第29話 海
数日たち日曜日となり今日海に行くことになった。
「楽しみだね海」と綾香。
「そうだね」と冬野さん。
今僕達は三人で海へと向かっている。
冬野さんとは前スイカを取りに行ってから今日まで会っていなかったので心配していたがいつも通りの調子だったので安心した。
お兄さんがいつ来るか分からない以上常に気を張っていなければならないのはしんどいからな今日は冬野さんに楽しんで欲しいと思う。
そうして電車を乗り継ぎついに海へと到着した。
海にはまだ健吾と悠真は来ていない様子だったので待つことにした。
数分して
「よぉーお前ら」と悠真のでかい声が聞こえてきた。
「よ、よぉー.....」と後ろで見るからに気分が悪そうな健吾がいた。
「おい、健吾大丈夫か?」
僕はそう言った。
「こいつバスで酔ったんだよ」と笑いながら言う悠真。
「お前ら聞いてくれよこいつ俺が酔いそうって言ったらよ全力で俺の体揺らしてきたんだぜ....」と悠真を指さし訴える健吾。
うわぁーなかなかえげついことしてんなぁ。僕は健吾がここまで耐えれたことに感心した。
「じゃあ健吾は休憩だね」とニヤついた顔をする綾香。
「休憩なんてしないぜ。たとえリバースしたとしても俺は海で遊ぶ」と真剣な顔でいう健吾。
「それはやめてくれ」
僕は思わずツッコミを入れてしまった。
「とりま水着に着替えようぜ」と悠真が提案する。
「だね、じゃあ着替え終わったら更衣室前で待ってて」と綾香。
「おっけー」と悠真。
そうして女子とは別れ僕達は着替えに行く。
「なぁ和樹」と顔をにやりとさせ話しかけてくる悠真。
この顔したら絶対ろくなこと言わ無いんだよなぁ。
「何?」と僕は身構えた。
「お前、冬野さんの水着見るの楽しみだろ」と悠真。
ほらやっぱりそんな事だと思ってたよ。
こういうのは変に嘘はつかずそのまま答えればいい。
「そんなの当たり前だろ」と僕は嘘偽りなくそう言った。
「そうか....」とまさかの返答に拍子抜けた顔をする悠真。
変に恥ずかしがるからみんな調子に乗るんだ。
そんな事を思っている僕自身内心めちゃくちゃに恥ずかしがっていた。
当然男子の方が着替えが早く女子二人が来るのを待つこととなった。
冬野さんどんな水着買ったんだろうと少し気になっていた。
しばらくして「お待たせ」と綾香が飛び出してきた。
「どう?私の水着は」と見せびらかしてくる綾香。
白がメインのその水着を来ている綾香。
「お前、子供用じゃなくてよかったのかよ」と笑う悠真。
「私だって大人なんだからそんな水着着るわけないでしょ」と対抗する。
僕は周りを見渡しある事に気がついた。
そういえば.....。
「なぁ綾香、冬野さんどうしたんだ?」
僕は聞いた。
すると周りを見渡し「あれ....?」と言った後更衣室に戻った。
すると「千里何してるの早く行こ」と綾香の声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと待って綾香....」と冬野さんの声も聞こえた。
すると綾香に引っ張られ冬野さんが出てきた。
すでに顔を真っ赤にしている冬野さんは手で体を覆い水着が見えないよう隠していた。
(な、何これ水着見られるのって思ったより恥ずかしい)と冬野さんは本気で恥ずかしがっていた。
「千里隠さないの」と綾香が冬野さんのてをどかそうとする。
「だ、だめ....」
そう言い抵抗していたが綾香のしつこさに負け隠すのをやめた冬野さん。
赤色がメインの水着を着ていた。
ほんと冬野さん何着てもにやうなぁ。
そう思い僕は冬野さんを見つめていた。
すると「立花くん見過ぎ....」と恥ずかしがるから冬野さん。
「───いやっ、そんなつもりは....」
顔が熱くなるのを感じた。
「和樹も案外むっつりだな」とニヤつく悠真。
「そんなんじゃない....」と僕は否定した。
「じゃあ何でそんな見てたのぉ〜」と綾香も加わった。
───くぅぅ...こいつらほんとこういう時だけ仲良いんだよな。
「冬野さん水着にやってたからつい....」と本当のことを言った。
すると冬野さんは顔をハッとさせさらに顔を赤くして「ありがとう....」と言った。
冬野さんも恥ずかしがりすぎだ。
「お前らいつまで水着見てんだ。海行こうぜ!」と海に向かい走る健吾。
どうやら酔いが治り元気が出てきたらしい。
「待て健吾!俺が最初に入るんだ」と走り出す悠真。
「一番は私だもんねぇ」と綾香も続く。
子供なぁ....。と思ってしまった。
すると冬野さんがフッと笑って「私たちも行こっか」と言った。
「だな」
「二人とも早く早く」とすでに海に入っている綾香が手を振り言った。
「今行くよ!」と冬野さんが走り出す。
僕も海に入った瞬間───。
「おら、和樹!」
悠真に海水をかけられた。
───っ!?しょっぱっ!
久しぶりの海だったので海水のしょっぱさを忘れておりびっくりしてしまった。
「お返しだ」
僕は悠真に目掛け海水を飛ばす。
「うわっ!?」とそれが健吾にもかかった。
「和樹やったなぁ」と健吾が全力で海水を撒き散らす。
それが綾香や冬野さんにも当たったのだ....。
すると「───ひっ....」と怯えたような声をあげる健吾。
「高橋くんやったわね」と鋭い眼光を向ける冬野さん。
「お、俺じゃなよぉ」と悠真の影に隠れる健吾。
「とりゃぁぁっ!!」と悠真もろとも巻き込んで海水をかける綾香。
こうして海水の掛け合いが始まった。
その時背中にパシャパシャと少しかかったのを感じた。
んっ?誰だ?
僕は後ろに振り返る。
そこにはにこにこした顔で「えいっえいっ」と海水を飛ばす冬野さんがいた。
───かわっ....。
その姿に思わず見惚れてしまい僕は固まった。
すると冬野さんはそれに気がつき僕が戸惑っていると勘違いしたのか急に顔を赤くし「ごめんなさい....」と言い手を止めた。
その言葉で我に返った僕は「───あっ、ち、違っ」と否定しようとした。
「おぉっら!」
バシャァァン
大量の海水が僕にかかりあまりの勢いに僕は倒れてしまった。
「プハッ、だっせぇー!」と笑う悠真。
「やってくれたな悠真」
やり返そうとしていた時
冬野さんが大きい声で笑い出した。
「だ、立花くん、倒れて....」と僕がこけたのがツボに入ったらしい。
恥ずいな....。と僕はやり返す気力も無くなってしまった。
するとこれに飽きたのか綾香が千里に近づきこんなことを言い出した。
「千里って泳げるの?」
「───うぇっ!」と言いどう答えようか悩む冬野さん。
「お、泳げない....」と恥ずかしそうに続ける。
「なら教えてあげる!」と目を輝かせる綾香。
「ほんと!」と嬉しそうな冬野さん。
「やめとけ綾香に教えてもらって上手くなった奴いねぇんだよ」と笑いながら言う悠真。
「それは昔の話しだもん今は違うよ」とほお膨らます綾香。
「昔って中三の時初めてだったじゃねぇか」と悠真。
「───なっ、なぜそれを知って....」と驚く綾香。
「ならよ浮き輪とかいいんじゃねぇか?」と健吾が提案した。
「俺ちょうど持ってきてるし」と続けた。
「浮き輪....!」と乗りたそうな顔をする冬野さん。
「なら僕空気入れてくるよ」
「サンキュー」と健吾。
そうして僕は浮き輪に空気を入れ冬野さんに渡した。
「ありがと」と笑顔を見せる冬野さん。
「僕ちょっと休んでるよ」
さっきの大量の海水が思った以上に効いており頭がクラクラしていた。
「おっけー」と元凶の悠真が言った。
パラソルの下で休みながら皆が泳いでいる姿を見ていた。
冬野さんだいぶくつろいでるなぁ。
気持ちよさそうに浮き輪の上に乗る冬野さんを見て僕は微笑ましく思った。
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