第24話 冬野 千里の気持ち (冬野視点)

これは水着買うために立花くん達と別れた後の話し。


水着売り場に着いた私と綾香はどれにするかを悩んでいた。


「綾香どういうのがいいと思う?」


「うーん、悩ましいねぇ」と考える顔をする綾香。


それにしてもすごい派手なのが多いなぁ。


すると綾香が「ねぇねぇ」と私の肩を叩いてきた。


「これとかどういう?」と笑顔で水着を見せてくる綾香。


───っ!!な、何これ....。


「な、何それ...ほとんど紐じゃない....!」


私はほとんど何も隠せていないその水着を見て着た時を想像してしまい恥ずかしくなってしまった。


「あれ....千里もしかして想像しちゃった?」とニヤつく綾香。


「してないよ.....」と私は否定した。


少し顔が熱い気がするけど気のせいだ。


「そんなんだぁーじゃあ何で顔赤いのかなぁ千里」と追い討ちをかけてくる綾香。


「赤くないよ....」と私は綾香から顔を逸らした。


すると二ヒヒと不気味な笑い声を上げてこんな事を言い出した。


「和樹に水着見られるの恥ずかしい?」


何言ってんのよ綾香!何でここで立花くんが出てくるの。と疑問になった。


「立花くんは関係ないよ!」私はすぐにそれを否定した。


でも何で....全く考えてなかったのに言われるとなぜか恥ずかしい。そうだよ水着姿は立花くんにも見られるんだよ....。


そう思うと自然と顔が熱くなるのを感じる。


「顔真っ赤だよ千里。やっぱり考えてたんじゃん」と笑う綾香。


───っ!!


「ち、違うよ....」


「前から気になってたんだけど千里って和樹の事どう思ってるの?」と綾香。


どう思ってる....?私は首を傾げた。


するとそれに気がついた綾香が続けた。


「和樹のこと好きなのかなぁと思って」


───好き....。


「───っ!!す、好きじゃない!」


「じゃあ嫌い?」


「それも違う....」


立花くんを嫌いになんてなれないよ....。


「じゃあどうなの?」と楽しそうな綾香。


そう言われると考えたこと無かった。私は立花くんをどう思ってるのかなんて....。


「わ、分からない....」


完全に否定出来る気もしないし好きと言いきれるわけでも無い。


まさかの反応だったのか綾香が驚いた顔をした。


「それってすきかもしれないってことだよね!」と目を輝かせる綾香。


「そ、それは.....違うような.....」と私は否定しようとしたが綾香は遮り「あるよ!気づいてないだけで!」と言った。


(まさか千里と恋バナ出来るとは嬉しいなぁ)と綾香はこの状況をものすごく楽しんでいた。


「でも好きってどんな感じなのかわかんない....」


恋なんてした事ないし。どっちかっていうと嫌いだったしなぁ....。


すると綾香は恋というものを話しはじめた。


「恋っていうのはね。相手を見るとドキドキしたり....」


ドキドキはしないかな?


「いつの間にか目で追ってたり....」


それも....無いかな?


「ずっと隣に居たいと思ったり....」


あれ?


「一緒にいると心地良いとか落ち着くとか感じたりするものなんだ」


あれれ....!?


意外と当てはまってる───。


「これが全てじゃないよ。愛の形は人それぞれだからね」と最後にドヤ顔でそう言う綾香。


もしかして私、立花くんの事....。

───いやいや違う....絶対そんなんじゃ無い。無い....よね?


この時軽くパニックなっており綾香の最後の話しを全く聞いていなかった。


確かに立花くんとは一緒にいたいと思うし落ち着くし....でもそれは助けてもらったから心強いって思ってるだけかもだから....。でもでも遊びに行きたいとかは違うよなぁ。


でも目で追ってたりは───。


その時ある記憶が私の脳裏をよぎった。連絡先を聞こうとした時のことだ。


目で追ってるとかじゃない。ガン見してたじゃん私───!


それに気づくと急に恥ずかしくなってきてしまい鼓動がさらに速くなる。


絶対今顔赤いよ。私は手で顔を覆い隠した。


するとそれを見逃すまいと綾香が口を開いた。


「あれれ〜千里顔隠しちゃって。もしかして気づいちゃったのかなぁ」と綾香。


ここでやっと私は綾香がこの状況を楽しんでいることに気がついた。


「ち、違うよ....何も気づいてないよ」


綾香を諦めさすために嘘をつく。


「声震えてるよ。やっぱり気づいちゃったんじゃないのぉ〜」と綾香。


「だから何も無いよ....」


もうやめて....恥ずかしくて死んじゃうよぉ〜。私はとおに限界を迎えていた。


「じゃあ顔見せてよ!」と綾香。


「───えぇっ!そ、それは....」


「ほらほら見せて見せて」と言い顔を覆う私の手を無理やりこじ開ける綾香。


目に光が差しニヤリとする綾香の顔が浮かび上がる。それを見て私は恥ずかしさが限界突破した。


「やっ、見ないで....」と私は力一杯手を自分の顔に近づけようとする。


でも綾香に掴まれておりびくともしない。


すると綾香が急に目を輝かせた。


「千里顔真っ赤じゃん!かわいい〜」と言い抱きついてきた。


「───ちょ....ちょっとここお店だよ」


すると綾香はハッとしすぐに離れ


「ごめんごめん....つい」と謝った。


「はぁ〜。もうこの話はやめようよ」と私はため息を着きいった。


もうこれ以上はもたないよ....。


「わかったよ。でももし好きだってわかったら教えてね」とニヤつく綾香。


「教えないよ!」


綾香に教えたらどうなるかわかんないんだもん。


その後綾香と悩みに悩みついに水着を買うことができた。


店を出ると待ちくたびれた顔をした男三人がいた。


「ごめんお待たせ」と綾香。


「ごめんね私が悩みすぎちゃって」


すると「全然良いよ」と優しく微笑む立花くん。


その時私は目が合ってしまった。


脳裏に綾香とのことが浮かび咄嗟に私は目を逸らしてしまった。


何してるの私....絶対立花くん気づいてるよ。


その後も何度か立花くんと目が合いそうになったが恥ずかしくて何故か顔をそれしてしまっていた。


これじゃあまるで意識してるみたい....。ち、違う絶対違う。私は一人で首を振った。


そうして私達はご飯を食べるためフードコートに向かった。


席に着いた時綾香が「誰か席に残ってた方がいいよね」と言った。


「じゃあ僕が残っているよ」と立花くんが言い。


そうして他の人でご飯を買いに行こうとしたときだ。


「待て───。綾香も残れ」と立花くんが言い出したのだ。


───っ!!な、何で....。


すると国頭くんが立花くんに「まさか綾香が好きなのか?」と言っているのが聞こえた。


う、うそ....立花くん綾香のこと....。


胸が締め付けられるような感覚を覚えた。


「違うよ」と立花くんはそれを否定していたが到底信じられなかった。


何で立花くん綾香を呼んだんだろ....やっぱり好きなのかなぁ。確かに綾香はすっごくかわいいしいい子だよ。でも立花くんそんなそぶりなかったじゃん。


ま、別に私には関係無いけど....。


なぜか立花くんに対して少し苛立ちを覚えた。


何話してるのか気になるなぁ。


私は無意識に歩くスピードが早くなり席に一番近いところでご飯を買うことにした。


「このオムライス一つください」


「は、はい....」


なぜか私の顔を見た店員さんが怖がっていたのはなぜだろうか。


オムライスをもらった私は席へと急いだ。


「立花くん」


胸にあるモヤモヤをぶつけるように立花くんに話しかけた。きっとものすごく圧のある声だったのだろう立花くんが驚いた顔を私に向けた。


「立花くん、私買ったから変わるよ」


「あ、ありがとう」と申し訳なさそうな顔をする立花くん。


「綾香と何話してたの?」


考えるより先にそう口に出していた。


言った....言っちゃった。やっぱ聞かない方が良かったかな?と後から後悔しそうになっていた。


すると立花くんは少し間を空け「いや、別に海行く日決めてただけ....」と言った。


後から思えば嘘だと分かるほどに言葉が詰まっていたがこの時の私はその言葉になぜかものすごく安心した。


「そっか....」


なんだそうだったんだ。


この時は普通に立花くんを見れていた気がした。


そうして立花くんがご飯を買いに行き私と綾香二人になった。すると綾香が私に近づき小さい声でこう言った。


「実はねさっき和樹が千里のこと相談してきたんだよ」と綾香。


私はその言葉が一瞬理解出来ず固まった。


海の事じゃなくて私......?


「───えっ!どうして!」


やっと理解した時驚きで大きな声を出してしまった。


「声大っきいよ....」と焦る綾香。


「ご、ごめん....。でも何で私の事....?」


「それがね。さっきまで千里に避けられてたのを嫌われたと勘違いしてたの」と笑いながら言う綾香。


やっぱり気付いてたんだ....でも立花くんがそんな事を気にするなんて....。


なぜか胸がドキドキと高鳴るのを感じた。私のことで悩んでくれたのが何だか嬉しかったのだろうか。


「これ内緒だよ」と言いにこりとする綾香。


「うん、わかった...」


「それにしても二人ってお似合いだとは思うなぁ私」と突然そんな事を言い出す綾香。


「どうして?」と私は首を傾げた。


するとまたもやニヤつく綾香。


「だって千里もさ和樹が私を呼び止めたの気にしてたじゃん」


「そ、それは....」


確かにそう言われると何で気にしてたんだろう。


「さっきの膨れ顔はかわいかったなぁ。まるで嫉妬してるみたいだったよ」と嬉しそうな顔をする綾香。


嫉妬....?その時さっきまでの私の行動を思い出した。


顔が熱くなるのを感じる。


やっぱり私....。


その時前に座る綾香が「恋してるねぇ...」とまるで我が子を見るような顔をしていた。


このままだと変な勘違いをしてしまう。


私は気合いで平然を装い「嫉妬じゃないもん.....」と言った。


その後少ししてみんな揃ったのでご飯を食べはじめた。その時もニヤニヤした顔で綾香が私を見つめてきた。その顔を見るとさっきまでの話しが頭を駆け巡り恥ずかしさが込み上げてきたが私はそれ必死で抑えていた。


だって隣には立花くんが座っているのだから....。


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