第31話 浴衣 (冬野視点)

海に行った日から一週間ほど経過した。


そんなある日綾香からグループチャットにある連絡が来た。


夏休みの終盤にある夏祭りにみんなで行かないかという誘いだった。


『私は行けるよ』


私は早速そう返信した。


『俺も行けるぜ』と続けて国賀くん。


しばらくして高橋くん『悪いその日俺サッカー部の奴らと別んとこ行く』と来た。


『そっか、じゃあどうする?』と綾香。


『俺は気にせずに楽しんできてくれ』と高橋。


『わかった、ありがと健吾』と綾香。


それにしても立花くんの返信が遅い。


立花くんが来るのかと気になっていた私は返信が来るまでの時間がとても長く感じた。


30分ほどしてやっと立花くんから『僕も行ける』と来た。


やったっ!来れるんだ。と心の中で喜んだ。


『おっけー』と綾香。


『集合時間とかはまた近くなったら決めることにしよっか』と続けた。


『おっけー』と悠真。


それにしてもまだ先の予定なのに何でわざわざ今聞いたんだろう....?と少し疑問になっていた。


すると私宛に綾香から連絡が来た。


『家のおばあちゃんがさ浴衣貸してくれるって言ってて千里一緒に着ない?』と書いてあった。


浴衣....!私はそれに少し興味が出た。


『着ても良いの?』


『もちろん!』


『じゃあお願いしよっかな』


『おっけー、じゃあおばあちゃんに言ってくるね』と綾香から来たあとしばらくしてまた連絡があった。


『今私浴衣合わせにおばあちゃん家来てるんだけど千里今暇?』


『うん、暇だよ』と返す。


『じゃあ今から迎えに行くからさ一緒に浴衣合わせよ』と返ってきた。


───今からっ!?と私は少し驚いたが楽しみでもあった。


きっと綾香はこのために今日夏祭りの話をしたのだろう。


数十分たちインターホンが鳴った。


そこにはにっこりと微笑む綾香がいた。


『今行くよ』と私はインターホンごしで言い家を出た。


エレベーターを降り綾香に合流する。


「突然ごめんね。おばあちゃんが急に浴衣の話しだして千里と着たいなと思ったからさ」とにこにこしている綾香。


「全然良いよ。浴衣楽しみ」と私は微笑んだ。


おばあちゃんは綾香の家からさほど離れておらず思ったよりすぐに着いた。


木造建築のそこそこ大きい家だ。


ドアを開け綾香と一緒に家に入る。


「おばあちゃんただいま」と大きい声で言う綾香。


「おかえり」と顔を出す綾香のおばあさん。


するとおばあさんは私を見て優しく微笑んだ。


「お、お邪魔します」と私は少し緊張した。


「あら、べっぴんさんねぇ。いらっしゃい」と優しい声でそう言うおばあさん。


「美人なんてそんな....」と私は少し照れてしまった。


「おばあちゃん言った通りかわいいでしょ」と私にくっつく綾香。


「そうだねぇおばあちゃんびっくりしちゃった!」


「でしょ〜」とドヤ顔をする綾香。


その様子に私は微笑ましく思った。


「それで名前は?」と私の方を見るおばあさん。


「───あっ、冬野 千里です」


「千里ちゃん、かわいらしい名前ね」と優しい笑顔を見せるおばあさん。


「ありがとうございます」と私は笑顔を見せた。


「さぁさぁ上がって」と招き入れてくれるおばあさん。


私は靴を脱ぎ綾香について行った。


リビングに付くと「少し待っててね」とおばあさんが言いどこか別の部屋に行った。


「はい!千里」とお茶を出してくれた綾香。


「ありがと」


「今おばあちゃんが私達に合う浴衣探しに行ってると思うから少し待ってよ」と楽しみそうな顔をする綾香。


「そうなんだ....」


しばらく待っているとリビングの方に足音が近づいてきた。


「お待たせ」と浴衣を持ったおばあさんが入ってきた。


「きれい....」と私は思わず呟いた。


「そう、ありがと」と嬉しそうなおばあさん。


おばあさんは黄色と赤色の浴衣を持っていた。


「綾香はこれ」と黄色の浴衣。


「そっちが千里ちゃん」と赤色の浴衣を渡してくれた。


「ありがとうございます」


浴衣ってこんなに綺麗なんだ。と初めて本物を見た私は目を輝かせた。


赤色がメインで花の模様の着いている浴衣。


「おばあちゃん着せて着せて!」と目を輝かせおばあさんに迫る綾香。


「はいはい」と微笑むおばあさん。


おばあさんは慣れた手つきで浴衣を着せた。


綾香は近くにあった全身鏡に走り体を回しながら浴衣姿の自分を見ていた。


「わぁー!」と気に入った様子の綾香。


それを見て優しく微笑むおばあさん。


「千里どう!」と私の方に向く綾香。


「すっっごく似やってる!」


「えへへっーそんなに」と照れた様子の綾香。


するとおばあさんが私の方に近づいてきて「千里ちゃんも着てみるかい?」と言った。


「はい!」


私はこの時すごくテンションが上がっていた。


そうしておばあさんに着せてもらい私も全身鏡に向かった。


浴衣姿の自分見た時私は目を輝かせた。


こんなおしゃれをした事が無かったので私は綾香と同じように体を回し全身を見ていた。


「千里かわいいっ!」と綾香。


「ほんと....?」と私は少し恥ずかしがった。


するとおばあさんが私をジロジロと見始めたかも思うと一度部屋を出て行った。


どうしたんだろ....?と私は疑問に思った。


少ししておばあさんが戻ってきた。手にはきれいなお花の形をした髪飾りを持っていた。


「これで髪をまとめて....」と私の長い髪をまとめその髪飾りをつけてくれた。


たったそれだけの違いなのにさっきと全然印象が変わったのが自分でもわかった。


「きれぇー....」と綾香は小さく呟き私の方に視線を固定していた。


「うん、やっぱりこっちの方が似合うわね」と優しく微笑むおばあさん。


「この髪飾り....」


見た時からわかっていたこれは絶対に高価な物だって。


するとおばあさんは私の言いたい事を察したのかこう言った。


「良いのよ。それも貸してあげる」


「良いんですか?」と私はもう一度確認をとる。


「年頃なんだからおしゃれしなきゃね」と微笑むおばあさん。


「ありがとうございます」


私は嬉しくて思わず笑みを浮かべた。


「夏祭り楽しみだね」と綾香が笑顔で言った。


「うん!」と私はワントーン上げて言った。


浴衣きて夏祭り何て初めて!すっごく楽しみだなぁ〜。


立花くんどんな顔するだろ。


「ふふっ....」


そんな事を考えた私は想像してしまい少し笑ってしまった。




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