第40話 メイド服 (冬野視点)

この話しは教室へ帰ろうと廊下を歩いていた時に二人の女子の話し声が耳に入った。


「ねぇ今年もあるのかな?写真部のペアショット」


ペアショット.....?


「あるなら何組カップルできるんだろうね」


「私、誰か誘おっかなぁ」


へぇーそんなのあるんだ....。去年私は文化祭が嫌で学校を休んでいた。なのでこの高校の文化祭のことはあまり知らない。


何だか気になるし綾香に聞いてみよっかな。


教室に戻った私は綾香を探す。でも彼女は見当たらなかった。


私は近くにいた美香に話しかけた。


「美香、綾香どこにいるか知らない?」


「綾香ならさっきダンボール取りに行ったよ。すぐ戻ってくると思うけど....」


「そっか....」


「何か用事?あれだったら私が聞くけど」


それなら美香に聞いてみよっかな。


「う、うん対した用事じゃなくてさっき廊下で聞こえたんだけど写真部のペアショット?って何かなと思って」


すると美香は顔をニヤッとさせ「あれれ〜千里もしかして好きな人でもできたの?」


「───えっ!?ち、違うよ!」と私は分かりやすく動揺した。


な、何でわかったの....!


「ほんとにぃ〜」


「ほんとだよ....ただ、ちょっと気になっただけ」


「そっか。良いよ教えてあげる」


そう言い美香は私にペアショットのことを教えてくれた。


これは写真部がやっているイベントらしく男女二人組で写真を撮るという良くありそうなものだがここは少し違う。


撮った写真は二人とも渡される。だが渡される時二人は一度別れお互いが見えない仕切りのある場所に移動する。そこにはボールペンが置いてあって写真の裏に何かをかけるようになってあるらしいしかも写真を入れられる封筒まで用意してあるという。


当然その写真はお互いに交換する。そうなれば告白をする人たちも出てくるものだ。


「だから文化祭はカップルが大量に出来るんだよ」と美香。


「へぇー」


何だか良いなぁそういうの....。私も和樹くんを....だめだめ誘ったらバレちゃうよ!と少し照れてしまった。


「それで千里は誰を誘うのぉ」とまたもやニヤつく美香。


「だ、だから誰も誘わないよ....」と私は否定する。


「顔が赤いよ千里」


「───えっ!?」


「嘘だよ」と言い笑う美香。


私は恥ずかしくなり本当に顔が赤くなった。


そんな時クラスメイトから「冬野さんちょっと来て」と言われた。


「わかった」


私は美香と別れ呼ばれた方に行く。


「これ、冬野さんのメイド服何だけどサイズ合うか分かんないから一回着てみて欲しいの」


「うん、わかった」と私はメイド服を受け取る。


黒色のスカートに白のふりふりが着いる。実際にメイド服を初めてなのでこれを着るんだ、と少し恥ずかしくなった....。


サイズは悪くないかな。


メイド服に着替えた私はさっきのクラスメイトの場所まで向かう。


するとそのクラスメイトは目を見開き驚いた様子で私の方を見て「かわいい....」と呟く。


「───えっ!?」と思わず驚いてしまった。


「ずっごく似やってるよ!みんなもそう思わない!」と言った。


みんな....?と私は周りを見渡す。


クラスメイトが全員作業そっちのけで私を見ていた。


どこかしらから「かわいい....」と言う声が耳に入る。


私は恥ずかしさと驚きで固まってしまった。


そんな中ダンボールを持った綾香が教室に戻ってきた。


「みんなどうしたの....?」と同じ方を見るクラスメイトを疑問に思いそう言う。


すると綾香も同じ方を見た。


「あっー!千里がメイド服着てる!」と目を輝かせ一気に私の方へと近づいてきた。


舐め回すように私のメイド姿を見て「かわいい〜。かわいいよ千里!」と言う。


「あ、ありがとう....」と私は照れながらそう答える。


そ、そんなに見られると恥ずかしいよぉ....。


この服のままお店に出るって事だよね。は、恥ずかしい....。と今更ながら思った。


すると遅れて和樹くんが教室に戻ってきた。


「やっと戻って来たか和樹!」と高橋くんが言った。


「どうしたんだ健吾」と和樹くん。


「ほら見ろよ」と私の方を指さす高橋くん。


ちょ、ちょっと何して....!と心の中で叫んだ。


すると私の方を見た和樹くんは目を見開き驚いた顔をする。


目が合った私は思わず視線を逸らす。


は、恥ずかしいよぉ〜。


それでも痛いほどに感じる視線が気になり私はちらちらとみんなの方を見てしまう。


とうとう恥ずかしさが限界を迎え耐えきれなくなった私は口を開いた。


「そ、そんなに見ないで....恥ずかしい....」


すると男子は照れ臭くそうに目を逸らし女子は逆に興味を示したのか『かわいい〜!!』と言い近づいてきた。


「ねぇねぇこのリボン付けてみてよ!」

「このカチューシャとか似合うと思うんだよね!」

「後髪留めも!」と言いながら私を取り囲む女子たち。


ど、どうしよう....。と私は頭が真っ白になり何も考えられなくなってしまった。


でも何だかクラスに馴染めた気がして悪くは無いと思えた。


そんな時和樹くんと高橋くんがこんな会話をしていた。


「冬野さんメイド服似やってたな」と高橋くん。


「ああ、そうだな....」と和樹くん。


「お前ちょっと見惚れてただろ」


「見惚れないよ」と少し照れる和樹くん。


「まぁでもめちゃくちゃ可愛いな....」と誰にも聞こえない声で和樹くんはそう呟いた。


みんなの着せ替え人形とかしていた私はこの時思った。


文化祭どうなっちゃんだろう....。でも何だか楽しみだなぁ。


そんな心配と楽しみな気持ちが混合したまま準備を進めた。

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