第25話 ゲーセンにて
ご飯を食べ終わりこの後どうするかという話しになった。
「ゲーセン行こうよ!」と早速綾香が提案した。
「良いなゲーセン!」とテンションが上がる悠真。
この流れはまずいなぁ.....
「うん!」と冬野さんも賛成し席を立った。
するとあまり乗り気じゃない僕を見て冬野さんは「いくよ!立花くん」と僕を引っ張ってきた。
冬野さんが楽しそうならいっか。そんなことを思い僕は着いて行った。
そうしてゲーセンに付き皆で何するかを話していた時。
「健吾、あれでコンボの勝負しようぜ」と悠真。
その方向には太鼓のゲームがあった。
「いいぜ」と言いやる気になる健吾。
その時冬野さんがUFOキャッチャーの方を見て立ち止まってるのが見えた。その視線の先にはそこそこ大きいくまのぬいぐるみがあった。
やりたいのかな?
「あれ欲しいの?」
僕は冬野さんにそう聞いた。
すると冬野さんは驚いた顔をし
「べ、別に欲しくない....」と丸わかりの嘘をついた。
僕はそれが面白くてつい笑ってしまった。
「やってみない?」と僕は冬野さんを誘った。
「う、うん」と少し嬉しそうな顔になる冬野さん。
やっぱりやりたかったんだな。
「冬野さんとUFOキャッチャーしてくる」
僕は悠真達にそう言った。
「おおっ」とゲームに夢中の悠真からそう返ってきた。
「じゃあ行こっか」
僕は冬野さんにそう言った。
「うん....」と少し恥ずかしそうにする冬野さん。
台の前につき僕は一つの質問をする。
「冬野さんってこれできるの?」
「実はやった事ないんだ....」と冬野さん。
「そっか、じゃあとりあえずやってみよ」
僕は自分の財布から100円を出し台に入れた。
「あ、お金は私が....」と言い財布を取り出す冬野さん。
「良いよ冬野さん」僕はその手を止めた。
「良いの?」と冬野さん。
「うん、良いよ」
「そっか.....ありがと。それでこれどうやって動かすの?」と首を傾げる冬野さん。
本当に何も知らないんだ。と少し驚いてしまった。
「そこのレバーを動かせしたらアームが動いてこの黄色いボタンを押したらアームが降りてぬいぐるみを掴むよ」
「わかった、じゃあやってみるね」と真剣な顔になる冬野さん。
そうして冬野さんはレバーを動かしアームをぬいぐるみのところまで持っていった。
「ここらへんかな....?」と呟き冬野さんは黄色いボタンを押した。
「あっ....」
そこで押したら.....。まさかのところで冬野さんはアームをおろしたので僕は思わず声が出た。
「───あれっ!?」
僕の思った通り、降りたアームはぬいぐるみに擦りもしなかった。
それを見て驚く冬野さん。
僕はその様子を見て笑ってしまった。
「冬野さん苦手みたいだね」
冬野さんって案外不器用なんだよなぁ....。
「そうみたい.....」と残念そうな顔をする冬野さん。
冬野さんができないなら....。
「僕もやってみよっかな」
僕はそう言い台に100円を入れた。
僕もあんまり得意じゃないんだが....。
とってあげたいしな。
僕はレバーを動かしぬいぐるみの方までアームを持っていった。
頼む取れてくれ.....。
僕はそう願いボタンを押す。
アームはぬいぐるみをガッチリ掴み持ち上げた。
「───うまっ....」と驚いた顔をする冬野さん。
順調かと思われていたがアームが一番上まで上がった瞬間ぬいぐるみは落ちてしまった。
「お、おしい....」と冬野さん。
もう一回。
僕は迷いなく台に100円を入れた。
だがまたもぬいぐるみは取れなかった。
それを何度も繰り返し1000円ほど使っていた時だ。
「ごめんね立花くんお金はあとで返すよ....」と申し訳なさそうな顔をする冬野さん。
「お金なら返さないで良いよ。僕がやりたくてやってるだけだからさ」
ここまできたら諦めたくない。と僕は内心真剣になっていた。
「そっか....」と冬野さん。
そうして3000円ほど使った時だ。
ぬいぐるみを掴んだアームが上に上がる。
頼むそろそろ取れてくれ───。
「落ちるなぁぁ」と冬野さんは何故か腕に力を込めていた。
その願いが届いたのかアームはぬいぐるみを
ガッチリと掴み離さなかった。
僕たちはそれを見てお互いに見つめ合い静かに喜びを噛み締めた。
「取れたよ冬野さん!」
僕はぬいぐるみを冬野さんに見せた。
「立花くん!」と腕を上にあげる冬野さん。
僕はその手にハイタッチをした。
「へぇい!」と嬉しそうに笑う冬野さん。
僕もなぞの達成感でテンションが上がった。
「はい、冬野さん」と僕はぬいぐるみを渡した。
「ありがと立花くん。でも本当にもらって良いの?」
「もちろん、そのために取ったからさ」
「そっか、じゃあ大事にするね」と満面の笑みを見せぬいぐるみを抱きしめる冬野さん。ものすごく幸せな顔をしていた。
この顔が見れたならプレゼントした甲斐あったな。
ぬいぐるみを取ることができたので綾香達と合流しようと探していると.....。
疲れた顔をしている健吾を見つけた。
「健吾どうしたんだ?」
「やっと戻ってきたか.....」と安心した顔をする健吾。
「なぁ和樹、あれを止めてきてくれ....」とあるところを指さす健吾。
僕と冬野さんはその方に視線を向けた。
そこにはエアホッケーがあり綾香と悠真が戦っていた。そこにはただならぬ空気が漂っていた。
「あいつらどっちも負けず嫌いなのかずっとあんな調子で....俺はもうついてけねぇよ」と悔しがる健吾。
「悪かったな。あいつらと一緒にしてて」
やっぱりこうなったか....。だからゲーセン行きたくなかったんだよなぁ
過去にもこんな事があり辺りが暗くなるまで付き合わされたのだ。
「お前らそろそろ行くぞ」
無駄だと思いつつも僕はそう言った。
「待って和樹今いいとこだから」と真剣な顔をする綾香。
「今こいつと決着つけようとしてんだ。待っててくれ」と悠真。
やっぱりか....。しゃあない。
僕はため息をついた後、二人を睨みつけ口を開いた。
「なぁお前ら一回あったよな、勝敗がつかないままお金がなくなって僕にお金をねだってきたこと....」
すると二人はハッとし腕を止めた。
「あの時お金貸す代わりに約束したはよな。もうこういうことしないって.....」
これが無くなったら終わりと僕は二人にお金を貸したのたが二人は調子に乗りコインゲームで戦いはじめたのだ。
その結果夜まで続きさすがの僕も少し驚いて怒ってしまった。
「まさか忘れたわけじゃないよな」と僕は続けた。
「も、もちろん覚えてるよ。ね、ねぇ悠真」と焦る綾香。
「あ、当たり前だろ。さ、行こうぜ和樹」とエアホッケーを離れる悠真。
「ま、分かればいいんだ.....」
ほんとこの二人は仲が良いんだか悪いんだか....。
あの時のお金はすぐ返ってきたしいいんだがこのままだと何時になるかわからんしな....。
「ごめん、お待たせ」と何かに怯えるような顔をする綾香。
「どうしたのそんな顔して」と首を傾げる冬野さん。
「和樹に怒られるかと思って」と綾香。
あいつまたいらん事を───。
冬野さんはものすごく不思議そうな顔をした。
「和樹、怒るとめちゃくちゃ怖いだぜ」と悠真も入った。
「そ、そうなんだ....」と冬野さん。
「おい、話してないで帰るぞ」
このままにしてたら何話すかわからんしな。
すると綾香と国賀くんがビクッと体を動かせすぐに僕の方に振り向いた。。
「ご、ごめんすぐ行くよ....」と震えた声で言う綾香。
「い、今行くぜ」と同じく震えた声で言う悠真。
何故だかこの二人は僕に怒られるのがトラウマになってるらしい。きっと調子に乗りすぎた事を悪くの持っていたから余計怖かったのだろう。
冬野さんはそんな様子のおかしい二人を見て笑っていた。
冬野さんが笑っているのを見て思った。今日、案外楽しかったなと。
こうして今日は終わった....。と僕はそう思っていた。
まさかこの後冬野さんが家に来るなんてこの時の僕は知る良しもなかった....。
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