第50話 放課後デート

文化祭などと忙しかった一週間が終わり月曜日になった。何故か久しぶりに学校に行くような感覚になっていた。


「おはよう和樹くん」とマンションの外で千里が待っていた。


「おはよう千里」


そうしていつものように学校へ向かうのだが千里が何かを警戒しているような目で周りを見ていた。


なるほど監視を警戒してるのか....。


そう理解した僕は千里と同じように周りを見渡す。


見た感じでは怪しい車や視線は感じない。今までも気づいていなかったので確信はないが恐らく監視は居ないのだろう。


「居ないみたいだな」と僕はそう言うと千里が「そうみたいだね.....」と言いため息を着いたかと思ったら少し浮かない顔をした。


確かに複雑だろうな。監視が居なくなることは安心できるが逆に見る必要が無くなった、つまりチャンスを与えられない、と言われているかのようだ。


「千里大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。監視がいなくなったんだもん。これで気にせず和樹くんといれるよ」と無理に笑顔を作った。


僕は千里の手を握り「ああ、そうだな。これで周りに気にせず千里に触れられる」と言い微笑んだ。


「そんなに和樹くんは私にくっつきたいの?」とニヤつく千里。


「そんなの当たり前だろ」


「───えっ.....そうなんだ.....」と少し頬赤くする千里。


「それなら───」と千里は僕の握る手をどかしたかと思ったら両手で僕の片腕にしがみついた。


「───ちょっ.....千里」


まさかの行動に僕は驚いてしまった。


「これならもっと私に触れられるでしょ」と頬赤くしながらもニヤつき僕をからかってきた。


やっぱりかわいいな千里......。


学校が見えてくるまで僕達はこの状態で登校する事にした。



ある休み時間千里が綾香たちと話していた。


「ねぇ千里これ可愛くない?」と綾香がスマホの画面を見せる。


そこには猫の画像があった。


「かわいいっ!」と目を輝かやかせる千里。


「でしょ。今日の道端にいたんだ。このクリクリの目がかわいくって思わず写真撮っちゃったよ」


「ねこ良いなぁ.....」と千里。


「千里猫好きなのか?」と北条さん。


「うん、飼いたいと思った時期もあったの。でもダメって言われて......」


「それならこの近くに最近猫カフェ出来たらしいから行ってみたら?」と北条さん。


「猫カフェ....。行きたい!」と千里。


「じゃあ場所教えてあげるよ」と北条さん。


「ありがと美香」と笑顔を見せる千里。



授業が終わり放課後となった。


「和樹くん今日時間ある?」と千里。


「あるけど、どうかした?」


「ちょっと行きたいところがあって」


これは放課後デートというやつなのでは?


僕は少しテンションが上がった。


千里に連れられ二駅ほど離れた場所まで来た。


「それで千里どこ行くの?」


「猫カフェ。今日綾香から猫の画像似せてもらって、そしたら猫見たくなっちゃって」と微笑む千里。


「そっか」


そうして歩いていると新しいのかすごく綺麗な店が見えた。


「ここみたい」と千里がその店の前で止まった。


「じゃあ入るか」


そうして僕達は猫カフェの店に入った。


「ニャァーー」と猫の鳴き声が聞こえてきた。


「かわいいぃーー!」と千里が隣で目を輝かせていた。


猫がいる場所で座っていると一匹の白色の猫が近づいてきた。


壁には猫の写真と名前が書かれており僕はこの白い猫がなんていうのかを探した。


「千里、この子ミルクちゃんって言うらしいぞ」


「へぇーミルクちゃん。かわいい」と幸せそうに笑う千里。


「ミルクちゃんこっちおいで」と手を広げる千里。


「ニャァ〜」と言いながらミルクは千里の手のひらにすりすりと頭を擦り付けた。


「挨拶してるみたいだな」


すると警戒心が解けたのかミルクは千里に飛びついた。


「───わぁっ!?」と驚きながらもミルクを抱く千里。


「和樹くんすっごくもふもふしてるよ」と千里がミルクに頬擦り付ける。


ミルクは千里の頬に顔を擦りつけていた。


お前はいいな....。僕はそんなことできないんだ。とミルクが羨ましく思ってしまった。


すると「ニャァ〜」と僕の方に鳴く黒色の猫が近づいてきた。


お前は....。黒ごまか。


すると黒ごまは僕の足の上に乗ってきてちょこんと座った。


「お前、結構人懐っこいやつなんだな」と言いながら僕は黒ごまを撫でた。


良いな猫カフェ。心が癒される。


僕はすごくくつろいでいた。


「か、和樹くん.....」と何やら困った声を出す千里。


「どうしたんだ?」


千里の方を向いた僕は驚きの光景を目にした。


「これどうしたらいいと思う?」


千里はたくさんの猫に囲まれていた。中には腕にしがみつくもの頭に乗ったりするもの足の上に乗るものと千里は猫からもモテていた。


「ははっ、千里すごいな」と思わず笑ってしまった。


店員さんまでもがその光景に驚いていたほどだ。相当珍しいのだろう。


「もぉー笑ってないで助けてよ。あっ、いや助けなくてもいいかな....」


千里はこの状況が意外と嫌じゃないらしい。どんだけ猫好きなんだ、とツッコミたくなってしまった。


そんな感じで僕らは猫と戯れていると千里が急にこんなことをしてきた。


「和樹くん、にゃっ」と千里、猫の肉球を僕の顔に押し付けてきた。


今、にゃっ、って言ったか?と僕はそっちの方にいしきがいってしまった。


「千里、今のもう一回して」


「良いよ」


「はい、にゃぁ〜」と笑顔でしてくれた。


「何か文化祭を思い出すな」と僕は笑いながらそう言った。


それを聞いて千里はやっと気がついたのか顔を赤くしていた。


「和樹くんのいじわる!」と頬膨らませる千里。


「ごめんごめん、可愛くてつい」


「可愛いなんて言うな.....」と恥ずかしいのか猫で自分の顔を隠した。


だが隙間から見える彼女の口が少し嬉しそうに微笑んでいるのが見え僕は一人微笑んだ。


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