。
「もぉー和樹くんがそんな事言ってたらほんとに太るかもしれないよ!」と頬膨らまし嘘っぽく怒る千里。
「ごめんごめん、でも無理はしちゃだめだよ。美味しいなら食べたらいいんだからさ」
「和樹くんは私をあまやかしすぎ」
「ははっ、だって可愛いもん」
「だから可愛いって言わないで!!」とさらに頬赤くし怒る千里。
千里が内心喜んでいるのがわかってしまうのでこれはやめられない。
「こういうのももしかしたらあと一ヶ月だけになるのかなぁ」と遠い目をする千里。
「永遠に続けばいいのに」
「永遠に続いて欲しいな」
僕達は声を合わせ同じ事を言った。それが面白くてお互い笑っていた。
「和樹くんほんとはねカレー多く作ったの嘘なんだ」
「昨日スーパー行った時和樹くんが食べたい、って言ってた気がして、昨日のお礼に食べてもらおうと思って嘘ついちゃった」と微笑む千里。
「───えっ.....」
聞かれてたのか───。
確かにカレーって聞いて食べたいって言ったけどまさか聞かれてるとは.....。それにしても僕の分、分けてくれるって優しすぎないか。
それに甘口カレーなのにめちゃくちゃ好きな味だし。
「ありがと千里。すっごく美味しかったよ」と僕は微笑む。
「そ、そっか.....」と嬉しそうな顔をした。
「ねぇおかわり貰っても良い?」
僕がそう言うと千里は嬉しそうに目を輝かせ「もちろんいいよ!」と最高の笑顔を見せうきうきでキッチンへと向かった。
ほんとに千里はかわいずぎる......。
叶うなら永遠にこの時間が続けばいいのにな.....。
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