第37話 プレゼント決め(冬野視点)
和樹くんの誕生日まであと三日しかないとわかった私は急ぎ綾香と誕生日プレゼントを選びに行くことにした。
「もう、わかんないよぉー!和樹の欲しそうなものが全くみつかんない!」と音を上げる綾香。
「もうちょっと誕生日の時期が遅かったらマフラーとか作っちゃえば良いってなるのにぃー!」
「確かに....立花くんが物に興味を示したの見た事ないかも....」
私達は今日プレゼントを決めれる自信は完全に無くなっていた。
「あぁーもうゲームばっかしてるから物欲なくなっちゃうんだよ」
「ゲーム....」
ちょっと考えたけど私ゲームわかんないしなぁ....。
「次向こう行こうよ!」と綾香。
「うん」
歩きながらも周りに目を向け何か無いかと探し回る。
そんな時視界に映るものがあった。ケーキ屋だ。
ここのケーキ美味しそぉ。ケーキ....ケーキ!
「綾香、ケーキ!」
「ケーキはプレゼントにならないよ」
「そんなのわかってるよ。プレゼントいいのが見つからないならケーキ作ってみんなでお祝いすればいいんじゃないかなって」
「誕生日パーティー、それ良いじゃんやろやろ!」と目を輝かせる綾香。
「うん!」
プレゼントが決まらないと和樹くんお祝いできないしそれならケーキ作ってお祝いした方がいい気がするし、それに気持ちも伝わりやすいよね。
「でもプレゼントもあげたいしなぁ....」綾香はまたしても悩んだ顔をした。
やっぱりあげるなら使えるものがいいなぁ。和樹くんがスマホゲーム意外にしてることも聞いていればよかった。
ゲーム....。
───あっ!私はある物を思いついた。
「綾香、ちょっと着いてきて」と手を引きある場所へと走った。
「───わぁっ!?急にどうしたの千里」と驚く綾香。
「プレゼント思いついたんだ」
そのある物を綾香に教えた。
「どうかな?」
「うん、いいんじゃない。和樹の事ちゃんと見てるって感じするし!」
「じゃあこれにする!」とひとまず私からのプレゼントは決めることが出来た。
綾香はその後もしばらく悩みやっと決めることが出来た。
「誕生日パーティーするなら悠真達も呼ぶ?」
「うん、良いと思う」
「でもやる場所をどうするか....」
「それは大丈夫。私の家でしよ」
一人暮らしをしているとこういう時人が呼びやすくて意外に助かる。
「おっけー。それで千里ケーキつくれるの?」
「作った事ないけど多分大丈夫....」
正直いうとあまり自信はない。でも和樹くんのためならやってみようと思ったんだ。
すると私の顔を見て自信が無いことが伝わったのか綾香がこんなことを言った。
「私、手伝おっか!土曜日家行っても良いかな?一回試しに作ってみようよ」
「良いの....?」
「うん、和樹喜ばせたいんでしょ」と優しい笑顔を見せる綾香。
「うん、そうだね....喜ばせたい!」と私も笑顔で返した。
「よし、それじゃあ一通り決めたという事で今日は帰ろっか」
「うん、そうだね」
そう言い私達は店を出た。
電車に乗り最寄りの駅についた頃には日が沈んでしまっていた。
家に帰りケーキの作り方を確認し、足りない材料は明日買いに行くことにした。
とりあえず作ってみなくちゃわかんないよね。
日曜日は絶対和樹くん喜ばせよ!
※
そうして迎えた土曜日、ケーキの試作をするため綾香が家に来ていた。
「おぉーなかなか本格的だねぇ」と感心した様子だ。
それも当然だ。卵を解いたりといろいろ大変そうだったのでハンドミキサーを買っておいた。
「それじゃあ早速はじめよっか」
「おっけー」
綾香とキッチンに入りレシピを見ながら順番に作ることにした。
「じゃあ私生地を作るから綾香は薄力粉とかバターを溶かしたりとかの準備をして欲しいの」
「わかった」
そうしてケーキ作りが始まった。
まずはボウルに卵を割って....グラニュー糖にはちみつ....。私はレシピを見ながら材料を入れていく。
「うわぁっ!」と薄力粉を出していた綾香が突然叫んだ。
視界が白くなったかと思えば鼻や口に入り咳が出てきた。
「ごめん千里、薄力粉ひっくり返しちゃった」
舞っていた白い粉がはけた時、キッチンを粉まみれにし顔が真っ白になった綾香が申し訳なさそうな顔をして現れた。
「プフッ....綾香、顔が....」と思わず笑ってしまった。
当の本人は「顔?」と首を傾げ洗面所に向かった。
「すご!真っ白じゃん!」と声を上げる綾香。
ほんと何やってるのよ綾香と変にツボに入ってしまいしばらく笑いが止まらなかった。
顔を払いしきりないし、と言わんばかりに真剣な顔をする綾香。
「次は失敗しないよ!」と言い慎重に薄力粉を入れていく。
綾香は言葉通り失敗することなく入れ切った。
どうよ、と誇らしげな顔をする綾香。
「すごい!」
「でしょー」
とそんな感じでケーキ作りはすごく楽しかった。
「よし!これで生地は出来上がりっと」
「これをオーブンシートに生地を流してオーブンで焼けば後は盛り付けるだけ」
「楽しみだね」と目を輝かせる綾香。
「うん!」
焼けるまでまだ30分近くあるので休憩がてらにコーヒーを飲むことにした。
もちろんミルクは入れる。じゃないと苦くて飲めたものじゃない。
「何はともあれ明日には間に合いそうだね」
「うん....何だか今週はすごくあっという間だった気がする」
「だねぇ」
コーヒーを飲みながらたわいもない話をしているとオーブンがなった。
私たちは足早にキッチンへと向かう。
「何だか甘い香りがするね」と綾香。
私はオーブンを開け焼けた生地を取り出す。
「すごい綺麗にできてるじゃん」
「よかった....」
唯一焦げてないかだけが心配だった。
焼けた生地をしばらく起き粗熱をとる。
そしたらスポンジを切り用意しておいたホイップクリームを駆けイチゴを挟み。全体をホイップクリームで塗り苺を飾る。
「完成!」
「美味しそぉー!早く食べよ!」と目を輝かせる綾香。
今日は試しに作ったので二人で食べれるくらいの小さい量にしておいた。
テーブルに運び切り分ける。
「それじゃあいただきます」
「いただきます」
そうして出来立てのショートケーキを口に運んだ。
その瞬間、私達は見つめ合いこう言った。
「うまっ!」
「美味しいね!」
私たちの作ったケーキは大成功を収めた。
これなら明日も大丈夫そう、と私は安心した。それと同時に明日がものすごく楽しみになった。
「これならいけるよ千里!」
「何が....?」
「和樹の胃袋を掴んじゃうんだよ」とニヤつく綾香。
「そ、そんなこと出来るかな....」と少し照れてしまった。
「自信持って!私はもう掴まれちゃってるから」と言いまぶしい笑顔を見せる綾香。
不思議だ、綾香の言葉はいつもなぜか私の背中を押してくれる。
「そっか、ありがと綾香」
明日はもっと美味しく作れると良いな。
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