第45話 いつもと違う帰り道
教室の近くまで僕達は手を繋ぎ歩くことにした。
手汗とかかいてないよな....。と何かと不安になったりもしたがそれよりも嬉しさが勝っていた。
今はこのドキドキが何だか幸せに感じていた。
教室の光が見え始め僕達は恥ずかしくなり自然と手を離してしまった。
気付かれないようゆっくりとドアを開けそっと中へ入る。
すると綾香が気が付き僕達の方に近づいてきた。
「やぁ帰ってきたねお二人さん」とニヤつく綾香。
僕達はお互い照れくさくなり目をそらす。
「その反応はそういう事と捉えていいんだねぇ」と楽しそうに笑う綾香。
すると千里が口を開きこう言った。
「綾香ほんとにありがとう。おかげでちゃんと言えたよ」と微笑む。
「そっかそっか。それは良かったよぉ」と千里の頭を撫でる綾香。
すると綾香が千里の耳元でこう呟いた。
「それで和樹は何て....?」
当然この声は僕には聞こえて居ない。
千里も綾香の耳元で「好きって言ってくれたよ....」と言う。
すると綾香が僕の方を見て「へぇーー」と腹立つ顔をした。
「何だ?」
「別にぃー。あの和樹がそんなこと言うんだと思ってぇ」
「───うっ....」と僕は苦虫を噛み潰したような顔をする。
千里が手でごめんのポーズをしているのが見えた。
まぁある意味綾香が僕らをくっ付けてくれたわけだしこのくらいは我慢するか....。
「おぉー和樹どこ行ってたんだよ」と健吾が近づいてきた。
「ああ、ちょっとな....」
「てゆうかどうしたお前らさっきと雰囲気違うぞ」と僕と千里を見て不審に思う健吾。
何で分かんだよ!と思いながらも僕は顔に出ないよう必死に耐えていた。
千里は顔を赤くさせ分かりやすく動揺しているのが見えた。
「まぁ良いけどよぉ。それより知ってるか?」と健吾。
「なんのことだ?」
「何とうちのクラスが売上一位だったらしいぜ」と嬉しそうな顔をする健吾。
「そうか....」
あんなに人来てたし当たり前だよな。と僕はそこまでの驚きはなかった。
「もうジュースとか無くなるぜ。欲しいなら来いよ」と言い健吾は僕達から離れていった。
「和樹くん何か飲もっか」
「そうだな」
僕達は残りの数十分をみんなで楽しんだ。
ジュースもお菓子もなくなり解散となった。
「綾香帰ろ」と僕らはいつも通り三人で帰ろうと綾香を誘う。
すると綾香は「まだ私ちょっとやる事あるから二人で帰っていいよ」とニヤリとしそう言った後北条さんたちと行ってしまった。
多分気を使ってくれたのだろう。
そういう事で僕らは二人で帰ることとなった。
学校を出て夜の道を揃って歩く。
何だかこういうの久々な気がするな。
周りにに人が居ないのを確認し僕達はまた手を繋いだ。
すると千里が「何だかドキドキするね」と言った。
「だな」
「いつも一緒に帰ってたのに何だかいつもと違う。まるで初めて帰った時みたいな感じがする」
「確かにそうだな。あの時は同じマンションで驚いたのを覚えてるよ」
「あれはびっくりしたね」と笑う千里。
今日だけで僕らの距離はぐんと縮まったのを感じる。きっとお互いの気持ちを知ったからだろう。
にこにこと嬉しそうに笑う千里。いつもりも何倍も眩しい笑顔に見えた。
「ねぇ和樹くんまたどこか行ったりしようね」と照れくさそうにそう言う千里。
「もちろんだよ。千里とならいつでも良いよ」
「そっか」と嬉しそうに笑う千里。
いつの間にかもうマンションが目の前まで近づいていた。まだ帰りたくないと思ってしまうほどに彼女といる時間がいつも以上に楽しくて幸せだ。
「和樹くん今日家帰ってから電話してもいいかな....?」
「───えっ....!?」と思ってもいなかった誘いに思わず声を上げてしまった。
「何だか今日はもう少し話したくて」
「うん、良いよ」と僕はもちろん了承した。
「ありがとう」と微笑む千里。
何だか千里前よりも積極的になってるような....。僕的には嬉しいので特に気にはしていない。
エレベーターに乗り上に上がっていく。
千里の降りる階に止まり僕達は握っていた手を離した。
「それじゃあまた後でね」と言い手を振る千里。
「うん、また後で」
握っていた方の手にはまだ温もりが残っていた。
そうか僕は千里と付き合えたんだ。と再確認し心の中ではしゃいでいた。
※
家に帰り少し落ち着いた事にスマホが鳴った。
その時には時計は10時を指していた。
千里かな....。
僕はスマホを取り誰からかを確認する。
やっぱり千里だ。あれ....ビデオ通話になってる....。と僕は念の為ボサボサになった髪を手櫛で整え電話に出た。
───っ!?そこにはパジャマ姿の千里がベットに寝転んでいるのが映っていた。
「もしもし」と少し恥ずかしそうに言う千里。
「もしもし....ビデオ通話だったから少し驚いたよ」
「あっ、嫌だったら普通の電話でもいいんだけど....」
「嫌じゃないから大丈夫だよ」
「そっか」と微笑む千里。
「和樹くんごめんねお風呂入ってたからちょっと遅くなっちゃった」と続けた。
だからさっきより髪サラサラなのか....。
「ううん、僕もちょうど落ち着いたところだったから良かったよ」
「そっか」
それから僕達は文化祭のことを思い出し盛り上がっていた。
「和樹くん私のメイド姿ちらちら見てたでしょ」とニヤつく千里。
「気づいてたんだ....」
さすがにあんなに可愛かったら男なら自然とみてしまうものだ。
「でもそうやって見てくれてたおかげで転けずに済んだんだけど」
「千里はたまに鈍臭いからな」と僕もニヤつきそう返す。
「鈍臭くないもん」と頬膨らまし嘘っぽく怒る。
「ははっ」と思わず笑ってしまった。
そんな感じで一時間近く話していた時だった。
千里眠そうだな。
「和....樹くん....」とウトウトしながらそう言う千里。
まぁ忙しかったし仕方ないか....。
「どうしたの千里?」
「和樹....くん....ありがとね」
完全に寝ぼけてるなぁ。と僕は面白くて笑ってしまった。
こういう千里を見たのは初めてで何だか可愛らしい。
すると手にスマホを持ったまま千里は完全に目を閉じてしまった。
あっ、寝ちゃった。寝顔を見たのは二度目だがこうもしっかり見たのは初めてだ。
何だかいつもより幼く見えてしまうのは何故だろう。
───あっ、あんまり見るのも悪いよな。
「おやすみ千里」
僕は電話を切った。
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