第51話 優しい彼 (冬野視点)
11月に入り私は今すごく悩んでいることがある。
それは....お金が無い───!
兄さんから貰ってた仕送りが今月になってあからさまに少なくなっしまっている。
先月の半分......。
前までは豪遊しなければ全然遊ぶくらいのお金は残ってたのに今月は相当節約しないと遊べなくなっちゃうよぉ。
そしてさらに運の悪いことに冷蔵庫はすっからかんなのである。
これはへこむなぁ、とため息を着く。
今日は土曜日。とりあえずスーパーに行かないと....。しばらくはスイーツは抜きかなぁ。
沈む気持ちのまま私は買い物のために外へ出た。
私はエレベーターのボタンを押した。
一階にあったエレベーターが上に上がってくる。
すると私の階には止まらず一つ上の階に止まった。
上にいる人が乗ったのだ。そして私のいる階で止まりエレベーターに乗り込む。
「あれ?千里....」と聞き覚えのある声が聞こえ私は顔を上げた。
「和樹くん───」
まさかの和樹と会ったのだ。
こんな偶然あるの......。と思いつつも嬉しくもあった。
エレベーターのドアが閉まり一階へと降りる。
「和樹くんが外出るって珍しいね」
和樹くんは予定がなければずっと家に居る。
「ああ、母さんに買い物頼まれてな。千里は?」
「私も買い物。冷蔵庫に何も無くて....」と言いためいきをついた。
マンションから出て揃ってスーパーまで歩く。
「今日何か元気ないな」と和樹くん。
「それがね....」と私は仕送りが少なくなったことを話した。
「多分遊ばせないためなんだと思う」
「千里のお兄さん厳しいな....」と和樹くん。
「まぁ兄さんら小さい時からそんな感じだったからなんとなく予測は着いたんだけどね」
そうしてスーパーに着いた私たちはカゴを持ちそれぞれの買い物をしていく。
お金が急に少なくなると全部が高く見えてしまう。
「和樹くん何頼まれたの?」と私は興味本位で聞いてみた。
「これ....」とスマホの画面を見せてきた。
人参に玉ねぎ、じゃがいもって....。
「今日カレーでもするの?」と私は少し笑ってしまった。
「多分そう....」
「何でカレーするつもりなのに具材全く揃ってないんだろうな」と和樹も笑っていた。
「でも和樹くん買い物行ってあげるの意外と優しいね」と私はニヤつく。
「そりゃあ余ったお金がお小遣いになるからな。当たり前だ」と少し照れくさそうに言う和樹くん。
なんだか小学生みたい....。と私は微笑ましく思った。
カレーかぁ良いな。と私も食べたくなってしまった。
でも野菜意外と高いしなぁ。でもカレーなら何日かもつし....。と悩んでいると和樹くんが口を開いた。
「何あれ....?じゃがいも詰め放題って」
「じゃがいも詰め放題?」
私は不思議に思い前を向く。
そこには本当にじゃがいも詰め放題というのがあった。どうやら一枚の袋にどれだけじゃがいもを詰めても同じ値段らしい。
しかもいつも売ってある四つ入りのじゃがいもと値段が変わらない。
これはやるしかない!と私はやる気が出ていた。
「千里もやる?」と和樹くん。どうやら顔に出ていたらしい。
「───えっ!?あっ、うん」
私は少し恥ずかしくなってしまっていた。
「千里こういうの得意?」
「えっと....」
そういえば私こういうの全く出来ないんだった....。と過去のことを思い出してしまった。
「できない......」
「なら自分でやるか....」と和樹は小さく呟いた。
どうやら自信が無いらしい。
そうして和樹くんはやったのだが.....。
「もう入らないかな....」
そう言う和樹くんの手にはじゃがいもが7個ほど入った袋があった。
「和樹くん上手い───」
さっきの自信の無さはなんだったの!
「小さいの選んだだけだよ」
和樹くんが上手いなら.....。と私はある考えを思いついた。
「和樹くん私のやってくれないかな?」
「良いけど....上手くいくかわかんないよ」
「大丈夫、私よりは上手いから!」と押し切りなんとか和樹くんにやってもらえることになった。
そうして彼は当然のようにじゃがいもを7個入れた。
「はい、千里の分」とじゃがいもの入った袋を渡してくれた。
「ありがと」と受け取る。
───重っ!?
思った以上にじゃがいもが重たく私はバランスを崩してしまった。
「おっと!」と和樹くんが倒れそうな私を支えてくれた。
「あ、ありがと....」
自分のどんくささに恥ずかしくなり顔が熱くなった。
「大丈夫?」と和樹くんは微笑む。
「うん....」
私はカゴの中にじゃがいもを入れた。
じゃがいもが安く買えたんならやっぱりカレーにしようかな....。
「人参と玉ねぎ買いに行ってくるよ」と和樹くんが言った。
「あっ!私も」
結局カレーを作ることにした。
そうして和樹くんと同じ具材を私もカゴに入れていく。さすがの和樹くんも気づいたらしくこう言った。
「もしかして千里もカレー?」
「う、うん何か食べたくなって」
「そっか」
「食べてみたいな......」と和樹が言ったような気がした。
そうしてカレーの具材以外にも数日分の食料を買いレジを済ませた。
「ごめんねずっと着いてきてもらっちゃって」
「ううん、何か楽しかったからいいよ」と優しく微笑んだ。
買った食材を袋に詰める。
重い.....。確かにじゃがいもたくさん入ってるもんね。
「僕が持つよ」と私の分を和樹は持ってくれた。
「良いよ、重いでしょ」
時間かけちゃったしさすがに悪いよ....。
「大丈夫。そんなに重くないよ」と和樹くんは微笑んだ。
「ほんとに?」
「ほんとだよ」
「じゃあ、お願いします」
私和樹くんに甘えすぎだなぁ、と思った。
マンションまで戻り私は和樹くんから食材の入った袋を受け取ろうとしたのだが和樹くんは家の前まで持ってくよ、と言った。
私の家の前まで付き「ほんとにありがと」と私は微笑んだ。
「うん、僕も楽しかったよ」
「それじゃあまたね」と私は袋を持ち家に上がろうとした。
「───ちょっと待って」と和樹くん。
「どうしたの?」と振り返ると和樹くんが袋の中からアイスを取りだした。
「寒いけどなんか食べたくなって、これ二つあるから一個あげるよ」
「良いの?」
甘いものだぁ。と私は嬉しくなっていた。
「うん、良く姉さんと食べてて結構気に入ってる味なんだけど二つも要らないから貰ってよ」
「それなら......」
私はアイスを受け取った。彼の優しさについ甘えてしまう。このままだとほんとに離れられなくなっちゃいそうだ。
「それじゃあまたね」と笑顔で手を振る和樹くん。
「うん、バイバイ」と手を振り返した。
私はアイスを咥えながら家に入る。
冷たいけど美味しい。
それになんだかいつもより甘く感じた。
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