第二章

第23話 夏休み初日

夏休み初日約束の時間になり僕は家を出た。


にしても何で昼前なんだ....眠い....。


僕は大きなあくびをした。


エレベーターをおりマンションから出る。


「おはよう和樹」といつものように元気な声を出す綾香。


「おはよう立花くん」と優しく微笑む冬野さん。


「おはよう....」


「立花くん眠そうだけど大丈夫?」と心配そうな顔をする冬野さん。


「うん、でも何でこんな朝からにしたんだ?水着買うぐらいならすぐ終わるだろ」


「それは───!....ほんとだ何でだろ?」と今になり首を傾げる冬野さん。


「確かこの時間にしたのって綾香だったよな」


僕は綾香の方を見た。


「だって水着買って終わりはなんか寂しいじゃん!」と真剣な顔をする綾香。


「いや、海行くための買い物なんだからそれで終わりでもいいと思うが....」


「良くないよ。せっかくショッピングモールに行くんだからゲーセン行きたいじゃん」と欲丸出しの綾香。


「ゲームセンター....行ってみたい!」と乗り気になる冬野さん。


やっぱりそういうことだったのか....。


僕は小さくため息をついた。


「まぁいいとりあえず行くぞ」


僕達は集合場所のショッピングモールへと向かった。


ショッピングモールに着くと既に悠真と健吾が待っていた。


「遅いぞお前ら」と待ちくたびれた顔をする健吾。


「でもまだ待ち合わせ時間前だよ?」と綾香。


すると悠真が「なぁ聞いてくれよ」と急に笑い出し口を開いた。


「こいつよ今日楽しみすぎて一時間前から来てたんだぜ」と健吾を指さす悠真。


「へぇ〜そうなんだ」とニヤつく綾香。


健吾は顔を赤くした後おこった顔になった。


「悠真違うつっただろ!待ち合わせ時間勘違いして早く来ちまっただけだよ」と必死に否定する健吾。


嘘をついているようには見えないのでほんとなのだろう。


「ほんとに〜」と相変わらずの綾香。


「ほんとだ!」と綾香を睨む健吾。


「悠真もいらん事言うなよな!」と健吾は続ける。


「わりぃわりぃ」と言い笑う悠真。

全く反省している様子は無かった。


「健吾諦めろ、こいつに何言っても伝わらんぞ。僕は信じてやるから落ち着け」


僕は健吾に助け舟を出した。


「ありがとう和樹。こいつらに理解してもらおうとした俺が馬鹿だったよ」と僕の肩に手を置く健吾。


そうして僕達は水着を買うため女子と男子で別れた。


「じゃあ買い終わったら店の外で待つってことで」と悠真。


「おっけー。じゃあ行こっか千里」と綾香。


「うん」と楽しそうな冬野さん。


二人がいなくなり男だけになった。


「よし、行くぞ」


僕がそう言うと悠真と健吾か顔をニヤリとさせ聞いてきた。


「なぁ和樹、お前冬野さんの事好きなのか?」と悠真。


───っ!!


「───はっ!?」


唐突の質問で僕は驚き声を出してしまった。


まずい....。


「その反応はもしかして...」と追い討ちをかけてくる健吾。


「違うよ」


僕は否定した。


「じゃあ何でいっつも目で追ってんだ?」と健吾。


僕は冬野さんのことが好きなのか.....?正直まだ良く分からない。


確かにかわいいし、たまにドキッとするがそれは男なら皆あることだろ.....。


いつの間にか一人そんな事を考えており話が途切れていることに気づかなかった。


「やっぱり好きなのか?」とまた聞いてくる悠真。


「だから違うよ。もうこの話は終わりだ」


その後もしつこく聞いてきたが僕は全てを無視した。


しばらくすると二人も諦めたようで聞いてこなくなった。


あまりいい手とは言えないがこのまま聞き続けられるよりは良い。


水着はこれでいっか。


男は特にこだわる必要も無いので水着選びはすぐに終わった。


なので三人揃って店の前で待つことにした。


「なぁあいつら遅くねぇか」と退屈そうな顔をする悠真。


「そうだな....」


かれこれ2、30分は待っている。


話しのネタもつき僕達はただボォーっと二人が来るのを待つだけだった。


それから10分ほどしてようやく二人が来た。


「ごめんお待たせ」と綾香。


「ごめんね私が悩みすぎちゃって」と申し訳無さそうな顔をする冬野さん。


「全然良いよ」


僕がそう返した時冬野さんと目があった。


すると冬野さんは顔をハッとさせ目を逸らし恥ずかしそうにしていた。


あれ....どうしたんだ?と僕は少し首を傾げた。


「綾香はどんなん買ったんだ?」と馬鹿にするような目を向ける悠真。


「そんなの見せるわけないじゃん」と怒りのこもった笑顔を見せる綾香。


「何でだ?」とニヤリ顔の悠真。


「ふーん当日楽しみってやつだよ」と威圧感のある声を出す綾香。


「なるほどな....なら、楽しみにしとくぜ子供用の水着を着るお前をな」と言い笑う悠真。


すると綾香は本気の力で悠真の足を蹴った。


「───痛っ!!何すんだ....」と言い足を抑える悠真。今回はほんとに痛がっていた。


煽りすぎたな。


「なぁ腹減ったし飯行かね?」と健吾が提案する。


「そうだな」


僕は賛成した。


「おい行くぞお前ら」


もみ合いになっている悠真と綾香を呼ぶ。


睨み合いながらだが二人もついてきた。


だが一つ気になることがあるさっきから冬野さんが僕を避けているような気がするのだ。


もしかして嫌われたのか───。と不安になるほどに僕からあからさまに目を逸らしているのだ。


そうしてフードコートに着き僕達は席を取った。


「誰か席に残ってた方がいいよね」と綾香が言った。


「なら僕が残ってるよ」


「そうか。じゃあ早く買ったやつが和樹と交代にしよう」と悠真が言った。


「それじゃあ買いに行こっか!」と綾香。


「待て───。綾香も残れ」


僕はそう言った。


「何で?」と首を傾げる綾香。


「少し話がある」


冬野さんのことを聞くチャンスだ。


「わかった....」と席にすわる綾香。


すると悠真がニヤリとし僕の耳元でこう呟いた。


「和樹まさか綾香が好きなのか?」


「違うよ」


何でこいつはすぐ恋愛に持って行きたがるんだ。


そうして三人がご飯を買いに行き僕達は二人となった。


「そ、それで話しって」と嘘っぽくもじもじし恥ずかしがる綾香。


「安心しろそう言うんじゃない」


「何だ違うのか....」とつまらなさそうな顔をする綾香。


「なぁ冬野さんとなんかあったのか?さっきから様子がおかしいんだ」


そう言うと綾香は顔をハッとさせ何やら焦った様子だった。


「───えっ....な、何もないよ....」


いや絶対何かあるだろこれ....。


「嘘をつくな」と僕は綾香の目をみる。


「だ、だから何もないよ」と目を泳がせる綾香。


「本当は?」


「ほんとに無い....」


「本当は?」


「だから何も無いよ!」


どうやら言う気がないらしい。


僕はため息を着き「なら何で冬野さんの態度が変わったんだ....」と言った。


「もしかして避けられてるのが嫌なの?」とニヤリ顔をする綾香。


うっ...完全に図星だ。


「....違う」と間を開けて言ってしまった。


「ふ〜んそっか違うんだ。なら教えなくてもいいよね」と綾香。


「それは....だめだ」


やってしまった。完全に綾香のペースに乗ってしまった。


にしてもほんとこいつのニヤついた顔は腹立つな。


すると綾香はニヤつくのをやめ口を開いた。


「安心していいよ。しばらくしたら元に戻るから」と言った。


やっぱり知ってんじゃん。ま、言えない事ならこれ以上聞くつもりもないが....。


「そうか。なら良いんだ」


「立花くん」と不機嫌そうな声が聞こえた。


声の方を向くとほお膨らました冬野さんがいた。


───えっ....さっきより機嫌悪くなってる。


「立花くん、私買ったから変わるよ」と冬野さん。


な、何でこんな不機嫌そうなんだ....。やっぱり嫌われたのか


「あ、ありがとう」僕は席を立ち冬野さんとすれ違う。


その時冬野さんがそのままの口調で「綾香と何話してたの?」と言った。


何て答えよう....。冬野さんのことは気持ち悪いし。


「いや、別に海行く日決めてただけ.....」ととっさに嘘をついた。


どうやら冬野さんはそれを信じたらしく安心した顔で「そっか....」と言い微笑んだ。


その時ちゃんと彼女と目が合い僕は安心した。


本当にさっきまでのは何だったのだろうか....。





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